文藝春秋社刊の単行本で、高橋義夫著『かげろう飛脚~鬼悠市風信帖』を読みました。
鬼悠市は、松ヶ岡藩の浮組に属する足軽で、鳥籠を作る職人です。六尺豊かな巨漢でありながら、悠市が編む竹籠は精妙優美、「鬼の鳥籠」の名で江戸・上方まで知られていますが、もう一つ、奏者番の加納正右衛門の直々の命により、秘密の仕事を請け負うこともあります。今回は、松ヶ岡藩藩主家の御分家の元家老・日向杢兵衛を本家で預かってほしいとのことで、長源寺に保護軟禁せよ、とのことです。長源寺の境内には立入禁止、逆らう者、怪しい者は斬り捨ててかまわぬとのこと。悠市は日向殿の世話を、養子の柿太郎に命じます。
長源寺というのは、藩主代々の墓があり、裏手竹林の竹と筍は鬼家の勝手次第というのですから、鬼悠市は一種の治外法権の地の管理者というような立場でしょうか。
日向杢兵衛はなかなかの人物のようで、絵心もあり、植物の絵を描いて日常を過ごしていますが、どうもお家騒動がらみのような気配も見えます。
あらすじはお楽しみということで省略しますが、時代物にはありがちな色っぽい話は挿入されず、まことにストイックなストーリー展開。先代藩主の未亡人が庵する尼寺の尼僧が図譜のやりとりに登場しますが、実はこれが重要な伏線になっています。江戸時代の出羽の国とおぼしき土地の物語は硬質のミステリー風で、なかなかいい雰囲気です。
鬼悠市は、松ヶ岡藩の浮組に属する足軽で、鳥籠を作る職人です。六尺豊かな巨漢でありながら、悠市が編む竹籠は精妙優美、「鬼の鳥籠」の名で江戸・上方まで知られていますが、もう一つ、奏者番の加納正右衛門の直々の命により、秘密の仕事を請け負うこともあります。今回は、松ヶ岡藩藩主家の御分家の元家老・日向杢兵衛を本家で預かってほしいとのことで、長源寺に保護軟禁せよ、とのことです。長源寺の境内には立入禁止、逆らう者、怪しい者は斬り捨ててかまわぬとのこと。悠市は日向殿の世話を、養子の柿太郎に命じます。
長源寺というのは、藩主代々の墓があり、裏手竹林の竹と筍は鬼家の勝手次第というのですから、鬼悠市は一種の治外法権の地の管理者というような立場でしょうか。
日向杢兵衛はなかなかの人物のようで、絵心もあり、植物の絵を描いて日常を過ごしていますが、どうもお家騒動がらみのような気配も見えます。
あらすじはお楽しみということで省略しますが、時代物にはありがちな色っぽい話は挿入されず、まことにストイックなストーリー展開。先代藩主の未亡人が庵する尼寺の尼僧が図譜のやりとりに登場しますが、実はこれが重要な伏線になっています。江戸時代の出羽の国とおぼしき土地の物語は硬質のミステリー風で、なかなかいい雰囲気です。