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EACI News Weekly 第34号(8月28日号)
東アジア共同体研究所(East Asian Community Institute )
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【目次】
【1】《今週のニュース 8/22-8/28》
政治(3)、経済(2)、国際(2)、社会(3)
【2】《UIチャンネル放送予告 No.118》
来週のUIチャンネル放送はお休みを頂きまして、
次回放送は9月7日(月)20時から「DR.平川の沖縄・アジア麺食い紀行」
をお送り致します。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv233174561
【3】《EACIレポート》
9月5日(土)、6日(日)に法政大学市ヶ谷キャンパスにて沖縄映像祭 in Tokyo
http://www.bun-kei.jp/home/
【4】《研究員コラム》
緒方修(東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター長)
「観光と基地」
【5】《連載》検証・フテンマ(琉球新報より)
第4部 「県外」阻むもの vol.34「日本政府」
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【1】《今週のニュース 8/22-8/28》
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【政治】
■安保法案:採決日程調整大詰め 「11日まで成立」厳しく
(毎日新聞 2015.08.27)
http://mainichi.jp/select/news/20150827k0000m010102000c.html
■首相 安保法案「議論熟したときは採決を」
(NHK 2015.8.25)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150825/k10010203471000.html
■戦後70年夏 歴史に向き合う経験=伊藤和史(編集編成局)
(毎日新聞記者の目2015.8.28)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150828ddm005070030000c.html
【経済】
■日米首脳が電話会談、世界株安への連携確認 TPP早期妥結も
(ロイター 2015.8.25)
http://jp.reuters.com/article/2015/08/26/obama-abe-idJPKCN0QV08Y20150826
■東アジア経済連携、交渉の枠組み合意 自由化率目標80%に
(日経新聞 2015.8.24)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF24H0H_U5A820C1EE8000/
【国際】
■南北合意、互いに実利 危機とりあえず回避、関係改善へ
(朝日新聞 2015.8.26)
http://www.asahi.com/articles/ASH8T5HWQH8TUHBI02M.html
■アウンサンスーチー派勝利でも「選挙結果を尊重」 ミャンマー軍総司令官
(ハフィントン・ポスト 2015.8.26)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/25/min-aung-hlain-myanmar_n_8036028.html
【社会】
■安保法案反対の学生4人「無期限ハンスト」開始 「日常を犠牲にしてでも訴えたい」
(弁護士ドットコム 2015.08.27)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-247452-storytopic-3.html
■若者ら安保法案、新基地反対訴え シールズ琉球が集会
(琉球新報 2015.08.25)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-247791-storytopic-1.html
■ 坂本龍一さんが新基地反対の曲 詞は古謝美佐子さん
(琉球新報 2015.08.25)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-247792-storytopic-1.html
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【2】《UIチャンネル放送予告 No.118》
