日本の国文学者は、
芥子焼く ― 「芥子」はカラシで、これを炉に投げ入れて真言加持の時の降伏の用に供する ―
大して問題ではない、これではつまらない、「芥子」が「カラシ」ならば、しごく健全な行為ということになる。
源氏物語では、
「ただ芥子の香にしみかえりたる」 ― 葵の上 ―
ここでは、護摩に焚かれたものは、確かに芥子・カラシ。
だが、もともと「芥子」は「からし」であったのか、当初は、違っていたのではあるまいか。
その可能性がないことはない、真言密教の禍々しい雰囲気には、その頃の残像が含まれているように思えてならないのだ、どうであろう。