畠山義綱のきままな能登ブログ

畠山義綱が見てきた史跡を紹介します。
時々、経済や政治などもつぶやきます。

現代の文章と思考の比較

2016-08-15 08:57:00 | 政治・経済
 8月14日の未明にトップアーティストのSMAP解散に関する発表がされた。2016年の1月に解散騒動があったがそれを引きずる形での解散となった。8月14日にみる5人のコメントから、文章というのは本当にその気持ちを表していると感じたので、そのコメントからどのような思考が見て取れるか。いつもは中世の古文書を見ているが、今回は現代の文章からその意味を考えていきたいと思う。
 まず、前提に日本の文章というのは、特に文面に自分の意見を間接的に表現することで、相手を立てたり波風を立てないようにする慣習がある。その分、その意図を組みにくいが、その言い回しやどこに軸を置いているかを通してその気持ちを汲み取ることはできる。そこで、解散に関する5人の文章の全文を比較することでその気持ちの差を読み取っていく。


■中居正広さんのコメント全文

 「ファンの皆様、関係各位の皆様、我々SMAPが解散する事をご報告させて頂きます。ご迷惑をお掛けしました。ご心配をお掛けしました。お世話にもなりました。このような結果に至った事をお許しください。申し訳…ありませんでした…」

 まず冒頭にファンと関係者に向けた解散報告のあいさつ。ファンに軸を置いている点が中居さんの周囲に気を配る姿勢が見て取れる。そして、そのファンに向かってまずお詫び。感謝の場面は「お世話になりました」という部分以外ない。そして「申し訳…ありませんでした…」という文面からは口語のように言葉に詰まる様子を行間から読むことができる。予想ではあるが、中居さんの解散することが本望ではない様子が文章から強く表れている。SMAPで一番大事なファンを立てていることに、リーダーとしての責任感や、まったくSMAP内の事情に触れていないことから、メンバーすらもかばう全方位外交ともいうべき、素晴らしい人間性が見て取れる文章である。



■木村拓哉さんのコメント全文

 「この度の『グループ解散』に関して、正直なところ本当に無念です。でも、25周年のライブもグループ活動も5人揃わなければ何も出来ないので、呑み込むしかないのが現状です。沢山の気持ちで支えて下さったファンの方々、スタッフの皆さんを無視して『解散』と言う本当に情け無い結果になってしまいました。今は言葉が上手く見つかりません」

 まず冒頭に「無念です」という文章があり、軸が自分にあることがわかる。そして一番の違いが他の4人にはないネガティブな文言の多さ。「正直なところ」「5人そろわなければ何も出来ない」「呑み込むしかない」「無視して『解散』」「本当に情けない結果」「今は言葉が上手く見つかりません」。ほぼ全文がネガティブな言葉で占められている。つまり軸が自分にあることから、自分としては不本意な結果であるということが強いメッセージになっている。しかも他の4人とは違って、メンバーへの恨み節も見て取れる。一見ファンやスタッフに向けていることばに見えるが、この文章は実はメンバーに向けた「なぜ解散という道を選んだのだ」という問責にも見て取れる。ここからやはり1月の騒動以来、木村さんだけ違う立場に立たされてメンバーとの意思疎通があまりできていなかった点が見て取れる。すると、木村さんがいくら頑張っても他の(特に稲垣さん、草なぎさん、香取さん)との連携は難しく、その点で中居さんがメンバーの調整に苦労していたであろうことがこの文章からも推察できる。
 日本人的感覚からして、他者を非難すると自分に返ってくるので積極的には避けたいと考えるのが普通だ。であるならば、木村さんの隠された意図として、ファンやスタッフの応援を通して、解散にするその日までもう一度5人での活動を行った上でお別れしたいという意思表示なのではなかろうか。つまりは、一部マスコミで報道されているさよならコンサートや
、25周年イベントや紅白への出場を狙ってのファンへの喚起を促すメッセージなのではないかと筆者は推測した。


■稲垣吾郎さんのコメント全文

 「ファンの皆様、スタッフ関係者の皆様、この度はご心配ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございません。今の状況で五人での活動は難しいと思い、辛い決断ではありますが『解散』という形を取らせて頂く事になりました。どうか僕達の意思をご理解頂けたらと思います。28年間本当にありがとうございました」

