さぶろうは偉くない。だもんで、偉い人の集まるところには足が向かない。傍まででも行きたくない。声を聞く耳すらない。小さい。度量が小さい。さぶろうはみすぼらしい。だもんで、オシャレを施した人たちの集まりには入れない。近くにも寄りたがらない。さぶろうは醜い。しかし、美しい女性を見たがる。ここは矛盾している。直接は避ける。間接にテレビ放送だとか映画などで見て、「いいなあ」「あんな美人さんにお目に掛かりたいもんだ」などと言う。奥さんに怒られる。はしたなさを咎められる。さぶろうはこころが、歪だ。折れ曲がっている。しわくちゃに皺して、縮んでいる。でも、伸び伸びした性格の人が好きだ。ほっとする。ここも矛盾している。萎縮している人はつまらないと思う。暗い目をした人では、温まれない。自分がそう思うくらいだから、他人様はさぶろうを見たら、体が冷えてしまうだろう。自戒しなくちゃならない。
ああ、温まりたいなあ。暑い夏だというのに。それには己の性格改造しかあるまいが、もうさぶろうは老いている。巌のように固まっている頑固さがここへ来ていきなり溶け出すとは思えない。おしまい。おそまつな結論だあ。