志情(しなさき)の海へ

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【東アジア共同体研究所(EACI) News Weeky Vol.009 「昭和の大津波」】

2015-03-06 18:57:35 | 沖縄の過去・現在・未来

【東アジア共同体研究所(EACI) News Weeky Vol.009 「昭和の大津波」】

 
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   EACI News Weekly  第9号(3月6日号)
  東アジア共同体研究所(East Asian Community Institute )
    http://eaci.or.jp/

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【目次】

【1】《今週のニュース 2/28-3/6》
 政治(2)、経済(1)、国際(1)、社会(2)

【2】《UIチャンネル放送予告 No.093》
  3月9日(月)20時~
  鳩山友紀夫×高野孟対談「迷走する『安倍戦後70年談話』」
  http://live.nicovideo.jp/watch/lv212556386

【3】《EACIレポート》
 3月8日(日)14時~17時
 キックオフ特別番組「琉球弧防災ネットワークラジオ311」放送!
 ON AIR:FMよみたん78.6
      U-STREAM(http://www.fmyomitan.co.jp/

【4】《研究員コラム》
 緒方修(東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター長)
 「昭和の大津波」

【5】《EACI会員からの投稿》
 小島正憲
(株式会社小島衣料オーナー、アジア・アパレルものづくりネットワーク代表理事)
 「アジア読書録vol.1『人間の目利き』(吉村作治・曽野綾子共著、講談社、2014)」


【6】《連載》検証・フテンマ(琉球新報より)
 第1部 米国の深層 vol.9「海兵隊の影響力」

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【1】《今週のニュース 2/28-3/6》
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【政治】
■辺野古埋め立て「夏にも着手」防衛相が初言及
(沖縄タイムス 2015.3.4)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=105554

■政府 集団的自衛権で「新事態」の方針示す
(NHK 2015.3.6)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150306/k10010005741000.html

【経済】
■TPP 3月に首席交渉官会合
(農業協同組合新聞 2015.3.2 )
http://www.jacom.or.jp/news/2015/03/news150302-26604.php

【国際】
■中国:軍備増強、アジアで突出
(毎日新聞 2015.3.5)
http://mainichi.jp/select/news/20150306k0000m030077000c.html

【社会】
■辺野古新基地:雨の中 抗議運動続く
(沖縄タイムス 2015.3.6)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=105949

■県道使用の日米共同文書開示を停止 国が県提訴
(琉球新報 2015.3.6)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-239885-storytopic-1.html

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【2】《UIチャンネル放送予告 No.093》
3月9日(月)20時~
鳩山友紀夫×高野孟対談「迷走する『安倍戦後70年談話』」
http://live.nicovideo.jp/watch/lv212556386
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第93回目となります、3月9日(月)20時からのUIチャンネル放送は鳩山
友紀夫×高野孟対談「迷走する『安倍戦後70年談話』」をお送り致しま
す。

※会員(月額324円)の方は全編視聴できます。非会員の方は有料
(150pt)となります。(会員になるには携帯キャリア決済、カード決
済が可能です。個別映像を視聴する場合は、ログイン後、ニコニコポイ
ント150ptにてチケット購入してください)

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【3】《EACIレポート》
3月8日(日)14時~17時
キックオフ特別番組「琉球弧防災ネットワークラジオ311」放送!
ON AIR:FMよみたん78.6
     U-STREAM(http://www.fmyomitan.co.jp/
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3月8日(日)14時~17時にFMよみたん78.6にてキックオフ特別番
組「琉球弧防災ネットワークラジオ311-島を超えた共助へ、市民の
ラジオをつなぐ-」(主催:琉球弧メディアネットワーク311放送委
員会、共催:那覇市、協力:那覇市ぶんかテンブス館、講演:読谷村)
を放送いたします。

