電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第194回定期演奏会でブルックナーの5番を聴く

2009年01月19日 19時46分19秒 | -オーケストラ
日曜の午後、山形交響楽団の第194回定期演奏会に出かけました。曲目はブルックナーの交響曲第5番、指揮は山響音楽監督の飯森範親さんです。当日は、早めに家を出て、途中、某寿司屋ののれんをくぐり、腹ごしらえ。これがうまかった。前回とは異なり、余裕を持って演奏会に臨みます。駐車場には13時半前に入りました。
会場のテルサホールに入ると、前列中央の良い席で、指揮者のわきの高い位置に、三本の録音用マイクが立っています。たぶん、昨日の演奏会と今日の演奏会と、あと他のセッションとともに、どれかのテイクがCDになるのでしょう。楽しみなことです。



恒例の指揮者プレトーク。ブルックナーの生い立ちや人柄、版の問題などをかいつまんで説明しました。サヴァリッシュ先生にもいろいろなことを教えてもらったこと、アーノンクールが言っていたことだが、第1楽章はモーツァルトのレクイエムのように始まり、第4楽章はハレルヤのように終わる。しばしば出てくるブルックナー休止は、オルガンで作曲した教会の長い残響が減衰するのを待つ時間だろう。ブルックナーは、1866年にウィーンで第九の演奏を聴いている。第九の4楽章のように、第1楽章の主題を提示しクラリネットが否定、第2楽章の主題を提示しクラリネットが否定、というように、第九のスタイルを取っているのでは、というものでした。

さて、演奏が始まります。コンサート・ミストレスは犬伏亜里さん。第1ヴァイオリンとチェロが向かって左手に、第2ヴァイオリンとヴィオラが右手に並ぶ対向配置です。コントラバスは左奥、弦の奥の正面に木管、さらに金管部隊が陣取ります。奥のほうはよく見えませんが、Wikipedia によれば、弦5部のほかには、Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(3), Tb(3), BTuba, Timp という構成とのこと。

第1楽章、アダージョ~アレグロ。コントラバスとチェロのピツィカートに乗ってヴィオラ、第2ヴァイオリン、そして第1ヴァイオリンと、たしかにモーツァルトのレクイエムを思わせる始まり。金管のコラールが入ると、ああ、ブルックナーだなぁと感じます。ティンパニも大活躍。高弦のトレモロの中、ヴィオラとチェロが第1主題を提示。木管は鳥の声のように軽やかに鳴いて見せ、第2主題はぐっと沈んだ表情で。音楽は繰り返しながら次第に高揚していきます。

楽器の汗をぬぐい、まずはチューニングを。楽員の皆さん、集中しているのがよくわかります。

第2楽章、アダージョ。弦のピツィカートに乗って、オーボエがやや物寂しげでミステリアスな主題を吹き、そしてファゴットも加わります。やがてクラリネットとフルートも加わり、ヴァイオリンに引き継がれていきます。クラリネットが下降しティンパニが静かにドロドロドロ~。この後に続く弦楽合奏の美しいこと!ほれぼれします。フルートとヴァイオリンがささやき交わすさまも全体の中に位置づけ、この楽章では金管もあまり突出しすぎず、全体の響きのてっぺんに輝きを加えるような鳴り方で、絶妙のバランスです。ティンパニの静かな連打がベースに低く轟きながらの、見事な終わりです。

第3楽章、スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ。ようやくピツィカートでない始まりです。でも、前の楽章のピツィカートでの音形がせわしなく奏される中で、木管がテーマを吹きますが、すぐにテンポを落とした別の旋律が現れ、ティンパニが低音で遠雷のようにとどろき、金管が鳴り響く、という具合。弦はやっぱりトレモロの嵐です。スケルツォらしく、やや軽快さを持ちながら、全休止と迫力の全奏が現れます。そして力感をもってクレッシェンドし、楽章の終止へ。

犬伏さんが立ち、再びチューニングを行います。第2ヴァイオリンのトップにすわるヤンネ館野さん、中嶋さんも真剣な表情です。チェロの宮城さん、渡辺さんも、チューニングに余念がありません。客席のほうも含め、ホール全体が静けさに包まれる中で、第4楽章、アダージョ~アレグロ・モデラートが始まります。

この楽章も、コントラバスのピツィカートから。第1楽章の主題が提示されと、クラリネットが否!と答えます。続いて第2楽章の主題も、クラリネットにより否定されます。たしかに、ベートーヴェンの「第九」終楽章を連想させる手法です。主部が始まり、フーガの織り目を間近に見るような時間を味わいます。疲れを知らない金管のコラールは高々と鳴り響き、弦楽は開け放った窓から吹き込む風にレースのカーテンがそよぐ透明感。高揚するフィナーレに酔いました。ブラボーの声も飛び、いや~満足です~!!

指揮者の指示でホルンが立ち、聴衆の大きな拍手を受けます。そしてティンパニが続き、さらに金管が、木管が拍手を受け、最後に弦楽セクションも立って、すばらしい音楽と演奏の感動を分かち合いました。

ほんとにいい演奏会でした。堪能しました。個人的には、フィナーレの見事さやティンパニ、金管部隊のタフな熱演はもちろんのこととして、それに加えて、第2楽章の弦楽合奏の美しさを、心から讃えたいと思います。


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