9月7日(月)20時
第118回UIチャンネル放送「Dr.平川の沖縄・アジア麺食い紀行」
http://live.nicovideo.jp/gate/lv233174561
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来週のUIチャンネル放送はお休みを頂きまして、次回放送は9月7日(月)20時から「DR.平川の沖縄・アジア麺食い紀行」を沖縄よりお送り致します。
平川 宗隆氏(ひらかわ・むねたか)プロフィール
博士(学術)・獣医師・調理師・旅食人(がちまいたびんちゅ)。
昭和20年8月23日生まれ。
昭和44年日本獣医畜産大学獣医学科卒業。
平成6年琉球大学大学院法学研究科修士課程修了。
平成20年鹿児島大学大学院連合農学研究科後期博士課程修了。
昭和44年琉球政府厚生局採用、昭和47年国際協力事業団・青年海外協力隊員としてインド国へ派遣(2年間)。
昭和49年帰国後、沖縄県農林水産部畜産課、県立農業大学校、動物愛護センター所長、中央食肉衛生検査所々長等を歴任し、平成18年3月に定年退職。
現在は公益社団法人沖縄県獣医師会会長、㈱サン食品 参与。
〈著書〉
『沖縄トイレ世替わり』ボーダーインク 2000年
『今日もあまはいくまはい』ボーダーインク 2001年
『沖縄の山羊〈ヒージャー〉文化誌』ボーダーインク 2003年
『山羊の出番だ』(編著)沖縄山羊文化振興会 2004年
『豚国・おきなわ』那覇出版社 2005年
『沖縄でなぜヤギが愛されるのか』ボーダーインク 2009年
『Dr.平川の沖縄・アジア麺喰い紀行』楽園計画 2013年
■《UIチャンネル放送予告 No.118》
9月7日(月)20時 「Dr.平川の沖縄・アジア麺食い紀行」
http://live.nicovideo.jp/gate/lv233174561
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【3】《EACIレポート》
9月5日(土)、6日(日)に法政大学市ヶ谷キャンパスにて沖縄映像祭 in Tokyo
http://www.bun-kei.jp/home/
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琉球放送、沖縄テレビ、琉球朝日放送の民放3局とNHK沖縄放送局が制作したドキュメンタリーを一堂に揃えた「沖縄映像祭~終らない戦後~」が、9月5日、6日法政大学市ヶ谷キャンパスにて開催されることになりました。
沖縄は今、普天間基地問題で大きく揺れ動いていますが、今回上映される作品は、サブタイトルにもありますように、沖縄戦に始まり米軍統治時代を経て今なお続く基地の重圧をテーマに取り上げています。
ですが各作品とも沖縄の基地問題のみならず、憲法9条や日米安保、特定秘密保護法、教科書検定など沖縄のみならず、今日本全体で考えるべき問題をテーマに掲げています。
沖縄映像祭 in TOKYO 入場料無料
<1日目・9月5日(土) >
10:00-17:20 ◆作品上映
<2日目・9月6日(日) >
9:30-17:15 ◆作品上映
詳しい上映内容についてはコチラから→http://www.bun-kei.jp/schedule2015/
15:45-17:15 ◆シンポジウム「普天間基地問題とメディア報道」
パネラー
鳩山 由紀夫(東アジア共同体研究所理事長、元内閣総理大臣)
高野 孟(ジャーナリスト)
川村 湊(法政大学国際文化学部教授)
具志堅 勝也(文化経済フォーラム理事長・元琉球朝日放送 報道制作局長)
コーディネーター
緒方 修(東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター所長)
主催 NPO法人文化経済フォーラム
共催 法政大学沖縄文化研究所
協賛 「地方の時代」映像祭実行委員会
東アジア共同体研究所琉球・沖縄センター
後援 琉球放送、沖縄テレビ、NHK沖縄放送局、琉球朝日放送
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【4】《研究員コラム》
緒方修(東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター長)
「観光と基地」
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観光と基地
一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー会長・平良朝敬氏を招いて勉強会を開いた。平良氏は財界にいながら辺野古埋め立て阻止を唱え、基地は沖縄経済の阻害要因と主張している。