当日はインターネットでも試聴できますので、ネット配信サービス
「U-STREAM」でお繋ぎ下さい。

■ネット視聴は以下のリンクより
http://www.fmyomitan.co.jp/

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【4】《研究員コラム》
緒方修(東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター長)
「昭和の大津波」
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これまでの一連のレポートは、私が直接見聞したものを中心にお伝えして
いる。沖縄から様々な現場の実況中継のつもりで書いているが、今回ばか
りはそうはいかない。なにしろ発生したのが1771年、明和8年、240年以
上も前の話だ。ただし証拠はあちこちに残っている。石垣島の大浜にある
崎浜公園には津波大石と呼ばれている巨岩がある。御嶽(うたき)として
崇められ、コンクリートの階段が付いて上まで登れるようになっている。
最初の数段が欠けているので、そこはつかまってよじ登らなければならな
い。推定重量750トン。白保の岸近くの海岸には点々と岩がころがっている。
津波で運ばれた岩だ。もっとはっきりと分かるのが下地島の海岸だ。
1月31日に宮古島から伊良部島に橋がかかった。さらに伊良部島から下地
島には短い橋があるので、すぐに渡ることが出来る。(下地島には3000メ
ートルの大滑走路があるのだが、この話は別の機会に)さて下地島に向か
う道路から右手の海岸を見ると、遠浅の海岸に何十個もの岩が並んでいる。
これもまた240年以上も前の大津波の「置き土産」だ。毎日の潮の満ち引
きにも、台風にも動かぬ岩たち。陸に打ち上げられた岩も多い。これらは
下地島の滑走路を造るときに破砕されて埋められた。
ほかにも宮古島の帯岩と呼ばれる巨岩、1000トンくらいか。目の前に鳥居
が立っていて、御嶽となっている。そもそも御嶽には日本の神社の象徴で
ある鳥居などは必要ないのだが、これは和琉折衷だろう。東平安名崎の灯
台の手前にも、左下に下った場所にも巨大な岩が半島から剥がれるように
立っている。全て明和の大津波の跡だ。
いったいどれくらいの規模だったのか。
マグニチュード7.4、8、8.5と諸説がある。フィリピン海プレートがユー
ラシアプレートの下に沈みこむために起きた海溝地震、とされる。石垣島
の震度は4。だとすれば並みの地震だが、波の高さは二十八丈二尺(85.4
メートル)との記載もある。実際には半分、あるいは35メートル程度と推
測されている。犠牲者は八重山で9400人、生存者は18607人、3分の1が
亡くなった。その後飢饉や悪い病気が流行ったりして、明治時代まで影響
が及んだ。なお「明和」の大地震は後世に名づけられたもので、この頃は
中国と同じ暦を使っており、乾隆三十六年と石碑には記されている。この
地域での津波の襲来は過去2400年で9回起きた。ということは267年に一
度だ。明和の大津波が244年前。単純に計算すると約20年後には再び海底
が地すべりを起こし、大津波が襲うかもしれない。

人魚と大津波
明和の大津波は、いまに語り継がれている。
「八重山昔ばなし」(制作 南山社)の「人魚と大津波」から引用しよう。
石垣島の白保村のとなりに野原(のばる)という小さな村がある。
(注・標高100メートルくらい)3人の若い漁師がざん(人魚)をつかまえ
た。上半身は美しい女、下半身は魚。人魚は大粒の涙を流して海の中に返
してくれるように頼んだ。3人の若者は、海の中に放してやる。すると人魚
は「助けていただいたお礼に、海の国のものしかわからない秘密をお教え
しましょう。今、海の神様がたいへん怒っていて、ほどなく大津波があな
た方の村を襲うでしょう。だから少しでも早く村に帰って、山の方へ移っ
て下さい」と言って海の中へ深くもぐり、姿を消した。夕方になると、突
然、遠く水平線に壁のような大波が現れたかと思うと、島に向かって襲い
掛かってきた。

この「ざん」は八重山ではジュゴンのこと。宮古島ではよないたま、と称
されるようだ。りんけんバンドの唄にも出てくる。琉球王は、自らの長寿
を求めて、人魚が取られたら、必ず上納させた、という。(同書p26)中
国への貢納にも使われたようだ。
八重山の新城島には多数のジュゴンの骨が残されており、DNA鑑定も進ん
でいる。フィリピンあたりから800キロくらいは回遊する。辺野古沖のジ
ュゴンはわずかに2~3頭くらいしか目撃されていないが、西表島沖など
にもいるのではないか。なにしろ人がいて実際に見たものしかカウントさ
れないので分からない。

