波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

欲望を肯定する人生

2021年11月18日 | 日記・エッセイ・コラム

戸内寂聴さんご逝去。『愛した 書いた 祈った』が自ら残した墓碑の言葉だが、置き換えて『性 生 聖』が浮かぶ。すべて自らの欲望の肯定、別の言葉で言えば自分の命ずるままに人生を創造する人間らしさ。貫くには激しい人生にならざるを得ない。
年齢に驚く。長く生きられたこと以上に、女性がほとんど無権利な戦時に大学へ通い結婚し、戦後に中国から帰国し離婚し作家を志したこと。


の作家が男性だったら、『不倫』の烙印は若気の至りか芸術家の特質ぐらいに扱われていただろう。自らの不倫にこれほど隠さず正対する作家を他に知らない。また、政治的な言動も特筆される。文化勲章受章の日本を代表する小説家が、集団的自衛権反対や憲法9条改正反対で国会前の集会に出かける姿は、何とも清々しい。芯から戦争反対の人、戦争の体制や精神に抗った作家としても文学史に残るだろう。亡くなった後の評価が楽しみな人だ。


風氏は思う、作家の不倫と小説(その他の芸術作品も)の価値には関係がない。人のあるべき姿とか正しい精神から解放されたところに小説の存在価値があるからだ。紙面世界で欲望開放の有無が小説評価の基準。作家が倫理的かどうかで小説を選んだことは一度もない。
もともと不倫とか離婚とかは全く当事者固有の問題。前に、伊丹十三は不倫していたから嫌いで映画も見ないという人がいた。へーっと思ったが、作家とか芸能人の好き嫌いの基準は色々あるものだ。ちょっと怖いのは、小説家の選び方でその人の倫理観や人間性みたいのが何気なく判別されていること。つまり、その人の欲望が露わになること。こわー


新聞の写真で寂聴さん描く。目と口元に特徴  不倫で思いだした故渡辺淳一、読みたいと思わないのは読む価値が無いからだね「COP26」を身近に感じた、『人新世の「資本論」』(斉藤幸平著:講談社新書)を読み始めてご遺族から『キャンサー  ギフト』(杣田美野里著:北海道新聞社)いただく。短歌と写真に見入る。

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