2013年、年末に仲井眞前知事が埋めたてを承認した。以来、日本政府は、それだけを根拠にして辺野古新基地建設を進めている。
沖縄の民意は埋め立てに対して、約8割が反対。しかし国は県民の意向を無視し続けていることはご存じの通り。反対運動を牽引する島ぐるみ会議は財界をふくむ人々で共同代表を形成、平良氏はアクティブなメンバーだった。現在は、観光全体のまとめ役である職に就いたため、退いているが今後の沖縄を担うキーパーソンとしてますます活躍が期待される。
当日は50枚以上のパワーポイントを示しながら話が展開した。
平良氏が辺野古新基地反対を決意したのは、2013年11月25日。自民党本部で石破幹事長が沖縄県選出の自民党議員5人を従えスピーチをした時だった。辺野古承認を迫られ、やむなくうなだれて聞いている議員たち、島尻あい子氏だけが正面を向いている。自民党幹事長の力で5人の議員が屈服させられたシーンだった。これは21世紀の琉球処分として県民の心に記憶された。続いて一か月後、仲井眞県知事が「辺野古埋め立て」承認の意向に切り替わった。車いすに乗った知事は「これは良い正月になるなぁというのが私の実感です」と述べた。
県民の気持ちを逆なでしたことは言うまでもない。その前の県知事選挙では翁長氏が当選し、あらゆる手法で新基地建設を阻止する、と明言していた。
平良氏は翁長陣営の側に立ち勝利へ導いた立役者の一人である。
沖縄戦の犠牲
新基地反対を決意した時、母親から反対された。「商売人が政治に関わってはいけない」
1962年、夫と一緒に観光ホテル沖之島を開業、客室数14室の小さなホテルだった。半世紀たった現在でこそかりゆしグループとして隆盛を誇るが、草創期は困難続きだったに違いない。占領期そして日本復帰に伴う政争と混乱は、今では想像しがたい。政治に口を出す・・などとんでもない、という気持ちだったろう。
しかし母親は、平良氏の決意が堅いと知ると、昔のアルバムを持ち出して沖縄戦直後の話から始めた。これまでまったくふれなかった話題だ。
「月日は流れて40年 想い出のアルバム」と余白に記された写真集。石川収容所 の写真から始まる。石川市の収容所で衣服をかわかしている人びと 1945年7月 戦後私は16才 此処に住んで居りました 石川市から軍作業へ 泡瀬の海兵隊 昼は軍作業 6時後は野菜売り 父は戦争で死亡 母は病気 弟妹達の世話
続いて米軍撮影の写真にところどころ書き込みがある。壕内に隠れていた所、アメリカに発見され、収容所へ連れて行く所、と記された写真。戦車の前を一人の米兵が2歳くらいの幼児を右手にかかえ、両脇に8歳くらいの女の子二人を伴っている。彼女たちはキャタピラーで掘りくりかえされた地面を裸足で歩いている。
続いて、戦後40年6月 石川にてアメリカ兵と仲よく遊んで、と書き込みがある写真。おそらくはこのアルバムがまとめられたのが戦後40年の6月だったのだろう。撮影時期は40年前、撮影者は米軍のカメラマン。それ以外の者が写真機を持っている可能性はない。
天秤棒に竹の籠を前後に下げた笑顔の米兵、5人の男の子達が笑って見上げている。収容所で子どもにやさしくふるまう米兵のイメージ・・どうもヤラセ写真のようだ。
さらにもう一枚。右肩に小銃を下げた米兵の後ろ姿、正面には三人の女性が恐怖の面持で米兵を見つめている。年配の女性と若い女性(おそらく娘)二人、一人は背中に子供を背負っている。がたがたふるえて言葉も話せない婦人たち、と書き込みがある。
沖縄戦は3か月続いた。母親は飢えと恐怖の中で過ごし、ようやく生き延びた。おびただしい遺体や墜落した戦闘機の残骸、空襲、艦砲射撃、火炎放射器による掃討作戦を見てきた。16才ならばはっきりと覚えている。
母親は、これまで戦争の記憶を封印し、大和世からアメリカ世、さらに大和世を見つめてきた。寄らば大樹の陰、強いものに逆らうなどもっての他、という信念だっただろう。息子が時の県政や政府に楯突くことなど考えてもいなかったに違いない。
観光の問題を語るのに、他府県(という言葉を沖縄ではよく使う)の経営者が、こうした個人史から始めることはないだろう。彼らにとって戦争は遠い昔、70年も前のことだ。
しかし沖縄では戦争は終わっていない、どころか新しく基地が造られようとしている。
平良氏のプレゼンテーションはさらにさかのぼり、600年以上前の1372年 明国からの最初の冊封使来琉(1866年まで23回)から始まった。
太平洋戦争の前までに三つの大きな出来事が記される。
1609年 薩摩が琉球侵攻
1871年 廃藩置県
1879年 琉球処分
あとは米軍の統治、1972年にようやく本土復帰。
人口でいえば戦前1940年に57万4579人、45年に32万6625人。わずか5年で24万7854人の減だ。沖縄戦の犠牲者が12万2千人。(4人に一人の犠牲者)あとの12万人は疎開、移民、自然死などと推定されている。
