このところ、通勤の音楽で聴いていたのが、ベートーヴェンの交響曲第2番です。この曲は、1802年に完成し、1803年の4月5日に、アンデアウィーン劇場において、ピアノ協奏曲第3番等とともに初演されたのだそうで、若いベートーヴェンの溌剌とした清新さを残しながら、聴覚障碍の絶望を乗り越え、音楽の革命児としての役割に踏み込んで行こうとする、まさにその頃の時期にあたります。
演奏は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による全集の掉尾を飾る1964年10月23日の録音と、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が120周年を記念して公開した、マリス・ヤンソンスが指揮する2004年のMP3ファイル。
楽器編成は、Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2), Timp に弦楽5部、というもの。
第1楽章、アダージョ・モルト~アレグロ・コン・ブリオ。セルとクリーヴランド管の演奏の、冒頭のジャジャーン!がすごいです。整然としていながら、実に力強い始まり。♪=84 と指示された序奏部のアダージョが、いかにもベートーヴェンらしいです。主部は、d(2分音符のつもり)=100、アレグロ・コン・ブリオと指定があります。力強い第1主題、行進曲風の第2主題が、対照も鮮やかに展開されます。演奏の緊張感、集中感が、精妙で力強いリズムの対比とともに、特徴的です。
第2楽章、ラルゲット。この楽章には、若いベートーヴェンの魅力となっている、清新な叙情性に通じるものがあります。第1楽章の集中と緊張に対し、清く安らかな緩徐楽章で、なにかエピソードを求めたくなるような、ロマンティックな気分もあります。
第3楽章、スケルツォ、アレグロで。ベートーヴェンの9つの交響曲の中で、はじめてスケルツォ(イタリア語で冗談の意味だそうです)を名乗っている短い楽章です。伝統的な3拍子の舞曲(メヌエット)の性格を離れ、より激しく速く、もしほんとに踊ろうと思っていたら「冗談だろ!」と言われるような、そんな楽章。確かに、冒頭の、音色と強弱の両面で鋭い対比を見せる楽想は、もはやロココ時代の優美なメヌエットではありません。セルの演奏は、シンコペーションによるリズムも抜群の切れ味です。
第4楽章、アレグロ・モルト。本楽章では、速いテンポにもかかわらずまったく意に介さないような、唖然とするばかりの見事に精妙なリズムの処理と、クールな外見とは裏腹に、次第に高揚する熱気に驚かされます。セルとクリーヴランド管の演奏の精華を示す代表例の一つと言ってよいのかもしれません。
一方で、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏を、MP3 ファイルを再生しながらタイムを引き算して調べたところ、緩徐楽章はむしろ速めで、わりに淡々とした感じです。ふっくらとした響きや、やわらかで滑らかな印象を受けますが、次第に心理的な速度を増し、終楽章の熱狂的なテンポに至る構成などは、曲全体の設計という意味で、おそらく指揮者の意図するところでしょう。
■セル指揮クリーヴランド管 (LP:SOCZ 38-43, CD:SBK 47651)
I=10'09" II=11'30" III=3'37" IV=6'16" total=31'32"
■ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管
I=11'47" II=10'38" III=3'19" IV=5'57" total=31'41"
写真は、LP 全集の解説書とCD、スコアはネット上のPDFファイルをダウンロードして印刷したものです。こういうのを見ると、著作権で保護される期間が過ぎた後は公共の財産になる、という考え方の美点が、実に良く理解できます。
演奏は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による全集の掉尾を飾る1964年10月23日の録音と、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が120周年を記念して公開した、マリス・ヤンソンスが指揮する2004年のMP3ファイル。
楽器編成は、Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2), Timp に弦楽5部、というもの。
第1楽章、アダージョ・モルト~アレグロ・コン・ブリオ。セルとクリーヴランド管の演奏の、冒頭のジャジャーン!がすごいです。整然としていながら、実に力強い始まり。♪=84 と指示された序奏部のアダージョが、いかにもベートーヴェンらしいです。主部は、d(2分音符のつもり)=100、アレグロ・コン・ブリオと指定があります。力強い第1主題、行進曲風の第2主題が、対照も鮮やかに展開されます。演奏の緊張感、集中感が、精妙で力強いリズムの対比とともに、特徴的です。
第2楽章、ラルゲット。この楽章には、若いベートーヴェンの魅力となっている、清新な叙情性に通じるものがあります。第1楽章の集中と緊張に対し、清く安らかな緩徐楽章で、なにかエピソードを求めたくなるような、ロマンティックな気分もあります。
第3楽章、スケルツォ、アレグロで。ベートーヴェンの9つの交響曲の中で、はじめてスケルツォ(イタリア語で冗談の意味だそうです)を名乗っている短い楽章です。伝統的な3拍子の舞曲(メヌエット)の性格を離れ、より激しく速く、もしほんとに踊ろうと思っていたら「冗談だろ!」と言われるような、そんな楽章。確かに、冒頭の、音色と強弱の両面で鋭い対比を見せる楽想は、もはやロココ時代の優美なメヌエットではありません。セルの演奏は、シンコペーションによるリズムも抜群の切れ味です。
第4楽章、アレグロ・モルト。本楽章では、速いテンポにもかかわらずまったく意に介さないような、唖然とするばかりの見事に精妙なリズムの処理と、クールな外見とは裏腹に、次第に高揚する熱気に驚かされます。セルとクリーヴランド管の演奏の精華を示す代表例の一つと言ってよいのかもしれません。
一方で、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏を、MP3 ファイルを再生しながらタイムを引き算して調べたところ、緩徐楽章はむしろ速めで、わりに淡々とした感じです。ふっくらとした響きや、やわらかで滑らかな印象を受けますが、次第に心理的な速度を増し、終楽章の熱狂的なテンポに至る構成などは、曲全体の設計という意味で、おそらく指揮者の意図するところでしょう。
■セル指揮クリーヴランド管 (LP:SOCZ 38-43, CD:SBK 47651)
I=10'09" II=11'30" III=3'37" IV=6'16" total=31'32"
■ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管
I=11'47" II=10'38" III=3'19" IV=5'57" total=31'41"
写真は、LP 全集の解説書とCD、スコアはネット上のPDFファイルをダウンロードして印刷したものです。こういうのを見ると、著作権で保護される期間が過ぎた後は公共の財産になる、という考え方の美点が、実に良く理解できます。