3.11を前に3時間スペシャル番組放送
明和の大津波が起きたのは3月10日、と聞いて驚いた。しかしこれは旧暦、
今でいうと4月20日あたり。大津波の爪痕をあちこち見て回ったのは3月8
日(日)に放送予定のスペシャル番組に備えるためであった。FMよみたん
(読谷)を中心に14時から17時の3時間にわたってコミュニティFM4局を
つないでお送りする。南から宮古島のFMみやこ、沖縄本島のタイフーンFM、
FMよみたん、そして鹿児島県奄美大島のあまみFM、ちょうど台風の北上す
るルートだ。上記の台風常襲地帯のFM局の連携は、市民への情報提供が充
実し大変意義のあることだ。私は総合プロデューサーとして番組の前後に
企画の趣旨や締めくくりの言葉を述べよ、との依頼があった。それだけで
は上から目線で面白くない。地震・津波の時には、ともあれ逃げのびなけ
ればいけない。避難民の立場になってレポートしようと提案した。
那覇市の国際通りは標高10メートル、新都心でも20メートル程度。3.11の
時の陸前高田での水位が15.8メートル、この大波が遡上して38.9メートル
を記録した所もある。まず上記の2か所は危ない。世界遺産の識名園が80メ
ートル。そこまで逃げないと津波にさらわれてしまう。以前にこれより少し
下にある繁多川の公民館の庭で炊き出しの訓練をしたことがある。大釜を用
意し豚汁を作った。この辺は古井戸などが残っており、水の確保ができるか
もしれない。実際にはどうか、地震の時は水が汲めないかもしれない。いや
とうの昔に枯れてしまっているのではないか。不安材料はいっぱいだ。
3時間のスペシャル番組では消防なども協力してくれる。しかし何といって
も我々住民が一人一人生き残る術を心得ていないと、お上頼みでは助からな
いだろう。沖縄には江戸の町のように隣近所助け合って火消に協力するよう
な伝統がない。3.11の救援で駆け付けた那覇市特別消防隊の隊長によれば
「地域のまとまりがある所は復興が早い」。
今回キーステーションとなるFMよみたん(読谷)が位置する読谷村は、4万
人弱の人口日本一の村だ。村長以下一致して米軍と交渉し、基地の中に役場
を作ってしまった。これだけガッツのある村ならば災害にも(米軍にも!)
立ち向かうことができるだろう。
FMよみたんは不思議なことにテレビ中継車まで持ち、中には臨時中継用のス
タジオまである。この中継車を国際通りのてんぶすというビル前の広場に持
ってくる。建物の1階にあるサテライトスタジオ、震災にあった東北からも
情報が入る予定だ。
緒方は最初と最後に出るだけで、あとは「避難民」になりきっておろおろと
歩き回る役どころだ。携帯電話で時々レポートを入れる。
3時間スペシャル「琉球弧防災ネットワークラジオ311」はFMよみたんのホー
ムページから全世界で動画放送を視聴できる。
http://www.fmyomitan.co.jp/

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【5】《EACI会員からの投稿》
小島正憲
(株式会社小島衣料オーナー、アジア・アパレルものづくりネットワーク代表理事)
「アジア読書録vol.1『人間の目利き』(吉村作治・曽野綾子共著、講談社、2014)」
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  副題に「アラブから学ぶ“人生の読み手”になる方法」、帯の言葉に「強
く、賢く、疑い深く、したたかに。アラブの知恵で日本は復活する」とある。
  この本は、吉村作治氏と曽野綾子氏の対談であり、「アラブやイスラムの
ことをわかりやすく書いた本を出しましょう」という目的で出版された。エジ
プト考古学者であり、元妻がエジプト人イスラム教徒である吉村氏と、キリス
ト教徒ではあるが、アラブ・アフリカ社会に通暁している曽野氏のこの対談企
画は、「イスラム国」が注目を集めているときだけに、タイムリーではある。
それを意識してか、この本は冒頭から「イスラム国」の話題を取り上げ、

「アラブ人は“イスラム国”が嫌い」「就職先がないから、食べるため、金のた
めに兵士になるということはあり得ます。私の推測するところでは、イスラム
国のまかないが悪くなると逃げ出すと思う」(曽野)、

「最初は日給300ドルとすごくいい条件なんですよ。だから世界から志願兵
がたくさんやって来る。でも来たら麻薬でぐちゃぐちゃにしちゃって言うこと
を聞かせるようにするから、お金なんてどうでもよくなっちゃう。イスラム国
の月収が1億ドル。今は、イラクとシリアで奪い取った油田の原油やガソリン
を売って儲けてる。それから偽札造り。文化財の密売までやっている。遺跡を
ほじくり返してどんどん安売りしてるんです。とんでもない話ですよ」「僕は、
イスラム国は金の切れ目が縁の切れ目になるだろうと思っているんですけど、
爆撃されて外に出た連中が各地に散らばって、宣伝や勧誘活動を始めると怖い
ですよ」(吉村)

