ビル・トッテンさんと言う人をご存知でしょうか。
実はそう言う私も良く知らないのですが、日本の帰化してから約40年、処女作「日本は悪くない」から『日本はアメリカの属国ではない』、『「脱アメリカ」が日本を復活させる』の著書が示すように生粋の親日、そして米国および小泉改革批判の米国人のようです。
その彼の最近の経済に関する意見の概要を紹介します。
高度成長時代の政策を
・日本は(相対的)貧困率の高さで、メキシコ、トルコ、アメリカに次いで、OECD諸国中4位だった。日本国民の6人に1人が貧困線以下、月約10万円以下で生活をしている。もちろんこれは、小泉内閣時代に推し進められた「構造改革」がもたらした一つの結果にすぎない。
・私が子供の頃、アメリカで共稼ぎ世帯は多くなかった。それでも自分の家を持つことはできたし、物質的には質素ではあったかもしれないが今よりもずっと豊かに暮らしていくことができた。私の母がそうであったように、多くの母親は家にいて子育てに専念することができたし、父親1人の稼ぎでも子供たちを大学にやることは可能だった。
日本でも昭和初期ではトッテンさんの描いた環境によく似た時代がありました。
但し私の場合は子ども時代は超貧乏だったので、就職後に夜間大学しか進めませんでしたが。
今のアメリカでは両親が二人とも働かなければ、いや、働いていても家を持つこと、子供を大学にやることは難しいし、それどころか仕事を見つけることすら、困難になっている。そのアメリカの政策を次々とまねてきたのだから、この日本の現状は不思議でもなんでもない。
・オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しても、国家予算の半分以上もの軍事費を使う戦争を止めさせることはできないし、公的資金で救済されたウォール街の金融機関の従業員は、あいかわらずこの冬も高額のボーナスを手にするだろう。
・日本はいい加減にアメリカをまねるのはやめ、たとえば貧困率が最も低いスウェーデンやデンマークの政策を検討するべきだ。いや、それよりも日本が手本とすべきは、日本がもっとも成功していた昭和の高度経済成長時代であり、その時代の政策に戻せばよい。
当時は金持ちを減税したり、大企業の福祉を増やすような政策がとられることはなかった。高い累進課税率によって大きな貧富の差がでないよう配慮され、国がさまざまなインフラ整備を行い最大多数の国民の生活を向上させる再配分が行われていた。
・政府が税金を集め、それを国民に分配し、個よりも全体の利益を優先して特定の産業を保護したり国営事業をおこない、それによって国民の多くが普通の、中流の暮らしができること。貧富の格差を最小にすることは、政府の大切な役割の一つだということを忘れてはならない。
国土が狭く人的資源しかない日本はトッテンさんの言うように「従業員(つまり国民)を大切にする日本株式会社化」するか、高福祉・高負担の北欧型国家のいずれか、またはその中間を目指す他生きる道はないような気がします。
デフレ状況の日本経済
・2001年、政府はデフレ宣言を行なった。その2年前私は『消費不況・こうして突破する』という本を上梓し、大量生産、大量販売、大量消費、そして大量廃棄の経済である産業革命が限界に達したために、デフレ脱却にむけて産業構造を社会消費型に転換しなければならない、そのためにもアメリカの投機経済に巻き込まれてはならないと主張した。
・当時の小渕総理からの自民党政権がアメリカに追随した政策をとり続けたことで日本がどうなったかは、現在の失業率や貧富の格差をみればあきらかだろう。また90年代にニューエコノミーと呼ばれ、活況を呈していたアメリカがどうなったかもいうまでもない。
トッテンさんの意見で抜けているのは、私が何時も書くように、低収入の膨大な国民を持つ中国の台頭→日本企業の競争力の低下→非正規社員の採用によるコスト削減→貧困化と貧富の格差と言う厳しい日本の経済環境の変化です。
・10年前と今が違う点は、経済を支えている化石燃料が地質学的な限界に到達したことだが、人々とこの点を議論することは容易ではない。なぜなら多くの人は、技術進歩によってもっと効率的な石油資源の活用方法がみつかるか、新しいエネルギー資源が提供されるだろうと信じているからだ。実際問題として、そのどちらもいまだに提供されていないという事実を人々は認めようとはしないのである。
・石油産出国だったアメリカは、1970年代に石油ピークを迎えた。それ以降アメリカが、製造業を中心とする経済から金融投機のカジノ経済へと転換していったのは偶然ではない。それと同じことがいま世界規模で起きている。
・経済がおかしくなる理由は単純である。資本投資が個人の利益を追求する投資家によって行なわれているためだ。だからこそ、自由市場経済を標榜し、それを他国にも押し付けてきたアメリカ経済が一番おかしくなっているのであり、逆に中国のように、政治や国家戦略を重視して投資が行なわれている国のほうがカジノ経済による悪影響を受けていない。
私の持論から言えば中国株式会社の形成で、もし中国政府が道を誤らなければ、日本にとっての協力なライバルの出現です。
・つまり、日本がアメリカを倣ってとってきた個人の利益追求を尊重した経済では、安定した社会にはなりえないのだ。現在の主流である自由主義経済における「神の見えざる手」によって、結局大部分の国民は困窮を余儀なくされるのである。
・化石燃料生産が地質学的な限界に近づくと、エネルギー高騰により生産的な経済活動の利益はますます薄くなっていく。したがって投資家たちは、アメリカがまさにそうであったように設備投資に資金を投じるよりも、金融商品に投資して利益を得ようとする。そのためにカジノ経済が実体経済よりも大きく膨張してバブルとなり、それがはじけたとき実体経済に大きな悪影響が及ぶ。いま日本がデフレにあるのは、カジノ経済のバブルが崩壊し、実体経済、つまり一般国民の生活に及んだためである。
・カジノ経済の原因となった金融海賊は、政府からの財政出動と超金利政策でもちこたえているかもしれないが、多くの国民はデフレによる消費の低迷、そして倒産や失業の影響を受けている。政府がいまどちらを救済すべきかは、明らかである。
トッテンさんに限らず、経済論議には必ず裏と表がある様なので、彼の意見(経済のグローバル化に触れていないなど)をそのまま丸呑みには出来ないと思いますが、彼の意見には真実を突いている所もあるようです。
それにしても私は私は06年の8月のその場凌ぎの政治から抜け出すためにで、石油資源の問題、丸呑みのアメリカ型市場経済で良いかなどの日本が抱えている基本的な問題を取り上げて、基本的かつ長期的視野で研究するシンクタンク設立の必要性を書いてきました。
然しそこでも書いたのですが、日本人、特に政治家は地球温暖化、少子化、800兆の負債問題などを含んで基本的かつ長期的視野でじっくり考えるのが苦手のようで、お座なり、当座凌ぎの対策で凌いでできました。
そしてどうにもならなくなって経済の専門家までああでもない、こうでもないと言っているのが現状のような気がします。
そして鳩山政権の選挙目当ての子ども手当て以下の目玉政策も経済学者からの評価はゼロに近い状態、最近出した成長戦略もトッテンさんの書いたような基本的な経済認識もなく財源もあやふやで、このままでは空手形に終わりそうな気配です。
こんな日本でこれからどうなるのでしょうかね。
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