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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

大海を渡り2500キロ旅するアサギマダラ。オスばかり。来週にはメスも舞い始めてにぎやかになるでしょう(妻女山里山通信)

2024-09-11 | アウトドア・ネイチャーフォト
 冠着山(姨捨山)へつる性のヤマトリカブトの観察と撮影に行こうと思いましたが、県道498が全面通行止め*。仕方なく近くの里山へ、少し早いかなと思いつつアサギマダラ(浅葱斑)の撮影に向かいました。舞っていたのはオスばかり。おそらく来週にはメスも舞い始めてにぎやかになるでしょう。
* 県の千曲建設事務所に問い合わせたところ、聖湖から鳥居平までは行けるそうです。

 アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』や、植物学者牧野富太郎をモデルにした朝ドラの『らんまん』のオープニングにも出てきました。

 フジバカマで吸蜜するオス。後翅下部に黒斑があります。アサギマダラはガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、メスは10月頃には南下して産卵するのでしょう。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)はないかと。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょう。では秋に産卵して育った個体は? どうも雪のない西日本に南下し産卵して一生を終える様です。

 曇り空ですがほぼ無風ライバルも少ないので吸蜜もスムーズにできます。

 わりと長時間の吸蜜。向こうにも一頭います。幼虫はガガイモ科のキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどを食草とし、卵は食草の葉裏に産みつけられます。幼虫も成虫も体内に食草由来のアルカロイド系毒物質をもち捕食されるのを防いでいます。

 アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えるものも。口吻の真ん中に溝が見えます。口吻はパイプ状ではなく二つの樋(とい)が合わさった形をしています。オオムラサキでは羽化不全で溝に穴が空いていて樹液が漏れているものを見たことがあります。

 草間彌生の水玉模様の様な胸部が可愛い。この浅葱色の部分は構造色です。

 浅葱色(あさぎいろ)というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色はなかなか奥が深い。

 飛翔はフワフワと漂い舞う感じで滑空もします。その省エネの飛び方で大海を渡るのでしょう。

 アサギマダラは暑さに弱く北上し、寒さを避けるために南下するといわれています。それぞれの移動先で産卵し成虫は死ぬので、南下と北上の個体はまったく別のものといわれています。

 オスの後翅下部の黒斑は性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。

 9月下旬には交尾を終えて卵を内包した腹部の大きなメスが見られる様になります。オスは塩分やアンモニア摂取のために糞や尿の水たまりに集まる習性がある様で、その際にニホンカナヘビなどに襲われることもあります。オオムラサキは前の二本が胸に折りたたまれてほとんど使われないのですが、観察するとアサギマダラは使うこともあります。

 篠ノ井線のとある踏切。途中アキアカネがフロントグラスにぶつかるほどたくさん舞っていました。今回は山道で鹿に遭遇。危うくぶつかるところでした。

「村上春樹さんのピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクル」というムサビの美大生時代に彼のジャズ喫茶でアルバイトしていた当時のブログは世界中からアクセスがあります。この文章をクリックで見られます。ロンドンに5週間住んでいて、Queenのフレデイ・マーキュリーの恋人のメアリー・オースチンが勤めていたBIBAの店で当時の私の恋人が彼女からジャケットを買った話。70年代の美大生の赤裸々な日々が見られます。

好評だったブログ記事:「ブラジルへの郷愁」レヴィ=ストロース 川田順造訳 みすず書房。文化人類学、また構造主義におけるバイブルのひとつ(妻女山里山通信)は、都合によりリンク先の楽天ブログに移転しました。

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