『琉球天女考』を物した著者の最新著作です。脈々と流れているのは「乙姫劇団」であり、辻のジュリの世界です!それは貫かれています。丁寧な表現の中に、新たな発見が散りばめられています。沖縄の芸能に、遊郭やジュリに、慰安婦問題やジュリの散華に関心或る方々は是非です!慰安婦問題と遊郭の秘められた部分が一部解明されています。
お母様の初枝さん75歳と50歳にして向き合う中で母の人生、母とゆかりのある方々の人生を紐解いていきます。不思議な文体の魅力もあり、ひきつけられていきました。あくまで母を通して乙姫劇団や辻の物語りが編みこまれていきます。定規に当てはめたような辻やジュリへの視点に対して、柔らかく、その世界が拓かれていきます。
牛島中将と一緒に散華したジュリたちの物語りはこの間、色々なところで触れられているのですが、きさ子さんの伊波苗子さんの告白を下に綴られたこの文章は信憑性が高いといえるのでしょう。闇の中で曖昧だった事柄が柔らかく切開されていきます。学術論文ではないので、エッセイとして暗喩や隠喩も籠めながら、語られていく物語は、多くの方々にとって読みやすく、感銘を受けることでしょう。
きさ子さんとお会いするたびに話の中に登場してきた女性たちの人生物語りがこのように言葉に結晶化されたことに驚くと共に、彼女の柔らかな魂の凄さを感じさせます。素直に母を読み解いていく過程は彼女自身を手繰り寄せる旅であったのですね。誕生から死へと人の生涯は決められているのですが、著書の中に書き止められた方々の人生、そのありようは、沖縄の近現代史のメタファーであり、記録でもあるのですね。今帰仁とのゆかりの深さがこの本からじわりと浮かび上がってきますね。北山の今帰仁ですね。
きさ子さん、おめでとうございます!とてもいい歴史の真実をやんわりと形にしたのですね。上間初枝さんは幸せです。真喜志康忠さんも素敵な娘を世に出したのです。