ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

保育園でデモンストレーション

2007-03-01 22:42:57 | 能楽

昨日は先月だけで3度の学校関係のデモンストレーションを行いました。今回の会場は。。保育園。(^_^;

「りんご組さん」やら「もも組さん」やらのクラスの、(^◇^;) 2歳~5歳の子どもたちが対象です。面を見せたり、また今回も先生が王様役(今回は女王様)に扮した『鶴亀』では子どもたちにも出演してもらったり。子どもたち相手の能楽デモンストレーションも何度かを経て、段々と手順も定まってきました。ところが。。

今回もちょっとしたハプニング(?)がありました。

ひとつ目は、能面の「若女」と「増」を並べて見せて感想を求めたとき。「この二つの面はどこが違う?」という質問をすると、まあ、たいていは「目~」とか「口~」という答えが返ってきます。どうしてもディテールを見てしまうのは仕方のないところで、そこで「そうだね。それじゃ、もっと大きく見てみよう。表情はどう? 怒ってる? 笑ってる?」と聞いてみるのです。そこでようやく「若女」の方が優しい表情で、「増」の方が厳しい表情をしている事に気づいてもらえる。ここで「じつはね~。この二つの面はまったく違う役に使うんだよ。こっちの面(若女)は人間の女の人なんだけど、こっち(増)は。。これは人間じゃないの。神様なんだよ」「ええぇぇ~~っ!?」こうして日本古来の「神様」について少しお話をします。

ところが今回は、表情の違いを答えさせていると、一人の女の子が「増」を指さしてこう言いました「こっちの面。。泣いているみたい」

怜悧な「増」の表情を見て「泣いている」という感想は初めて聞きました。なるほど、そう見えなくもない。これだから子どもは面白い。凝り固まった大人の発想からは考えられないほどに、本当に発想が自由。ちょっと内容は失念したんだけど、ほかの場面でも同じ女の子が鋭い感想をボソッと言って、ぬえが「!」と感心したところがあったんですが。。いろいろと子どもたちに体験をさせている中のほんの一瞬のコメントだったので、いまは正確には覚えていなくて。。ともかく、彼女の親御さんを ぬえは誉めてあげたい。そしてこの鋭い感性をぜひ伸ばしてあげて欲しいと思います。


   <ただいま『鶴亀』の子方=鶴=の稽古中>

もう一つは、これこそハプニングなのですが、デモンストレーションの最後にはいつも ぬえがテープに合わせて「神舞」を舞ってみせて、それで終了にするのです。このとき。。なんと子どもたちの間から手拍子が起きた! これには驚きました。そして舞いながら ぬえの顔も自然にほころんできます。(^◇^;)

ところが残念ながら、この時は保育園の先生方がこの手拍子を見て驚いて、子どもたちに注意して止めさせてしまった。「あ。。止めなくてもいいのに。。」と ぬえは心の中で思っていましたが、まあ、これも先生方にしてみれば、講師である ぬえに失礼だと思ったのでしょう。止めるのも仕方のないところですね。ぬえもマジメな顔をして舞っているものだから、喜んで手を叩く子どもたちが「無礼」に見えたのかも、です。ただ、自然発生的に起きたこういう行動は、彼らが本当に楽しんでくれた事を如実に ぬえに知らせてくれました。

ぬえもこのような事が起きるとは思っていなかったから、あらかじめ先生と打合せしておりませんで、次回からは「以前にはこういう事もあった。自発的に子どもたちの心に芽生えて始まった事は止めないようにお願いします」とお願いしておく事にしましょう。


  <今回の功労者=王様。。いや女王様ですな。事前のお稽古がんばりました>