赤とんぼ 三木露風作詞 山田耕筰作曲
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夕焼け小焼けの赤とんぼ/負われて見たのはいつの日か
山の畑の桑の実を/小籠に摘んだはまぼろしか
十五でねえやは嫁に行き/お里のたよりもたえはてた
夕焼け小焼けの赤とんぼ/止まっているよ竿の先
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詞も曲もいいなあ。しんみりしてしまうなあ。泣きたくなってしまうなあ。
お爺さんが歌う。一人の時に歌う。小さい声で歌う。幼い頃に戻って行く。
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桑の実なんか、もう誰も食べないだろうなあ。蚕を飼っていたときには畑一面に桑の木があった。もう蚕も飼われてはいないから、桑の木も見かけなくなった。
ねえやの背中におんぶされているときに、赤とんぼが飛んでいるのを見たというのだろうか。赤ん坊の頃ならそんな記憶は残ってはいまい。
そのねえやも15歳で嫁に行ってしまった。早婚だったよね、昔の人は。親が決めた婿殿のところに嫁に行った。里にいる親御からの便りも来なかった。一人で農家の労働に耐えていたんだろう。
歌詞の4番だけは現在だ。川に竿を投げている。そこへ赤とんぼが来て止まる。ああ、あんなこともあったなあ、こんなこともあったなあと回想をする。
三木露風はこの詩を書いたときは何歳だったんだろうか。お守りをしてくれる人のことを「ねえや」と呼んでいた。「姐」という字を当てるのだろうか。
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こんな詩が書けたらいいなあ。幾つになっても僕には書けないなあ。