1
日射しが、この頃では日射しさまさまになった。様が重なる。あんなに日射しを避けていたのに、日射しに擦り寄って行くようになった。それだけ秋が深まったのだ。
畑のアスパラガスが日射しの中でうっとりした目をしている。媚びて潤んでいる。
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日射しが、この頃では日射しさまさまになった。様が重なる。あんなに日射しを避けていたのに、日射しに擦り寄って行くようになった。それだけ秋が深まったのだ。
畑のアスパラガスが日射しの中でうっとりした目をしている。媚びて潤んでいる。
5
人と同じことが同じように出来ない。これは苦しみだ。人と同じ幸福を幸福として受け止められない。これは悲しいことだ。
大人の通知表に協調性ゼロと書かれてしまう。
若いときに是正をしておくべきなのだが、この老爺になってもまだ修正されていない。
4
これをあてがって遣っていれば、みな横並びで満足をしているはず。幸福を味わっているはず。そういう目で見られていることもある。満足したならば、協力をせよという要求にもなる。
でも、でも、はみ出し者もいる。横並びの列からはみ出す者もいる。白い目でじろりと見て、「アイツはいひゅうか」と指をさされることにもなる。
3
一律ではない。それぞれ異風だ。異風を嵩(かさ)に着れば、「異風者(いひゅうもん)」に成り下がる。
兎角世過ぎは難しい。
2
食い物にも好き嫌いがある。酒も飲める人と飲めない人とがいる。一概には行かない。
遊び事もそうだ。それで遊べる人もいるが、それでは遊べないという人もいる。
楽しみごともそう。ある人にはそれがすらりとそっくり楽しみになるが、そうではない人には苦しみになる。
1
みなおしなべて、その旨い物が好きかとなると、そうとも言えない。
嫌いな人もいる。好きな人には嫌いな人の気持ちが汲めない。
これだけご馳走させて遣っているのに、こちらの善意と好意の両方とも汲まないとは何事かと云うことになる。責められる。
5
壕の水は稲を育てるには欠かせない。だから壕を大切に守ってきたのだ。水は山奥から流れ込んでくる。それを貯水して、必要に応じてお百姓さんが田に流す。
資産家ではない我が家には田がない。稲を育てる苦労を知らない。かんかん照りの中で働いたことがない。よって、苦労をされた人を労(ねぎら)う気持ちに欠ける。
しかし、現代では、この集落の人で稲作りに携わっている人はもはや極めて珍しくなった。大型機械を駆使した農協さんが代替わりしている。
4
ところがこの爺さんはヘンな爺さんである。生臭さが苦手だ。取って来たばかりの魚は生臭さがとれていない。みなさんご苦労をして頂くのに、まったく食べられない。協調が出来ない。うまいうおいしいの舌鼓が打てない。列んだ長老のお叱りを受けることになる。
毎年、この爺ばかりは、牡丹餅を酒の肴にして酒を飲むことになる。そういう男を「場壊し」「ひねくれ者」「面汚し」などとも呼ぶ。
3
公民館に持ち帰って、外の水道付近で、男達が鱗を削り取って腸(はらわた)を出して、捌(さば)く。刺身にする。
で、待っていたご婦人方がキッチンでこれを煮付ける。鯉濃(こいこく)の味噌汁も作られる。小豆餡が練られる。やわらかく餅を搗いてこれを牡丹餅にする。
お昼、集まって来た住民に振る舞われる。もちろん酒盛りになる。住んでいる人たちがこれで親睦を果たす。
2
我が住む集落に農業用溜め池が2池ある。山の手に。毎年この頃になると濠干しが行われる。片方ずつ。少しずつ貯水量を減らして行って、あと僅かという処で壕に入って魚を捕る。
まるまる2年で、生けてあった鮒や鯉などの川魚が大きく育っている。魚が背鰭で跳ねる。これを男達子供達が総出で網にする。腕の見せ所だ。
魚捕りが好きな人も多い。もちろん苦手な人もいる。