 などと両者に話させている。
  両氏は、「イスラム教徒が実践すべき5つの行いのうち、4番目にあげら
れているのが喜捨です」と言い、それを好意的に評価している。私はそれに
反対するわけではないが、バングラデシュのイスラム教徒は一般に、喜捨を
受けることに慣れてしまい、自助努力を行うことを放棄してしまっているこ
とが多い。危機に瀕しても、きっと誰かが助けてくれると信じており、自ら
それに備えをすることを怠る。したがって貯金するという考えは希薄であり、
「宵越しの金は持たない」というような気持ちで、その日暮らしの人が多い。
この「喜捨の教え」には、私は人間から自助努力の精神や向上心をなくしてし
まうような、否定的面もあるということを考慮しておいたほうがよいと思う。
  両氏の対談はおもしろく、アラブ社会を理解する参考にはなるが、国際社
会が当面している「イスラム国」問題を解明するには、ほど遠い。以下に、
参考になる個所を列記しておく。

 ・イスラムは戦闘的な宗教だと決めつける人が多いのですが、これは迫害さ
れた場合のみ、言い換えれば迫害されたときしか戦ってはいけない、という
ことです。自分の考えに反する人は殺してしまえ、というものでは決してあ
りません。アッラーの道を説くイスラム教徒の行く手をはばみ、その理想社
会の実現を弾圧する者、イスラム教徒を迫害する者こそがジハードの敵なん
です(吉村)。

 ・アラブでは年寄りは財産なんですね。なぜなら、たくさんの経験を持って
いるから。わからないことは年寄りに聞けば、何でも教えてくれる。だから
財産、宝なんです(吉村)。アラブの格言に『一家に老人がいないなら、ひ
とり買ってこい』というのがありました(曽野)。

 ・アラブ人には、単なる親切心だけじゃなくて、裏に仕返しされるんじゃな
いかという危惧がある。いいことをすれば喜ばれるということと、悪いこと
をすると報復されるということが、裏腹にくっついているんですよ(吉村)。

 ・運・不運といのは間違いなくあるでしょう。否定しても否定しなくても運
命は確かにあるんだから、肯定したほうがいい(吉村)。

 ・イスラムの教義をきちんと理解している人は、運命には幅があって、努力
をしない人間は下の方の運命、一生懸命努力した人は上の運命を与えられる、
と考えているんです(吉村)。

 ・自分の才能で偉くなったとか、自分の力量で金持ちになったと本気で考え
ているのは、アメリカ人と日本人ぐらいじゃないですか。よく日本のテレビ
番組に成功者が出てきて、自力で成功したみたいなことを話しているでしょう。
でもよくよく聞いてみると、どこかでとんでもない大儲けをしたり、思いがけ
なく人に出会って助けてもらったりしている。本人は自分の能力で富や名誉や
地位を築いたと思っているけれど、実は偶然の産物なんですよ(吉村)。

 ・イスラムでは、人間は生まれたときから平等じゃないと、わかっている。
ばらつきがあるからこそ、神様が平等に恩恵を与えるわけです。ただし、本
人がそれを受け止めて努力しないと目的を果たすことはできない。それもわ
かっているから、必死で努力する人たちがいるわけです。(吉村)

 ・アッラーは、酒が美味で、それに酔う気持ちがどれほどいいかわかってい
るけれど、現世では、酔って人に迷惑をかけたり、争いを起こしたり、ある
いは酒に溺れる者がいるので飲酒を禁止した、と言います(吉村)。

 ・イスラム教徒は豚肉を食べることを禁じられていますが、これも「コーラ
ン」に書かれているからです。はっきりした理由はわかりません(吉村)。

 ・我欲のままに生きている特権階級の人々は、地獄へ落とされる見本みたい
なもの。天国へ導かれる敬虔な者というのは、欲望を抑えて耐え忍ぶ人間のこ
とでした。不平等な社会に耐えて生きることを強いられている多くのアラブ人
にとって、これほど魅力のある教えはなかった。今、世界のイスラム教徒は16
億人近くいると言われていますが、イスラム人口が増加している理由の一つは、
格差による不幸を実感する人が増えたからでしょう。アッラーの神の前ではだ
れしも平等です。どんな人でも現世で善行を重ねていれば、天国での至福が約
束されるのです(吉村)。

