更に益田川沿いに下って行くと、コスモスが川の土手に階段状に(計画的に)植えられている所にぶつかった。
大好きなコスモスを見られる喜びと共に、地元の人たちの益田川を愛する気持ちが伝わってくるようで、嬉しかった。
コスモスの群落を過ぎてしばらく行くと、今度はなんと、曼珠沙華のまっ赤な帯が、川の土手を染め上げていた。
私は、延々と続く曼珠沙華の絨毯の前で、何度も立ち止まってはシャッターを押した。
曼珠沙華の絨毯は、途切れることなくどこまでも続いている。私はそれにつられるように、どんどん歩いていった。
が、私はふと我にかえって周囲を見渡した。
ちょっと遠くまで来すぎてしまったのでは?
ホテルに帰るためには、もっと早くに土手を下りなければいけなかったのではないかしら!?
しかし、近くには土手を下りる道が無い。
かと言って、来た道を引き返すのも何かシャクだ。
私がどうしようか迷っていると、そこに運よく散歩中のご夫妻がやって来られた。
次に土手を下りる道がどこかを尋ねると、ご夫妻は遠くの橋を指して、あそこまで行ったら下りる道があると教えて下さった。
私は、疲れがドッと出てきた。 まだあんな遠くまで、歩かなければいけないのか!
でも致し方なし!
急に疲れが出てきた足を引きずりながら、何とか橋の所まで行きついた。
ところが!である。
土手を下り、街中まで戻ってきたのはイイけれど、今度はホテルに帰る道が分からない。
また誰かに聞こうと思っても、車はビュンビュン走るものの、人影が皆目見当たらないのだ。
しばらくウロウロした後、ちょっと離れた所にやっと若い男性の姿を見つけて、私は大声で道を尋ねた。
するとその男性は、親切にも私の近くまで寄ってきて、道を丁寧に教えてくださった。
そして、お礼を言ってそこを立ち去ろうとした私の背後に向かって、「どうか、お気をつけて!」と大きな声で叫ばれた。
たぶんその男性からすれば、その時の私は、ずい分頼りなく見えたのだろう。
男性の親切に感謝する気持ちと、自分の不甲斐なさを情けなく思う気持ちとがないまぜになりながら、私はホテルへの道を
急いだ。
そして漸くホテルの部屋に帰り着いた私は、自嘲的につぶやいたのでありました。
「あ~あ、自分の田舎でも迷子になるなんて!」