あの賢かったユウナの木のおばさん猫の姿はもうどこにもない!
青いベンチに集っていた猫たちはどこへ行ってしまったのだろうか?
ユウナの木から顔を出していたおばさんは、どこにもいない!
野良猫たちの一生は厳しいに違いない。猫のいない公園は寂しい。
散歩しながらデジカメに撮ったおばさんの姿は残っている。脳裏にあり続ける。
公園が遠くなった日々~。ゆうなの木のおばさんに会えなくなって久しい。それでもひょっとして姿を見せるのではないかと、一抹の希望を抱いていたりする。
馬鹿だな、もうこの世界にいないのだ、と分かってはいるが、やはりヒョイと長い尻尾を立てて藪の中から出てくるのではないかと、思ったりしている。
ユウナの木のおばさんのいない公園はつまらなくなってしまった。
なぜか、空気が生暖かい。悠然としていたおばさん、管理事務所のネットの上からするりと降りてきたおばさん、ユウナの木から見下ろしていたおばさんの姿はない!
公園を歩きながら喪失感が襲ってきた。
駐車場近くの石のベンチに腰掛けて煙草を吸っている女性に「猫少なくなっていますね」と声をかけた。ほらあそこに、と指さした先に確かに黒と白のぶちネコがいた。猫はいる。散歩しながら3匹の地域猫たちにドライフードと小魚をあげた。話していると電話がやってきたので、少し離れた石のベンチに腰掛けて応答していると、そのぶち猫がやってきたので、また片手でリュックから猫食を取り出しておいた。猫は食べ終わると電話しているわたしの膝の上にやってきた。暫くそっとしておいた。人のぬくもりがほしいんだ。
庭に捨てられたか自ら居場所を求めてきた黒猫のクロスケも、何かと膝の上に乗ってくるので、初対面の人間の膝の上にやってくるぶち猫がいじらしく思えた。
しばらく猫の好きなようにさせた。温もりがほしいのは動物も人間も同じだ。猫と人間のDNAは80%類似するという。
なぜか公園の散歩に興味を持てなくなった昨今である。島袋のおばあちゃんや比嘉さんたちが青いベンチへと歩いていた姿は、遠い昔の事で、あの光景は絵のように封印されている。
公園に来ると、もういないのだと分かりながら、ゆうなの木のおばさんを探し求めている。