 冒頭の発言から、ファンや関係者に軸足が置かれている。そして「ご心配ご迷惑」という文面から、騒動後からの溝で関係者に本当に苦労を掛けたところを謝罪している。しかし、次の文面で「僕達の意思をご理解頂けたら」というあたりから、稲垣さん自身も解散派であったことが見て取れる。一方で「辛い決断ではありますが」という文面よりメンバーが一枚岩ではない、そして解散が良い決断では無かったという点が見て取れる。これはメンバーへの配慮とファンへの配慮が見て取れ、稲垣さんが解散派でありながらも、中居さんの調整に少し心動かされていなのではないかと想像する。

■草なぎ剛さんコメント全文
(なぎの字は文字化けするのでひらがなとなったことをご容赦ください)

 「この度僕たちSMAPは解散する道を選びました。いつも応援してくれたファンの皆様、支えてくれた関係者の皆様、グループ結成から28年間本当にありがとうございました。今後も精進して参りますので引き続き、温かく見守って頂けると嬉しく思います」

 冒頭のコメントは軸が明確のようで実は不明瞭なのである。「僕たち」が主語であり一見SMAPが主語のようであるが、前述のようにSMAPの意思は一枚岩ではなく、淡々と「道を選びました」と言ってしまうあたり、自分視点からであり、軸が自分にある。コメントにある言葉に、ネガティブな言葉はなく、「ありがとうございました。」「今後も精進」「引き続き、温かく見守って」というあたり、解散に対する後ろめたさはない。一方ネガティブな発言が全くないので、存続を図るメンバーに対しての思いがなく解散に対するリーダー中居さんの調整などをほとんど受け入れていないのではないかと筆者は思った。すると草なぎさんは積極的な解散論者であったのではないかと推測する。

■香取慎吾さんのコメント全文

 「ファンの皆様、そしてスタッフ関係者の皆様。僕らSMAPは解散いたします。応援して下さった沢山の方々に心より感謝申し上げます。そして突然のお知らせとなりましたこと、深くお詫び申し上げます」

 冒頭のコメントからファンやスタッフに向けた言葉のように見えるが、「解散いたします」という文面に自分の意思の強さを感じる。中居さんが「解散することを報告させて頂きます」と報告という言葉から結果的に解散となったと言う意図が見て取れるし、草なぎさんが「解散する道を選びました」という言葉から、それ以外の道もあったかもしれないけど、それを選んだという意図が見て取れる。しかし、香取さんから「解散いたします」という端的な表現は、「この道しかなかった」という強い意志を感じる。したがってその記述を見ると、ファンやスタッフの名を挙げながら自分を軸にした文章だと考える。
 そして今までの「心よりの感謝」を伝える一方、ネガティブな言葉は「突然のお知らせとなりましたこと、深くお詫び申し上げます」のところだけであり、ファンに対しての突然の報告に申し訳なく思うが、解散に対して申し訳なく思っていないという意味にもとれる。つまり強い思いを持って解散を主張していたとも見て取れる。この事からも、草なぎさんと同様に存続を図るメンバーに対しての思いがなく解散に対するリーダー中居さんの調整などをほとんど受け入れていないのではないかと筆者は思った。



 以上をまとめると、5人の解散に対する態度は以下のようになる。

存続派       解散派      強い解散派
木村さん<中居さん<稲垣さん<草なぎさん<香取さん


 室町時代の古文書を見ると、文章というのは一見宛先にわかるように書かれたものに見えるが、その実はその文書が流失したり他人に披露される可能性を考えて、誰に対しても通用する文面を優秀な武将ほど選択していると言える。また、日本人の性質上、直接的な表現は避けるのが通例ではあるが、1つの文章だけではわからなくても、他の文章と比較することで微妙な言い回しからその意図や人物の訴えを読み解くことができる。
 今回の5人の「解散に関するコメント」の全文はそれがわかりやすい比較になると思い自分なりの分析をしてみた。しかしこの分析はあくまで個人的な推測であり、SMAP個人の気持ちを正確に代弁しているかどうかは不明である。そして、また私もSMAP解散に心を痛める世代であることを通して、勝手にSMAP個人のコメントを分析したことをお許し願いたいと思う。

 ライオンハートの歌詞のように「失ったものはみんなみんな埋めてあげる」とはいかなかったのが残念でならない。