毎日新聞による福島第1原発事故東電社内調査中間報告・要旨 です。
私は自分の保全技術・管理者の経験から、この様な危険物を取り扱う設備は事故を起こしたらお終いですから、故障後の経過より、いかに事故を防ぐかに就いてが最重要の課題と思って居ますので、これに関する部分を拾って見ました。
・事故の概要
1~3号機が運転中だったが、東日本大震災を受け原子炉はすべて自動停止。すべての外部電源が失われたが、非常用ディーゼル発電機が起動。その後襲来した津波により冷却用海水ポンプや非常用発電機、電源盤が冠水したため6号機を除き全電源喪失状態となり、炉心冷却機能が失われた。
・津波の評価、対策
当社は、具体的な津波評価方法を定めたものとしては唯一の基準となる「原子力発電所の津波評価技術」に基づき、津波水位を5・4~5・7メートルと評価し、ポンプ電動機のかさ上げや建屋貫通部の浸水防止対策を実施。国の承認を受けた。
明治三陸沖地震、貞観地震のいずれのモデルとも異なり、より広範囲を震源域とする巨大地震だった。
・非常用ディーゼル発電機を気密性の要求されないタービン建屋に設置するのは、当時の米国の標準的な配置。
・過酷事故対策として、自主的取り組みとして代替注水や隣接号機からの電源融通などの設備変更、事故時運転操作基準の改定を実施してきた。
今回の津波は事前の想定を大きく超え、作動が期待されていた機器、電源はほぼすべて機能を喪失した。結果として事故に対抗する手段を備えることができず、炉心損傷を防止できなかった。
・地震による影響
(主要設備は勿論)耐震重要度の低い機器でも、地震によって機能に影響する損傷はほとんど認められなかった。
・纏め
・直接原因は未曽有の津波だが、ハード、ソフト面で事前の安全対策が十分でなかった。
・ものづくりは日本が世界一流との自負が「安全神話」を生んだ。
一昨日NHKが放送した東電元幹部 事故の背景を証言 です。
・東京電力の元副社長で原子力部門のトップを務めていた友野勝也さんは、「原発を導入してからしばらくの間は、トラブルが多発して稼働率が下がり、原発はお金ばかりかかる『お荷物』のような状態だった。いかにトラブルを少なくしてコストを下げるのかばかりに目を奪われていた」と述べました。そのうえで、機器の点検や管理を徹底した結果、1990年代にはトラブルが大幅に減って稼働率が向上したことを挙げ、「トラブルを少なくして国の検査をクリアしさえすれば、原発は安全だと錯覚し、今回のような深刻な事故への対策や危機感が薄れていった」と証言しました。
国会の作業部会の松井孝治(民主)、塩崎恭久(自民)、遠藤乙彦(公明)、水野賢一(みんな)の各氏へ
・150ページと言われる「東電社内調査中間報告」言い訳ばかりでそれからは何も産まて来ません。
それに比べて東電の幹部の話しは多くの問題を含んでいます。
何時も書く事ですが、同じ災害に遇いながら無事停止した女川と福島第二の比較検討が何もありません。
女川は他社ですから難しいとか、同業への遠慮もあるかも知れませんが、自社の福島第二との比較は出来る筈です。
報告では、非常用ディーゼル発電機を気密性の要求されないタービン建屋に設置するのは、当時の米国の標準的な配置。と書いていますが、技術の進歩で福島第二では原子炉建屋に非常用電源を設置されています。
報告書で福島第二との比較をしなかっのは、東電では原子炉建屋に緊急電源を置く必要性を認識していたのに、何も手を打たなかったことを指摘されるのを恐れたのかも知れません。
報告書ではものづくりは日本が世界一流との自負が「安全神話」を生んだ。と有りますが、原子核と言う超危険物を抱えている、現場の人達は本当に現場が安全だと思っていたのでしょうか。
福島第二では非常用電源が原子炉建屋に設置されたと聞いた福島第一の現場の人達は黙ってそれを聞き流したでしょうか。
彼らは当然に会社へ第一も第二と同様に非常用電源を原子炉建屋に移すか、タービン建屋の防水対策の強化を提案した筈です。
話に依れば吉田所長は事故後の処理の猛烈に忙しいときに、青山繁晴さんを案内して防潮堤の設置の必要性を話したそうです。
しかし会社のトップの人達は「安全神話」を信じていたのかどうか判りませんが、旧幹部の人の話しによれば、「コストを下げるのかばかりに目を奪われていた」幹部の人達は現場の言い分を却下したのか知れません。
「機器の点検や管理を徹底した結果、1990年代にはトラブルが大幅に減って稼働率が向上した」と言っていますが、現場で良く言う「ぱち当て」というその場限りの間に合わせで済ませたのかも知れません。
本来ならIAEAが指摘したように、オンボロの古い設備に対して、技術の進歩に伴い基本的な改善を進めるべきだったのです。
どのような会社であれ運転や設備保全をする人は出来るだけ安全にしかも運転・保全コストを下げようとします、そして本社は製品のコストを下げようとします。そして現場の意見も聞きたいし、本社の意向にも沿わねばならないと言う板挟みに逢う建設部門。これはどこの会社でもある図式です。
この問題に突っ込みを入れるのはやはり現場で苦労した人達が最適任です。
要点は現場の保全係員がどれだけ設備改善、強化の仕事をしたか。
そして現場からの改善提案を会社幹部がどれだけ受け入れたかが、今回の事故の最大問題と思います。
「国会の事故調査委員会・政府の事故調査・検証委員会の二の舞か?」にも書きましたが繰り返します。
これらは原発に似た発電、石油や化学工業などの装置産業の係員なら誰でも気付くことですが、今回示されたメンバーにとっては殆ど無関係な仕事の範囲です。
私は事故の後始末でなくて、事故発生の直接原因を本気で調査するのなら、上記の産業の保全・管理技術者を投入すべきと思います。
そして今回の原発事故が福島第一特有のものか否かは今後の原発の在り方を決める一番のポイントと思います。 (私は無事停止した女川、福島第二をみても第一特有の可能性が大きいと思いますが。)
そのためには先ず前記の技術のことを見ている「日本プラントメンテナンス協会」の意見を聴取する価値があると思います。
このままのメンバーで仕事を進めれば、政府の事故調査・検証委員会のようにまたしり切れとんぼに終わる?ような気がしてならないのですが。
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