通貨は琉球通貨→日本円(1879年)→B円(軍票)(1945年~1958年)→米ドル(1958年~1972年)→日本円 と変わってゆく
この4半世紀を見ると県知事は大田昌秀氏(革新)から稲嶺恵一、仲井眞弘多と保守が続き、2014年にオール沖縄を唱えた翁長雄志が10万票の大差で当選した。
観光客の推移を見ると、大田時代(二期)で117万増の317万人、稲嶺時代(二期)に151万人増の550万人、仲井眞時代(二期)に78万人増の641万人。
言われるほど仲井眞時代に観光客が増えた訳ではない。
沖縄の総意無視
2013年1月28日、「建白書」を安倍総理に提出。オスプレイ配備撤回と普天間基地の閉鎖及び県内移設断念を求めて、沖縄県内の41市町村すべての首長、議会議長、県議会議長らが建白書に署名し、沖縄の総意として、安倍晋三内閣総理大臣に直接要請した。
この日、国会周辺でデモ行進を行ったが、売国奴、沖縄へ帰れ、などのヘイトスピーチにさらされた。沖縄から同行した学生が「震える思いだった」ことは以前に書いた。建白書は無視され続け、続いての経緯は冒頭に記した通り・・・
11月25日には石破幹事長が、うなだれる沖縄県選出の自民党議員を従えての会見。
12月25日には仲井眞知事の「良い正月が迎えられる」との逆なで発言。
そして二日後、ついに辺野古埋め立て承認に至る。
「沖縄基地問題の真実」として平良氏が強調するのは以下の5点
■海兵隊は沖縄でなくても機能する
■九州、山口県、西日本各地区でも抑止力は変わらない
■メディアも中身を分析せず、論じない
■政治の責任放棄~沖縄が現実的だ
■軍事的な理由でなく、国内政治の問題
つまり日本国内ではどこも引き受けないので、沖縄に押し付けている。歴史的にさかのぼれば琉球処分(1879年)、敗戦(1945年)、米軍政下、本土復帰後も変わることはない。安倍首相がいくら「ていねいに説明」しようが県民は納得しない。沖縄は植民地ではない、「衛星国家」でもない。にもかかわらず日本政府が沖縄を差別し、無視し続けている。
そもそも外国の軍隊が70年も進駐し、そこに「思いやり」まで示して巨額の金を拠出し続ける国が文明国や先進国の名に値するのだろうか。米国の隷属国ではないか。沖縄は12万人の命を失い、引き続いて国内では最大の犠牲を強いられている。
日本政府は「辺野古新基地へ向けての協議」を1996年の「日米全面返還合意」から始めようとしているが、沖縄側は1879年の琉球処分から始める。なぜなら一貫して捨石として扱われた原点だからだ。安倍首相が沖縄の歴史と向き合わない限り解決の途はない。菅官房長官や中谷防衛大臣が何度沖縄へ足を運ぼうが、「人間性に反した、浅ましい発言を繰り返している醜い日本人」としか受け止められない。
環境の変化
昭和47年の県民総所得は5000億円を少し超える程度。軍関係の受け取りは15.5%。しかし現在では5パーセント以下に下がった。基地で成り立っている沖縄経済、というフレーズは過去のものだ。
返還された基地(那覇新都心、小禄金城地区、北谷桑江・北前地区)の直接経済効果はいずれも16倍から108倍、誘発雇用人数は19倍から135倍、最近、北中城村泡瀬ゴルフ場跡地に造られたイオンモール・ライカムでは雇用者38人から3000人と79倍に激増した。
閑散としていたゴルフ場(推定1万8千人≒一日50人)が集客人数(目標1200万人≒
一日3万3千人)の巨大モールに生まれ変わった。
―泡瀬ゴルフ場ではかつて雑草除去のためまかれた除草剤が従業員の体をむしばみ、奇形を生み出している。ベトナムの森に撒いたのと同じ毒薬だ。テレビのドキュメンタリストが米国まで被害者を追いかけて取材していた。―
沖縄の観光は昭和47年度には入域観光客数56万人、平成26年度は716万人。(約12倍)
観光収入は324億円から4479億円(約14倍)へと躍進した。
人口予測は、日本が既に2008年にピークを迎え1億2808万人から漸減しつつあるのに対し、沖縄は2025年にピークを迎える。予測では2050年において日本では若年人口が939万人で9.7%、沖縄では依然として20万8千人(15.0%)と比較的高い。
沖縄は国内では唯一、定住人口が増加している地域であり、国内の他地域とは対極の戦略を持たなければいけない。交流人口の増大による地域活性化ではなく、増加する定住人口の力で交流人口を呼び込む国内唯一の地域となる可能性が大きい。
観光トレンドの変化は、平良氏の造語によれば観光(視覚)―物見遊山―から感幸(五感)―体感・体験―、さらに勧交(交流)―地域や住民との交流、へと変わってくる。
大きな変化は2020年の那覇空港第2滑走路供用開始である。
貨物便は全国から沖縄に集め、香港、シンガポールなどアジア各国に運ぶ宅急便が既に動いている。沖縄から福岡へ行くより、台湾の方が近い。1000キロ圏内に台湾、上海、釜山、2000キロ圏内にはソウル、フィリピン、香港、北京、3000キロ圏内にはベトナム、カンボジア、ラオス、中国大陸の半分くらいまでカバーする。
