母の手 Ⅱ

2005-11-17 20:51:15 | Weblog
4歳ぐらいの子供の中には、稀にお母さんのお腹の中の記憶がある子がいるとか。
私が子供のころの記憶で、一番古いのは何でしょう・・・

ハッキリと何歳ぐらいのことか判るのは、
4歳違いの妹が母のお腹にいたときのことですから、
私が4歳になる一ヶ月以上前のことになります。
そのころはまだ水道がありませんでした。
洗濯などの洗い物は道を挟んだ南側の井戸の水で行っていて、
その場所で、大きくなった母のお腹を触りながら
双子かどうか尋ねたことを覚えています。
しかし、その時に母がなんと答えたかは忘れてしまいました。
その後、妹が生まれる頃に、すぐ上の姉と父と三人で寝ていたことを覚えています。

昔は八幡様の春の祭典で小さな団子を供物として配る風習がありました。
何時しかお菓子に取って代わりましたが、今でも続いています。
団子は半紙でお捻りにして参拝者に配られました。
これを母に背負われて貰ったように憶えています。
この話をすると「そんな小さかった頃のことを覚えているか?」
と言われるのですが・・・

もう一つよく憶えていることで、風船のことがあります。
おそらく5~6歳だったように思うのですが、
家族でお祭りに行った帰りのことです。
どこの祭りか憶えていないのですが、越生の五大尊か天王様あたりでしょうか。
その当時、歩きで越生に行くには、今はゴルフ場となった山道を通っていくのが常でした。
青い風船を買ってもらい、風船についた糸をしっかりと握って山道から我が家の桑畑の近くに差しかかった時です。
風船の糸が桑の枝に引っかかり、糸が手をスルリと・・・
アッと思ったときには風船は何のためらいも見せずに大空へ。
どんどん小さくなる風船をなぜか泣きもせず見上げていたのでした。
泣き虫小僧だった(今でもそうですが)私がなぜベソをかかなかったのか今でも不思議です。
その時には、歩きつかれて母の背中にいたような気がするのですが定かではありません。

母が倒れてから5日が過ぎ、相変わらず意識が回復しません。
手を握ると握り返してくれますが、次第に手の力も弱くなってきました。
面会時間が制限されているので長い間手をとっている訳にも行きません。
後ろ髪を惹かれる思いで病室を後にするのですが、
手を離すとあの風船のように遠いところへところへ飛んでいってしまいそうで・・・