彼は同級生のほとんどが接種したものとは無縁だった。
あなたはお父さん、お母さんに守られたのね。
りっぱなご両親。
しかし、学校に行くのが嫌になった。マスクも苦しかった。
全体主義的な社会の傾倒に、敏感な少年は疑問を持った。
学校に行かなかった少年は、スマホで好きなアニメをたくさん観た。
アニメは近未来的物語や予兆的な暗示生に富んでいる。
10歳、12歳の少年でも暗示性ゆたかなアニメの物語は吸い込まれていく。
画一的な学校システム、そして教師たちの、熱心な、必死な、中には狂気じみた態様のおかしさに、10歳は気づいたりもする。
登校を嫌がる少年や少女がいて、親がいる。
普通に、普通でいい。好きにさせたらいい。どうもこの社会は、どこかネジが外れている。命と精神の伸びやかさが大事と思う親もいれば、
普通に出来ない子供に負い目を感じて萎縮する親もいる。
不思議な風が吹いて社会が病気になったように萎えた時、少年の親はその根っこを調べた。恐ろしい事実が秘匿された無風の嵐が猛威を振るっているのらしい。
時流の波は強固だ。波に乗るか避けるか二者択一の前に、退く決断をした。嵐を避けて時をしのぐ。
少年は集団の中からそれた。
寂しくはない。仮想空間は無限に泳げる。リアルな現実の時間との交差に葛藤は起こるが、それにも隙間風が吹いてきた。
今登校しない児童の数は何十万と膨れている。
聞こえない狂想曲は今だに鳴り響き、嘘偽りの電波も流れている。
何が事実か真実か、カラスさえ訝しげにカーカー鳴いている。
彼Xと話したとある日、最近散歩を始めたと言う。
彼は自ら真実探しのアンテナを立てたのらしい。
多くの不登校児童に晴れ間がやって来るのは確かなのらしいけれど〜。