瑞穂の国の住人は自然の物の成り行きにはすごく従順だったようだ。昔むかしの子供の頃ゴロゴロとご当地名物だった雷様が鳴り出すと、座敷に大急ぎで蚊帳を張り「早く蚊帳の中へ入りな」と母ちゃんの誘いに乗り「遠くの桑ばら、とおくのくわばら」と唱えて雷の通り過ぎるのを待ったものだった。その雷も最近は少なくなってしまいゴロゴロも余り聞かなくなってしまった。
今年の残暑はなんともジジババには厳しいものだった、立秋からの秋に気配は止むを得ないとしても、九月に入って虫は鳴き始めたが中々秋の気配も無く、気温三十二~三℃の日が続き、夜は寝苦しくエヤコンなしでは眠れない夜が続いて、オジンには本当につらい夜だった。
それが昨日の午後になるとぐっと涼しくなり秋の気配かと思ったら、今日は彼岸の入りだが急に二十℃にも届かない寒いような朝になっていた。暑い寒いも彼岸までと昔の人は言ったが、昨夜のうちに東北地方にあった前線が我われ地方の頭の上を通り越し、関東地方の南へ出てきたか、これも台風十五号や十六号の所為か、とのかく助かった。それこそ前線様か台風様である。
しかし今年の暑さと言うか猛暑と言うかの、元凶である太平洋高気圧の強かった事マッコト、土佐っ子の部類ではなかった、そのお陰で台風十二号はモタモタと日本列島の南海上を逡巡してまわり各地に大雨を降らせた、特に紀伊半島各地の激甚災害適用の被害を与え、またまた昨夜からの雨で山崩れによる堰止湖の堰の崩壊危機に直面している、三月十一日の東日本大震災とあわせてまさに災害列島の趣がある。
困った物だ、しかしこの列島の住人たちはそんな事ではへこたれないで、つねに営々と努力を重ね復興し、先の徹を踏まずさらにその上を来ていたのである。
だが今度は今までと違う原発の崩壊と言う新しい人類三回目の事故と言う要素が入ってしまった。過去政官財御用学者と言われる人たちが進めた安全神話の上に進めた原発だが、時期尚早と言う人達も居たなかでの出来事であるだけに残念だ、我が国にとっては最悪のシナリオとなってしまった。
原子核を破壊しその中からエネルギーを取り出し平和利用するということだが、未だに廃原子炉を何年かけ廃炉するか使用済み燃料は如何に処理するか 見込みも経たない中での営業運転四十数年とは無謀と言う外は無い。
瑞穂の国の住人は雷様を始め自然の現象を非常に敬い大事にしてきた、前線様、台風様である、被害の出ないよう祈るのみである。