地理的優位性は明らか。しかし沖縄上空は米軍機が優先して飛び回っている。
沖縄は、アジアの架け橋やノード(結び目)と呼ばれる。ここに基地があっては百害あって一利なし。抑止力理論とやらで軍事基地を置き続けたり、新基地を造ったりすれば百年、千年の計を過つことは明らか。
観光は平和産業であり、基地は沖縄経済の阻害要因となっている。
以上が平良朝敬氏のスピーチの要旨だ。
翁長知事から就任直後に聞いたことが印象に残っている。
「基地問題が(仕事の)9割です。」
同様に沖縄の経済人は、負の歴史に巻き込まれ、そこからの脱却方法をまず考えなければならない。基地問題を押し付ける日本、基地を置き続けるアメリカ。沖縄にいると、何をするにも日米両政府を相手に日々闘わなければいけない。
艱難汝を玉にす、という諺を思い出した。
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【5】《連載》検証・フテンマ(琉球新報より)
第4部 「県外」阻むもの vol.34「日本政府」
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米ワシントンで21日にあった日米安全保障セミナー。日本の外務、防衛両省も参加する中、元米国務副長官リチャード・アーミテージ、元米国防次官補ジョセフ・ナイら知日派の代表格が登壇した。
セミナー後、日本や韓国の報道陣に囲まれたナイは、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた県知事仲井真弘多の埋め立て承認と名護市長選の結果などに関して語った。
「もし県民が計画を受け入れ、移設がうまくいくののならいい。だが普天間問題で同盟を壊していいかといえば答えはノーだ」
ナイは「普天間問題は同盟の副次的な問題だ」と表現した。一次的問題とは北朝鮮や中国への対応であり、米軍の日本駐留による安全保障を提供することで「大きな未来図」を描くことだと説明した。
米政府は仲井真の埋め立て承認で移設計画は「前進した」との公式見解を示しているが、かつて普天間問題を担当したナイは実現性に依存慎重な見方を示した。
アーミテージは4年前の同じセミナーで、足踏みする普天間問題に関してこう述べていた。「日本がどんな決断を下しても同盟関係は続く。米国はプランB(代替案)を持つべきだ」
この日は歴史認識問題に端を発した日本と韓国などととの関係悪化と日米関係への影響を取り上げて「同盟は問題を抱えている」と苦言を呈し、「日本の外交や政治家が米政府高官の言動を必死になって読み解いている。かつてない事態だ。」と報告した。
民主党政権時代、普天間の県外移設を検討することは「日米同盟の危機につながる」と日本側で盛んに喧伝されたが、両国の信頼関係に深刻な影響を与えようとするのは全くの別次元の問題であることを米の知日派重鎮らはよく理解しているようだ。
1月、名護市であったシンポジウムに日米関係が専門の米ジョージワシントン大教授マイク・モチヅキは、「沖縄の海兵隊は遠征隊としての役割が大きくなる。米国、ハワイ、沖縄から豪州に至る巡回配備案があり、その場合は沖縄に大規模な態勢を敷く必要はない」とのメッセージを寄せた。将来的に米海兵隊の大半はグアム、ハワイ、米本土に配備されるため、「沖縄に本格的な恒久基地を置く必要はない」と指摘した。
「移設の選択の余地は幾らでもある」。こう述べるのは防衛省出身で元内閣官房副長官補の柳沢協二だ。在沖海兵隊の抑止力としての役割は「軍事的に説得力がない」と主張した上で、辺野古移設に関して「抵抗が少ない所に問題を押し付けるサイクルをやめない限り、沖縄は基地の中で暮らしていく状態から抜け出せない」と本質を突く。
沖縄の復帰後の1972年10月、米国防総省が在沖海兵隊基地の米本国への統合を検討していたことが、昨年、オーストラリア外務省の公文書で明らかになった。だが、日本政府はこうした米国の海兵隊撤退の動きを引き留めていた。
文書を入手した沖縄国際大講師の野添文彬は当時と今を比べて話す。「米国は必ずしも沖縄にこだわっておらず、複数の選択肢を持っている。だが日本政府は現状維持を求め、何としても米軍を日本、特に沖縄に引き止めようとする。その構図が繰り返されている」
「フテンマ問題」の解をめぐる多様な選択肢を否定しない米国内の議論と、沖縄県内での移設に拘泥する日本政府。一方で移設に根強く反対する沖縄の世論は変わらないまま、秋の県知事選に向けて問題は新たな舞台へと移りつつある。(敬称略)
(「日米廻り舞台」取材班)琉球新報提供
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