普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

玄海原発は爆発するのか? 

2011-06-24 12:39:38 | 電力、原発

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加圧水型原子炉の概要


 私は今まで何回かに亙って福島第一の原発と玄海原発の比較をして来ましたが、週間現代の「玄海原発は爆発する」の記事を見て玄海原発1号機は「中性子照射脆化」という現象によって、原子炉の圧力容器が壊れ、爆発する危険が高いことを指摘があることを知らないまま、私なりの意見を書いて来たのに気付き、一度玄海原発に関する記事を削除し、改めとこの問題を勉強した後、再度玄海問題に就いて書こうと思いたちました。
 幸い同ブログで頂いた憂国仙人さんからの「限界原発爆発の嘘」の適切なコメントも参考にして頂き、私の忘れ掛かった知識を動員して改めに、金属材料学がご専門の井野博満東大名誉教授の書かれたものを勉強して見ました。
 (と言うことで生半可な知識をもとに書きますので間違いなど多いと思いますがご教示くだされば幸いです。)
井野さんの論点の要約
・原発特有の中性子線によって金属の柔軟性・弾力性が失われて"硬く"なり、壊れやすくなる。
・鉄鋼の脆くなる限度
脆性遷移温度は普通マイナス20℃だが、その限度が中性子により上がって来る・玄海第一の場合76年から35→37→56に上がり09年では一気に98℃まだ上がった、その原因は判らないが不純物の存在によるものだろう。
・これは炉内温度が98℃になると炉本体が急に脆くなることを意味する
・何らかの原因で通常の冷却機能が停止し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動して原子炉圧力容器が急冷されると、その際に容器そのものが破壊されてしまう危険性がある。
からです。
・ガラスのコップに熱湯を注ぐと割れるのは、コップの内側と外側の温度差によって生じる力に、ガラスが耐えられなくなるからだ。
・玄海原発1号機のような加圧水型軽水炉(PWR)は通常、圧力容器内が150気圧、300度以上の高圧・高温で運転されている。150気圧の圧力容器が壊れ、爆発したらどうなるか。容器内の放射性物質はすべて噴出し、空高く舞い上がり、広大なエリアに降り注ぐことになります。福島第一どころか、チェルノブイリ以上の大惨事になるのは間違いない。

加圧水型原子炉の特徴
・原子炉本体と蒸気発生器は完全に分離している
・原子炉で発生した熱は蒸気発生器で熱交換され、その蒸気はタービンに送られる
・逆に言えば原子炉で上昇した熱は蒸気発生器で冷やされる。
・沸騰水型原子炉のように、冷却機能が停止して空たき状態になったところECCSよる冷却水が直接に原子炉に一度に入ることはない。
以下は玄海原発が保安院に提出して緊急停止要領
です。 (なお同報告書には詳しい図が載っていますのでご覧下さい。)
全交流電源喪失→補助給水ポンプで蒸気発生器に給水(タービン行配管の弁で減圧、放射能のガスは出ない)→蒸気発生器との自然循環で原子炉の炉心を冷却→高温停止(一次冷却剤温度170℃)→一次冷却剤へのほう酸注入(未臨界の維持)→蒸気発生器で二次側での冷却→低温停止達成(一次冷却剤温度93℃以下)
・詰まり蒸気発生器でECCSの水の二次冷却水により冷やされた一次冷却水は、一次冷却水ポンプが止まっているので自然循環させて、原子炉を冷やすのです。
 言い換えれば時間を掛けて原子炉を冷やそうとしているので、井野さんの言うように原子炉本体が急冷される危険性は大幅に減るし、コップのたとえのような急激な炉本体の温度変化を避けようとしています。
・原発で言えば地震の時の温度は300℃ですから鋼材は十分に延性の範囲運転されています。         
・玄海が計画している93℃の時の圧力は約1気圧ですから、150気圧に耐える設計の原子炉が「想定外を越える」異常でもない限り、そして材料の引っ張り強さが極端に減少しない限り破壊することはとても考えられませんが、93℃の時の実際の引っ張り強さはどの程度になっているのでしょう。(参照:蒸気圧線図) 
・「150気圧の圧力容器が壊れ、爆発したらどうなるか」と書いてありますが、150気圧に相当する温度は300℃近くで井野さんの指摘している脆性遷移温度の98℃を遥かに越える鋼材の持つ延性の範囲です。
 東大の名誉教授がこんなことを書くなど考えられませんので、週間現代が勝手に書き加えたものとしか思われませんが、果たしてどうなんでしょう。
 井野さんの書かれた内容で唯一つ賛成なことがあります。
 老朽化原発は一刻も早く、廃炉にする必要があります。玄海1号機のように、本来40年の使用を想定していたのを強引に60年に延長して使おうなどというのは、もってのほかです。の意見です。
 私は原発という危険設備は常に最新技術を吸収しさらに安全な設備にすべきと考えています。
 もしそれが原子炉本体のように原発設備総てを取り替えると同じになるなら、廃炉も思い切ってやるべきだと思います。
 玄海一号機は1975年建設だそうですので、想定の40年後の2015年前から大改造か廃炉を考えるべきだと思っています。

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