突然、声がする、
「もうちょっとだったね」
「なにがだい」
「『コーヒーの王道』さ」
うす暗がりの中に、なにかが立っている、
「ふふふ、コーヒーの精霊とでも言っておこうかな」
どうやらオトコみたいだ、どうせならオンナのほーがいい、
「ふん、このスケベが」
なんで現れたんだろう、すると、
「われわれは、人間のためにあるんじゃあない」
「・・・」
「それをなんだ、あまりにも失礼じゃあないか」
一理ある、今の世界、なんでもかんでも人間中心だ、
「動物とはなんだ、ほとんどの動物は、機械的反射と物資運動の集積ではあるまいか」
「動物とは、植物のエピソードにしかすぎないという立場があってもいいはずだろう」
「この世界いやこの宇宙の主人は植物、動物はそのおこぼれにすがって生きてきたにすぎない」
これには驚いた、まったく違った発想だ、たしか、ニューギニアのジャングルの奥に、大きな樹があり、人生のすべてを終えた老人は、よろよろと歩き始める、何日も何日も、そして、やっと辿りつくと、その根元に横たわり、二度と立ち上がることはない、母なる大樹に抱かれ、大自然いや大宇宙のもとに帰っていくという、ちょっとした大人のメルヘンだな。