2月19日のNHKBSテレビで、下の番組をやっていた。
私は「古民家村」という言葉に惹かれて、この番組を見た。
上の写真の「カールさん」とは、ドイツ人建築デザイナーの<カール・ベンクスさん>のこと。
「ティーナさん」とは、カールさんの妻・<クリスティーナ・ベンクスさん>のことだ。
そして、カールさんたちが再生した、“奇跡の古民家村”とは、新潟県十日町市にある「竹所(タケトコロ)」という集落だ。
カールさんが初めて来日されたのは、趣味の空手の練習のためだったという。
その後、日本の木造家屋に魅せられたカールさんは、内装デザイナーの仕事をしながら、ドイツと日本を行き来して、日
本家屋の移築を手掛けられていたそうだ。
日本家屋に魅せられて、日本各地を巡られていた頃のカールさん。
そのカールさんが、リタイア後の生活をどこでどう送ろうかと考えておられたとき、たまたま仕事で訪れた「竹所」で、“運命
の出会い”があったのだった。
それは、もう長い間人が住まなくなって、半分朽ちかけた家。
外も中も汚かったが、中に入ってみると、木組みはしっかりしている。
カールさんはひらめいた! 家は解体して、しかしその木組みはそのまま使って、自分たちの“終の棲家”を造ろうと。
そうしてできたのが、再生古民家第一号の「双鶴庵」。
(つがいの鶴は死ぬまで同じ相手と連れ添うという話から、そう名付けられたそうだ。)
~カールさんが石を運び水の流れを引いて造られた庭~
~双鶴庵の周りは、お花の好きなティーナさんが植えられた花々で、彩られている~
家の内部は?と言うと、下の写真のように、洋風と和風がうまく混ざり合った、とても素敵なつくりになっている。
テーブルの枠は、囲炉裏を掘り出したものだそうだ。
「双鶴庵」を造られた後、カールさんは、次々と古民家の再生に取り組んでいかれる。(初めのうちは、買い手も決まって
いないというのに…)
(カールさんが再生された古民家は全部で8軒だそうだが、その内の何軒かを下の写真で紹介します。)
再生古民家、第2号 「イエローハウス」(壁の色から)
3軒め 「レンガの家」
べんがらの家
最後にカールさんの発案で再生された、竹所の集落の入り口にある建物がありますが、さて、これは何の建物でしょう?
それは…なんと!
中條さんの牛小屋でした!
私がカールさんの仕事を見て感動したのは、それが単なる「日本趣味」ということではなく、日本の建物についての深い
研究に基づいている点にある。
彼は、建築家ブルーノ・タウト氏を深く敬愛され、タウト氏の「日本の職人はただの職人じゃなく芸術家だ。」という言葉に
共感されている。
そして次のようにも言われ、日本の有り様について、住宅という視点から、危惧の念を抱かれている。
(この言葉を聞いたとき、私は以前、C・W・ニコル氏が、日本の自然破壊について、同じような中味のことを言って嘆いて
おられたのを思い出した。)
カールさんの古民家の再生は、もちろん、建物だけの問題にとどまるものではなかった。
次第に人口が減って限界集落と言われるような状態になっていた「竹所」だけれど、カールさんの再生された古民家を気
に入って住まれることになった家族のほか、古民家村の素晴らしさに惹かれて移住する家族も増えた。
そして、カールさんご夫妻の村の人々との率直な付き合い方が、次第に村の人々との距離を縮め、今では村中の人々の
つながりが復活し、子どもの賑やかな声も聞けるようになってきたのだ。
今の日本には、元の「竹所」のように、過疎の村、限界集落と呼ばれる所が多い。
そして大都市では、狭い所に多くの人がひしめき合って暮らしている。
この問題は容易には解決はできないだろうけど、カールさんの試みは、一つの大きな希望であることに間違いはないと、
私は思った。
今日、3月11日は、言わずと知れた、東日本大震災から10年めの日だ。
東日本大震災のことは、ほんとはそれだけで一つのブログをアッしなければならない程の大きなことだが、残念なことに、
今の私にはそれだけの元気がない。
昨夜のNHKスペシャルの「徹底検証 除染マネー」は、原発事故による放射能汚染をできるだけ早く除去するべく提供さ
れた多額の現金が、事もあろうに、不正に使われている現実や、このままでは除染を諦めざるを得ない場所があることな
どなど、胸が締め付けられるような内容だった。
「復興」などという言葉とはほど遠い現実を、私たちはしっかりと認識しなければならないと思う。