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破獄 吉村昭

2023-06-01 06:08:48 | 読んだ本の紹介

破獄 吉村昭



昭和の脱獄王と言われた白鳥 由栄、戦時中の食糧難の時代に収容先の刑務所で次々
と脱獄事件を起こした男

白鳥をモデルにした、半ノンフィクション。

戦前から戦後にかけての動乱期の刑務所事情を克明に描いています。



主人公、青森出身の佐久間は素行が悪く、青森刑務所に入れられます



1936年 青森刑務所を手桶の箍で手製の合鍵を作り、開錠して脱獄。

これを皮切りに脱走を繰り返します。



1942年 秋田刑務所 を収監された鎮静房の天窓の釘が腐りかけていることに気づき、

布団を丸めて立て、そこによじ登って脱獄。



1944年 網走刑務所を 味噌汁の塩分で手錠と視察孔の釘を錆びさせた後に外し、

関節を脱臼させ、監獄の天窓を頭突きで破り、煙突を引き抜いて脱獄。



1947年 札幌刑務所を 床下からトンネルを掘り、脱獄。

視線を上に向けて誤魔化しながら隠し持った金属片でノコギリを作り、床板を切断。

食器で穴を掘って逃走。



1948年 府中刑務所に収監、模範囚として過ごし、1961年に仮釈放。



青森刑務所の脱走以降、刑務所長、看守長は佐久間の脱走を阻むべく

ありとあらゆる対策を講じます

手錠のカギを外すなどたやすい佐久間に対し、鍵穴の無いボルト締めした手錠を使っ
たり

20kgもの重さの手錠を使ったり

3mもの高さの天窓しかない独房に入れたり、

日々の検査を念入りに行ったりしたが、佐久間はことごとく脱獄に及びます。



常人では考えられない怪力をもち、体の関節を自由に外すことができた。

やもりのように壁を上り、逃走経路を一瞬で記憶する頭脳も持ち合わせている

看守に対しては、「脱獄してお前の家族を殺してやる」と脅し

意のままに操ったりしていました。



時は、2次大戦にかけての話。

大戦中の食糧難の話は恐ろしいですね。

食べるものがなくなる。しかし囚人たちには規定通りの配給を行わないと

暴動を起こす恐れがある。看守よりも良い食事が提供されていました。

また看守たちも体格の良い体力のある看守は

戦争に召集され、残った看守たちは囚人たちより見劣りのする

人間しか残っていない。

そんな過酷な状況下、佐久間は最果ての網走刑務所に送られるのですが

冬の寒さに耐えきれないと、脱獄に及びます。



脱獄してはつかまり、また脱獄する。

終戦後は、GHQの指示により

より設備の整った府中刑務所に送られることとなる。

そして最後は、府中刑務所で温情をもって接してきた、刑務所長鈴江の心に

打たれたのか、模範囚となり刑期を全うした。



事実をもとにした小説であり、当時の社会状況がありありと書かれていて

一気に読まされてしまいます



これを読んで思い出したのが、漫画ゴールデンカムイの白石由竹。

脱獄王としての特技を生かして、主人公杉元を助ける超バイプレーヤーとして

ユーモラスに描かれてます。

小説「破獄」とはまったく趣が違うキャラですが

現在に存在してたら、SASUKEの完全制覇も楽勝ですね








コメント (2)
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