ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

インターナショナル邦楽の集い

2007-03-06 03:52:38 | 能楽

恒例の催し、代田インターナショナル長唄会の主催による『インターナショナル邦楽の集い』が昨日催され、ぬえもお手伝いに行って参りました。以前にもご報告したとおり、ぬえはまさか長唄に参加したわけではなく、三味線を習っている外国人のうちの何人か、稽古に余裕がある人にボランティアで仕舞を教えておりまして、この日はその外国人の発表会、というわけです。

さすがに出演者である ぬえが演奏中に写真撮影をするわけにもいかず、今回は当日配られたプログラムの画像をお目に掛けることしかできませんが。。いやいや、今年は前回よりもさらにパワーアップして、充実したコンサートになったと思います。

今回のコンサートは、当初 主催者(代田インターナショナル長唄会の主宰者)である西村真琴さんが、その生徒さんが少なくなってきた関係で今年はコンサートを開かない意向だったものが、その後あれよれよと生徒さんが増えて、急遽開催を決断されたもの。当然ながら三味線のお稽古を始めてわずか半年、という程度の生徒さんも多くいて、開催はしたものの、上演される演奏のほどはどうかなあ。。と危ぶまれる観測もありました。が。いやこれは。なかなか聴けるものじゃないか。ぬえは長唄にはほとんど無知なのですが、そして、もちろんプロの助演者が大勢さんお出でになって彼ら外国人の生徒さんの演奏のフォローをしたのだけれども、ぬえが聴いていたかぎりでは、ほとんど全く瑕瑾のない、まとまったアンサンブルだったと思います。

そして、ぬえが指導した仕舞は。これもまた大変に良い出来でした。彼らに稽古をつけている間はいろいろな事がありました。ぬえはボランティアで稽古をしているのでズケズケ言うのですが、「ふうむ。。悪いけれど前回より進歩がないね」まで言った事もある。当人、ぬえが居ないところで泣いてしまったそうです。でも、それはその当人に必要な言葉だと ぬえは信じて言ったので、まあ、それでイヤになって稽古を辞めてしまったら、それまでなんだけど。。それでもその生徒さんは次回の稽古も ぬえについてきてくれました。そして当日はついに間違いなく勤めることができた。ぬえはその生徒さんを誇りに思うし、終了後のパーティーでは、成果だけでなく、苦難を乗り越えて勝利した努力を誉めてあげました。

それから、こんな生徒さんもいました。日本滞在中にずっと仕舞のお稽古を続けていたのだけれど、だんだん雲行きが怪しくなってきた。。いや、稽古の事ではなくて、コンサート前に彼の日本滞在のビザが切れてしまい、その延長申請をしたのだけれど、日本の入国管理局はいつまで経っても彼の申請を認めるかどうかの決断を出さないのです。本人は服飾デザインの勉強に来日していて、ファッションショーにまで参加して自分がデザインした服を発表するほどだったのに。そんなこんな、不安定な状態で稽古を続けているうちに、ついに彼のビザは切れてしまった。延長申請中なので、すぐに日本を退去しなければいけない、という事はないのだけれど、いつ申請が不許可になるかわからない。そして。。今年のはじめに ようやく結論が出たのだけれども。。その結果は「延長申請は受理しない。今月末までに退去せよ」というものでした。(!!)

彼は稽古半ばでいったん帰国し、このコンサートのために観光ビザで再度来日して出演はできました。。が、仕舞の発表はできなかった。最後の追い込みの稽古にすべて参加できなかったからです。ぬえは日本国民として、このような仕打ちを受けた彼に恥ずかしい気持ちでいっぱい。

それでも、かつてこのコンサートに出演して、いまは母国にいる生徒さんも、この日のコンサートを聞きつけて、わざわざ来日して、出演したり、お手伝いをした人も大勢おられます。ぬえはこのコンサートに参加できる事を誇りに思うし、本当に良い一日を過ごせました。

翌日は二日酔いで大変だったけどね~ (~~;)