襲って来た兵隊と戦え。痛みと闘え、さぶろう。己の現実から逃げるな。堂々と受けて立て。試されているのだぞ。お前がどれくらいの痛みに耐えられるのか。それでへたばってしまうのか。大きな人物になれる人材か、そうでないか。そういう場面で、あっさり引き下がって、弱さを露呈してどうする。涙声になるな。おろおろするな。じたばたするな。さぶろうは大きく息を吸いこんで、腹を大きく膨らませてみた。
如来大悲の恩徳は身を粉にしても報ずべし。おまえ、日頃、讃仏偈を歌っているばかりで、いざとなると、ちっとも身を粉にしないじゃないか。これまでの70年間、大悲大慈を一身に受けながら、いざ、報ずべしというときになって、己の惨状に辟易してどうするのだ。たった己の体の痛みぐらいにも逃げ惑っているじゃないか。背負わされた荷物を下ろすな。たやすく身軽になろうとするな。そういう安易な道を探索するな。