≪コバケン≫こと小林研一郎さんは、その情熱的なタクトで、世界的にも有名な指揮者です。
でも私はこれまで、彼のコンサートに行ったことがなく、テレビで見る機会もほとんどありませんでした。
ずいぶん前の事ですが、シンフォニーホールで彼のコンサートが開かれることを知って、一度は彼の≪炎の指揮≫を見ておきたいと思い、チケット
をとっていたのでした。
もう一つ、このコンサートに惹かれたのは、今回のコンサートが、彼の娘さんでピアニストの小林亜矢乃さんとの競演でもあることでした。
小林亜矢乃さんのピアノを聴くのも、今回が初めてです。
コンサートは、一昨日の18日。
≪炎のコバケン≫の指揮って、どんなんだろう?、娘さんの亜矢乃さんのピアノは?
私は、期待をもって、コンサート会場に向かいました。
そして結論的にいうと、今回のコンサートは、私の期待を十分に満足させる、いや!期待を大きく上回る、素晴らしいものでした!
最初に演奏された、シベリウスの≪フィンランディア≫‥この曲は、私の大好きな曲の一つです。
ロシアの圧政に苦しめられていた、当時のフィンランドの人々の、苦しみと抵抗と闘い‥そして勝利への確信を、謳いあげた曲!
今も、≪第二の国歌≫として、フィンランド国民に愛され続けています。
そして、フィンランド国民ならずとも、(私を含め)多くの人々が、今もこの曲から、大きな勇気をもらっているのです。
東日本大震災の後の「題名のない音楽会」でも、被災地に贈る曲として演奏され、人々の心を強く揺さぶりました。
さて今回のコバケンのタクトによる≪フィンランディア≫は、もちろん、とても感情のこもった素晴らしいものでした。
(大袈裟なようですが、事実)私は演奏中、何度も涙があふれそうになりました。
2曲めの、グリーグの≪ピアノ協奏曲≫‥ここで、娘さんの亜矢乃さんの登場です。
亜矢乃さんは、(こんな事を言うと怒られそうですが)お父さんと違って色白で、とても美しい方でした。
そして彼女のピアノ演奏も‥指づかいが(手全体の動きも)とても柔らかで、音楽の中に全身をゆだねた、情感あふれるものでした。
父コバケンの指揮する大阪フィルの音とも息がピッタリで、さすが父娘という感じでした。
3曲めの、チャイコフスキーの≪交響曲第5番≫
この曲を事前に私はあまり知りませんでしたが、演奏を聴いて、改めてチャイコフスキーの豊かな音楽性を感じることができました。
そして、チャイコフスキーの音楽性の豊かさを存分に表現しえた、コバケンと大フィルの演奏に、聴衆からは惜しみない拍手が送られました。
本当に素晴らしいコンサートでした!
そして、その素晴らしさをもたらした大きな要因は、やはりコバケンの指揮にあると、私は思います。
でもその指揮というのは、決して、動きの激しい、ハデなパフォーマンスを意味しているのではありません。
≪炎のコバケン≫という言われ方からして、私は、もっとハデな動きの指揮を想像していましたが、実際の指揮は、意外にもそうではありませんでし
た。
≪炎≫は、彼の指揮の仕方(外見)を表すものではなく、彼の音楽に対する“強い情熱”を表す言葉であることを、私は遅まきながら知りました。
その情熱は、それぞれの曲に対する深い理解となり、更にそれを演奏者と共に創り出そうとする熱意と努力となって、素晴らしい音楽ができあがるの
だと思います。
私は今、彼の指揮する次のコンサートに、必ず行きたいと思っています。