故あってダニー・ユンさんの代表作品を沖縄と香港で拝見する機会がありました。東西文化をつなぐ作品スケールの大きさは、常に伝統芸能を中軸にすえています。根にある文化が、何度でも新しいメディア媒体を駆使しながら甦っていくのです。人あたりのよさは香港気質でしょうか?西欧をしっかり懐に入れながら自らを再現、再創造していくどこかユーモアのあるしたたかさのようなものを感じさせる作品です。一方で抽象的でシュールでかつ具体的すぎる作品でもあります。沖縄からダニー・ユンのようなスケールが大きくかつ繊細な演劇人(芸術家)が飛び立ってほしいと念じるばかりです。
私が見た氏の作品は
①『一つのテーブル、二つの椅子』(1997年-)と題された現在も継続中のシリーズは、多数の伝統芸能家と現代舞台芸術家の参加を得て、香港のみならず、東京、シンガポール、台北、上海、ベルリン、ニューヨークなど世界各地で上演された。←沖縄でも上演された!
②20世紀を代表する京劇役者 程(チェン・)硯(イエン)秋(チウ)を取材して制作した演劇『荒山泪』で、ユネスコ国際演劇協会のミュージック・シアター・ナウ賞を受賞(2008年)。←これはダニー・ユンさんの本拠地の香港でみました。この作品の感銘が深いですね。まさに東西の融合というか一人の京劇役者を通してみた東西の文化の葛藤と融合、に見えました。
2014年(第25回)芸術・文化賞受賞/ダニー・ユン氏
- 2014年(第25回)芸術・文化賞
ダニー・ユン - Danny YUNG
- 文化クリエイター(香港芸術家集団「進念・二十面體」 芸術監督、香港現代文化センター主席)
- 【香港/演劇】
- 1943年10月19日生(70歳)
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ダニー・ユン氏は、演出家、劇作家、舞台美術家として多数の斬新な舞台作品を発表する一方、国際交流、文化政策、芸術教育の分野にも熱心に取り組み、アジアと世界、伝統と現代といった、領域や世代を越えた人と人とを繋ぐ多彩な活動で、アジアの芸術・文化の発展に大きく貢献している。
- ※肩書き・年齢・経歴・贈賞理由などは受賞当時のものです
ダニー・ユン氏(本名:榮念曾(ロン・ニイェンツォン))は、演出家、劇作家、舞台美術家としてこれまで100以上の斬新な舞台作品を発表する一方、国際交流、文化政策、芸術教育の分野にも熱心に取り組み、アジアと世界、伝統と現代といった、領域や世代を越えた人と人とを繋ぐ多彩な活動で、アジアの芸術・文化の発展に大きく貢献している。
ダニー・ユン氏は1943年上海に生まれ、5歳の時に香港に移住、米国カリフォルニア大学バークレー校で建築学を学び、コロンビア大学大学院で修士号(都市設計)を取得した。1970年代後半に香港に戻り、82年に芸術家集団「進念・二十面體」の結成に参加、85年以降、同集団の芸術監督を務めている。映像等のマルチメディアを駆使しながらも、中国の伝統芸能を常に意識した氏の舞台作品では、伝統を現代に活かす道筋が探られている。『伝統を実験する』(1991年-)、『一つのテーブル、二つの椅子』(1997年-)と題された現在も継続中のシリーズは、多数の伝統芸能家と現代舞台芸術家の参加を得て、香港のみならず、東京、シンガポール、台北、上海、ベルリン、ニューヨークなど世界各地で上演された。20世紀を代表する京劇役者 程(チェン・)硯(イエン)秋(チウ)を取材して制作した演劇『荒山泪』で、ユネスコ国際演劇協会のミュージック・シアター・ナウ賞を受賞(2008年)。上海万博日本館で上演された短編舞台『トキ再生の物語』(2010年)では、中国伝統の昆劇役者集団による生の演技とデジタル映像によって、人間と自然の調和が美しく表現されている。公演は会期中6000回を超え、約400万人がその舞台に接した。
美術家としては、ビデオ、インスタレーション作品に加え、「天天向上」(中国語で「毎日進歩する」という意味)という名のキャラクターを題材にしたコミックやフィギュア、彫刻で知られる。ユン氏は同キャラクターを使ったワークショップを香港だけでなく欧米やアジア各地で実施し、自由な発想力の涵養が、新しい世界を創り出す原動力になることを人々に伝え続けている。
他方、香港芸術発展局の創設(1995年)に参画して以降、国際交流、文化政策、芸術教育の分野にも取り組み、自身がその創立に尽力した香港兆基創意書院(芸術高校)の理事を務めるかたわら、国際フェスティバル、共同プロジェクト、国際会議への参加や国際ネットワークの構築により、芸術家に限定しない人と人とを繋ぐ活動を世界各地で展開している。
このような活動の中、2009年にはドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を授与された。その他、香港現代文化センターの主席等としても引き続き、香港を中心とした東アジアの芸術文化界に大きな影響を与えている。 このように舞台芸術と美術にとどまらない多彩な分野で大きな貢献を果たしたダニー・ユン氏は、まさに「福岡アジア文化賞-芸術・文化賞」にふさわしい。
以下は去年のプログラムです。ただどんな催しがあったかの記録として興味深いですキジムナーフェスタにもよく参加していた佐藤 信さんが関わっていますね。沖縄で開催されたアジアパフォーマンスフォーラムのとき。ダニー・ユンさんも佐藤さんもご一緒でした。
アジアを包括した沖縄演劇の飛躍は、幸喜さんたちがやってきた文化創造運動の継承ですね。若い嘉数さんたちがどう世界を取り込んでいくかでしょう。ダニーさんは香港というイギリスの元植民地的グローバル環境からアメリカのコロンビア大学(ニューヨーク)で学業をつ受けています。
それだけでスケールが違うのですが、沖縄の場合、ちょっとまだ狭いですね。世界のうちなーんちゅのネット網だけではない、アジアや他地域への直球の交流が求められていますね。何度もこのブログで主張しているのですが、『人類館』などアジア各地で上演できるプロデュースができない沖縄の文化行政は退化しています。本質的に地域共同体の近代から現代へのテーマを無視する沖縄県政の文化行政は斬新さもグローバルな感性ももてないのだと判断できますね。単に観光的センスの伝統芸能と現代の演出手法による見せ方、観光戦略は軽いですよね。娯楽ならそれでいいのかもしれないのだけれど、文化のコアとしての音楽と身体表現、ビジュアルなイメージ、見事です。しかし物足りないですね。そこから何を世界の人々の心に訴えるのですか?カラフルな紅型衣裳、踊り、古典、民謡、そして、そこを突き抜けていくものは何だろか?
ダニー・ユン氏による市民フォーラムのご案内
- タイトル
- あらゆる境界を越えて、人と人を繋ぐ~ダニー・ユンの試み~
- 開催日時
- 2014年9月21日(日)/13:00~15:00(開場12:00)
- コーディネーター
- 内野 儀(東京大学大学院総合文化研究科教授)
- パネリスト
- 佐藤 信(座・高円寺 芸術監督)
- 会場
- アクロス福岡地下2Fイベントホール
芸術・文化賞受賞者、ダニー・ユン氏をお迎えし、アクロス福岡にて市民フォーラムを行いました。能と昆劇のコラボレーションも必見です。