IAEAに提出した福島原発事故の政府報告書の28の教訓が発表されました。
その内、元保全技術・管理者から見た設備建設・管理上の問題点を指摘した項目を拾ってみました。
(1)地震・津波への対策の強化
津波で海水ポンプなどの損傷がもたらされ、非常用電源の確保や原子炉冷却機能の確保ができなくなる要因となった。手順書では、津波の浸入は想定されていなかった。
(2)電源の確保
事故の大きな要因は必要な電源が確保されなかったこと。多様な非常用電源の整備、電源車の配備など電源の多様化を図り、緊急時の厳しい状況でも長時間にわたって現場で電(3)(4)原子炉・格納容器・使用済み核燃料プール冷却機能の確保
海水ポンプの機能喪失によって最終の熱の逃がし場を失い、注水や原子炉の減圧に手間取った。代替注水機能や水源の多様化などにより、確実な代替冷却機能を確保する。
(5)アクシデントマネジメントの徹底
アクシデントマネジメントは事業者の自主的取り組みとされ、整備内容に厳格性を欠いていた。国の指針も92年の策定以来、見直されていない。事業者による自主保安の取り組みを改め、法規制上の要求にする。
(6)複数炉立地における課題への対応
一つの発電所に炉が複数ある場合、各炉の操作を独立してできるようにし、影響が隣接炉に及ばないようにする。
(7)原発施設の配置の基本設計上の考慮
使用済み核燃料プールが原子炉建屋の高い位置にあったため事故対応が困難になり、汚染水がタービン建屋に及ぶなど汚染水が拡大した。今後は冷却を確実に実施でき、事故の影響の拡大を防ぐ配置を進める。
(8)重要機器施設の水密性の確保
(9)水素爆発防止対策の強化
原子炉建屋に水素が漏えいして爆発する事態を想定していなかった。
(10)格納容器ベントシステムの強化
(14)原子炉及び格納容器などの計装系(測定計器類)の強化
原子炉と格納容器の計装系が過酷事故の下で十分働かず、炉の水位や圧力、放射性物質の放出量など重要情報が確保できなかった。過酷事故発生時も十分機能する計装系を強化する。
(18)中央と現地の関係機関の役割の明確化
当初は政府と東電、東電本店と原子力発電所、政府内部の役割分担の責任と権限が不明確だった。責任関係や役割分担を見直し、明確化する。
[私の意見]
・内容や時期などの細かな問題を抜きにして基本的にはこの報告は、日本将来の原子力行政の在り方を左右し、今停止状態の原発の再開という緊急を要する問題の処理のために不可欠のもので、これが出たことは良かったと思います。
・また設備管理関係の問題点の指摘もその殆どが私の書いたものと同じです。
批判的に言えばその道に幾らかでも関係のある人なら誰でも直ぐ気づく項目を並べただけに過ぎません。
・何故ならこの内容が示すように原子炉工学などの高級なレベルでなくて、冷却系統や建屋の水密性の維持、改善など、高校、高専レベルの知識を持った現場の運転・保全要員も考えつき、または実施しようとすれば出来ることばかりです。
福島第一は1号炉を始めとして、日本では古い設備です。
福島第二を始めとする新設の原発の情報が入って来るたびに、超危険物を扱う、第一の原発の現場でも、数々の改善の提案や要求がなされた筈です。
例えば女川が海抜約15mに建設の情報、福島第二の緊急電源が原子炉建屋に置かれたとの情報が入ってきたとき、福島第一の津波対策はどうかとか、ターピン建屋の防水対策は良いかなどの話が必ずでてきた筈だと思います。
詰まり福島第一のように古い設備ほど保全を強化し、設備を改善して出来るだけ最新のものにして置く、少なくともそれを補い得る対策を取って置くべきです。
勿論東京電力も民間企業ですから、何もかも新品にして置く訳には行きませんので、現場と本店との間のコミュニケーションが大切になります。
幸い、上記の報告でも(18)で東電本店と原子力発電所の役割分担の責任と権限が不明確でもでもその時、「東電本店と原子力発電所、政府内部の役割分担の責任と権限が不明確だったので、責任関係や役割分担を見直し、明確化する」とありますので、今後の調査でも現場の意見がどれだけ取り上げられたか、その前に現場がどれほどの改善意欲を持っていたかも調べて貰いたいものです。
たまたま英字新聞輪読会で今回来日して調査して報告を纏めたIAEAの報告書の記事Japan underrated tsunami threat to nuclear plants: IAEAを見つけました。
その最後にIAEAは次の様に纏めています。
"Nuclear designers and operators should appropriately evaluate and protect against the risks of all natural hazards, and should periodically update those assessments and assessment methodologies," it said.
詰まり原発の設計者とオペレーターはあらゆる自然災害の危険性について適切に評価 しそれを防ぐべきだ、そしてそれらの評価と評価方法は定期的に最新のものにすべきだと彼らは言っています。
前に書いたように東京電力は、女川が15mの高地に建設したとき、同じ東電の福島第二が緊急電源を原子炉建屋に入れたとき、技術がー確立しないまま建設した福島第一に就いても自然災害の評価を見直し、そのその防御方法を考えなおしたのでしょうか。
私はここに福島第一の事故最大の原因があると思っています。
そして政府もIAEAはこのような結論を出している時に、その結論に対しての回答を出さないままの報告書をIAEAに提出して受け入れられると思っているのでしょうか。
(なお新聞によるのこの報告書作成に就いて色々な経緯もあり、業界からの反発もあると解説していますが、この問題に就いては紙面の都合で省略します。)
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