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この世は映画館のようだ。そこで映画を見ている。映画の主人公はわたしになっている。わたしは悲劇の主人公になっている。悲しみ苦しむ。不公平不平等に苛まれる。他者を羨み、己を蔑む。でもそれが映画だということも知っている。何処かで知っている。
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この世は映画館のようだ。そこで映画を見ている。映画の主人公はわたしになっている。わたしは悲劇の主人公になっている。悲しみ苦しむ。不公平不平等に苛まれる。他者を羨み、己を蔑む。でもそれが映画だということも知っている。何処かで知っている。
5
去って行かない間に希望を見出せないか。見出す方法はないか。ありそうな気がする。暗い暗いと暗がらないで、明るいところに来られないか。去って行かない間にも、元気を回復できそうな気がする。
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去って行くまでの間を苦界にいて、苦しんでいる悲しんでいる。呻いている。唸っている。苦界のいるときにはそれが気づけない。去って行ったらもうそこが苦界ではなくなって行くということに、気づけない。ずっと死ぬまで軋轢の下敷きになっている。
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去って行くまでの間を苦界にいて、苦しんでいる悲しんでいる。呻いている。唸っている。苦界のいるときにはそれが気づけない。去って行ったらもうそこが苦界ではなくなって行くということに、気づけない。ずっと死ぬまで軋轢の下敷きになっている。
3
ただ懐かしい風景になっている。苦しかった分だけ償いを受けている。悲しかった分だけその償いを与えられている。傷口がすっかり癒されている。去って行ったらもうそこは苦界ではないのだ。
2
生きづらいとしたところが、懐かしくさえなって来る。虐げられていたことが嘘のように見えている。恨みにしていたことが恨みでなくなっていいる。加害者意識も被害者意識も、その色を失って水に流れている。
1
去って行ったら、そこはもう苦界ではない。なくなっている。去って行くまでの間だ。去って行った途端に苦しみが癒える。悲しみが癒える。みなそこが夕焼け色になる。
6
小鳥が鳴いています。風が吹いています。澄みきった大空が広がっています。山の紅葉が少しだけ赤くなってきました。この世は秋を迎えています。いろいろなものを見たのです。いろいろなものを聞いたのです。
5
わたし劇場の主演男優はまもなくここを去って行く日が来る。満ち足りるだけの長さを生きました。満ち足りるだけの濃さでした。
4
この頃寝る前に、<わたし劇場の主演男優>のわたしは、そんな台詞を言うようになった。まもなくだなあまもなくだなあと思うようになった。