 ・エジプトでは、民主主義は人間を堕落させるから、いい独裁者が出てくる
のを待つしかないという意見が少なくない。独裁主義の一番陥りやすい問題点
は腐敗ですが、腐敗しない独裁があれば一番いい、と言うんです(吉村)。

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【6】《連載》検証・フテンマ(琉球新報より)
 第1部 米国の深層 vol.9「海兵隊の影響力」
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 少し古いが、米海兵隊の政治力を象徴する話がある。
 1989年、海兵隊への導入を目指していた開発段階の垂直離着陸輸送機
オスプレイの初飛行があった。だがオスプレイは91年、92年に合計死者
7人、負傷者2人を数える墜落事故を立て続けに起こす。ヘリコプターと
固定翼機の機能を併せ持つ複雑な構造のオスプレイは安全性に疑問がも
たれていた。そして、開発費は高額だった。
 当時のブッシュ(父)政権の国防長官、ディック・チェイニーはそれ
らの理由から開発を中止しようとした。
 これに対し開発を維持したい海兵隊側は「都合の悪い情報は報告する
な」と試験飛行部隊に支持し、計画続行のロビー活動を大展開する。こ
れらが功を奏し、米政府・議会も一緒になった「軍産複合体」は開発の
継続を決めた。
 チェイニーは繰り返しオスプレイの計画中止を試みるが実現できなか
った。
 現在の普天間移設計画に関し、海兵隊がどれほどの影響力を持ってい
るかはうかがい知れない。ただ、沖縄から外へ出されることに対する抵
抗は根強い。
 73年、沖縄の海兵隊基地撤退を検討していた米国務省担当者はオース
トラリア政府にこう説明していた。「彼ら(海兵隊)にとって沖縄から
の撤退は、自分たちの師団を失うという懸念に直面することになる」
 96年に海兵隊普天間飛行場の返還が決まって以降、県内移設について
政府と県、地元名護市が交渉していた時、在沖海兵隊幹部はワシントン
での私的な集まりで、米政府関係者にある贈り物をした。小包の中には
普天間飛行場の小さな石と共に、ジョークとしてメッセージがあった。
「普天間飛行場は最大でもこれだけしか渡さない」
 2008年8月9日、米民主党の大統領候補に指名されたバラク・オバマは
コロラド州での党大会で演説した。「イラク戦争を責任を持って終結さ
せ、アフガニスタンでのテロとの闘いを完遂する」
 公約にイラクからの「16カ月以内の戦闘部隊撤退」を掲げ、アフガニ
スタンへの米軍増派を主張した。
 イラクからの駐留軍撤退が困難な課題となり、アフガンでの「テロと
の戦いは」泥沼化していた。沖縄本島北部のキャンプ・ハンセンではそ
のころ、在沖米海兵隊が中東の集落に模した市街地型戦闘訓練施設を建
設するなど、米軍が中東での戦争に前のめりになっている光景がうかが
えた。
 オバマは09年1月、大統領に就任。2月には約1万7千人に上るアフガン
駐留米軍第1次増派計画を承認する。11月末、米紙ワシントン・ポスト
(電子版)はアフガン新戦略で最初に現地に派遣されるのは海兵隊9千人
で、「数日後には現地へ出発し、反政府武装勢力タリバンの拠点掃討に
当たる」と報じた。

 日本に普天間飛行場の「最低でも県外」を掲げた民主党代表・鳩山由
紀夫率いる政権が誕生したのは、就任間もないオバマが公約実現へ奮闘
している時だった。
 米国のアジア政策に深く関与してきた知日派の元政府高官は「オバマ
政権はイラク戦争とアフガニスタン戦争から抜け出すことに相当集中し
ていた。アジアでの米軍のプレゼンスについて深く考える余裕はなかっ
た」と指摘する。
 アフガン増派を進めるオバマ政権が普天間問題で海兵隊との摩擦を避
けたとの見方もある。これについて別の米外交専門家は「オバマは大統
領であり、海兵隊を恐れる必要はない。実際は官僚が海兵隊との摩擦を
敬遠しただけだと思う」との見解を示した。(敬称略)
             (「日米廻り舞台」取材班)琉球新報提供

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