当地山形県には「さわし柿」という言葉があり、年配者を中心に普通に使われています。要するに渋柿から渋を抜き、食べられるようにした柿のことです。「さわす」という言葉は、漢字では「醂す」と書くのだそうで、もしかしたら古語が地方ではいまだに残って使われている例の一つなのかもしれません。
渋柿から渋を抜く方法として焼酎を使うアルコール脱渋法のほかに、一定温度の湯につけておく「湯ざわし法」というのもありました。いずれにしろ、渋柿の渋を水に不溶化してしまえば本来の糖度がストレートに感じられるようになります。いわゆる甘柿よりも格段に甘い「平核無」(ひらたねなし)柿は、いわゆる庄内柿の系統のようです。
今年は、第一弾の干し柿を下げ終わってから、次はアルコール脱渋法で「醂し柿」を作りました。季節の営みは日常性の象徴でもあります。干し柿が下がり、醂し柿の封を切る日を数えるのは見慣れた恒例のものではありますが、失いたくない幸福の象徴の一つかもしれません。