5
今日は今日。日付けもされていない今日。日付けをすると妄になる。この世を規定すると妄になる。わたしの妄で全体を捕縛すると妄になる。
全体の真でわたしの妄を抱き取られるとたちまち真になる。この世のマジック。わたしはたしかにこの世のマジックを生きている。
5
今日は今日。日付けもされていない今日。日付けをすると妄になる。この世を規定すると妄になる。わたしの妄で全体を捕縛すると妄になる。
全体の真でわたしの妄を抱き取られるとたちまち真になる。この世のマジック。わたしはたしかにこの世のマジックを生きている。
4
まことに相済まぬことであった。まことに有り難いことであった。妄にして真。真にして妄。わたしの妄に大きな大きな力が加わっている。
さあこれから12月一日を生きて行こう。
3
「挙体全妄」にして且つ「挙体全真」。
回転体のわたしの、中心部分になっているのは? 如来の慈悲と智慧である。わたしの中心部分になっていてくださっているのは? 如来の慈悲と智慧である。
2
挙体全真。きょたいぜんしん。
間違っても間違ってもそれでいい。それでいいから、動いている。うろついている。中心が間違っていないから、回転が出来る回転体のわたし。真としてのわたし。
1
挙体全妄。きょたいぜんもう。
わたしの全存在が、ただいまのところでは、間違っている。うろついている。迷いに入り込んでいる。間違った見方考え方に染められて、間違いの泥の中をうごめいている。
6
ヒヨドリがヒーヨヒーヨヒーヨと鳴いている。寒を突き破って鳴いている。静かな山里の12月。なんということもない山里の冬。
玉葱苗早生を植えた畑がもう冬草に覆われている。日が射して来たら、草取りでもするか。北風に煽られぬよう、風邪引かぬよう、ほっかむりをして。
5
88才で死んだお婆(ばば)がよく言っていた。「上を見れば涯(はて)なし。身の届かぬ上を見て羨まぬこっちゃ」「下を見れば涯なし。下を見て身を持ち崩さぬこっちゃ」「己の等身大を生きておれば溜息もなし」と。凄いお婆様じゃった。
そういえばそうだった。お婆様に諭されなくとも、我が身は、二身三身のない一身だった。でもって、現実の日暮らしでは、等身大のズボンと等身大のシャツを着て過ごしておるばかりだった。
4
大病に攻め落とされることなく生きて来られた。小病を乗り換えひっ換えしながらも、命が繋がっていた。それでいいじゃないか。長患いしなかった。寝付かずに暮らせた。それでいいじゃないか。
うん、それでいい。十分それでいい。ほんとにそれでいいか。ほんとにそれでいい。蛇の蜷局(とぐろ)を巻かないか。
3
今日から12月かあ。この月で一年が終わる。終われるのかあ。
オレはこの一年何をしたのかなあ。年を取った以外に何をしたのかなあ。日に三度の飯を食う以外に何をしたのかなあ。寂しい寂しいをかこつ以外に何をしたのかなあ。
何かをしたんだろうなあ。あれこれあれこれ愚にもつかぬ事をだらだらだらだら。草に滲みる牛の涎のように。
2
書斎の炬燵に足を突っ込む。窓の外を見る。空がいまいちぱっとしない。お茶ミルク色をしている。外に出て行く気色にならない。
一人の脚を擦(さす)る。右足の脹ら脛が乾燥性湿疹のようだ。痒い。手指の爪を立ててゴシゴシ擦(こす)る。