寒い。畑にいるのは寒い。黙々として一人でいる。休み休みしつつ、作業をこなす。ま、ゆるゆるとだが。すっかり冬支度をしているのだが、鼻水が垂れる。一人でいるからいいようなものの、汚いジジイだ。夕暮れになると益々寒くなる。夕闇の中を、とぼとぼ一輪車を押しながら帰って来た。
しかしねえ、生きているからできることなんだ、これもあれも。寒いのも鼻水が垂れるのも、有り難いことなんだ。
寒い。畑にいるのは寒い。黙々として一人でいる。休み休みしつつ、作業をこなす。ま、ゆるゆるとだが。すっかり冬支度をしているのだが、鼻水が垂れる。一人でいるからいいようなものの、汚いジジイだ。夕暮れになると益々寒くなる。夕闇の中を、とぼとぼ一輪車を押しながら帰って来た。
しかしねえ、生きているからできることなんだ、これもあれも。寒いのも鼻水が垂れるのも、有り難いことなんだ。
園芸店を3店回ってやっと見つかった。赤玉葱の苗が。赤玉葱はサラダ用によく利用されるので、2束も買い求めて来た。1束は50本。一輪車を押して、借りている畑に行って、草藪の草を抜き去り、ヨイショヨイショとスコップで耕し、柔らかな土作りをし、畝を作り、有機石灰、化学肥料、EM菌入り牛糞を混ぜ合わせてまた耕し、そこに苗を列べて土を被せた。椅子に座ったままの作業なのだが、疲れる。日が暮れる前に終了した。
楽しんだ。ままごとは楽しいのだ。このよろよろ老爺のすることはすべてままごとである。
贈り物を与えられてるのはわたし きみのかおりと星のかおりの 薬王華蔵
*
この世は薫る。うつくしいもので薫る。近くにきみがいて、きみがうつくしく薫り、遠くに星々がいて、それがまたうつくしい光を放って薫る。その両者の贈り物を、与えられているのはわたしだった。それを捧げ持つ。
*
なんというわたしだ!
*
それを捧げ持つ。こうしてわたしは万物をうつくしく見て過ごす。
ガチガチの鎖の音の手が握る雪降る五指の吐くあたたかさ 薬王華蔵
*
歌の中でだけ、わたしは恋をしている。活動をしている。あなたの手を握る。勇気を奮い起こして延ばした手は鉄の鎖のようにガチガチと音を立てている。雪が降っている。あなたに会う。差し出されたうつくしいあなたの手の、五本の指が息をしている。あたたかい息をして、わたしを出迎える。夢の中では。
*
恋をしていたい。拒否ではなく、人間界とそこに生きる人間を受容していたい。否定ではなくいつくしんでいたい。誉め讃えていたい。せめて夢の中だけででも。すると枯れ木のような老爺に、春の芽吹きの桜色の夢が咲く。引き攣った醜い顔の皺が、一筋延びる。
5時半を回った。もうすぐ夜明けだ。明るくなる。それほど冷えこんでいない。寒くない。前日が冷えたので、この秋初めて羽根布団を着て寝た。それでポカポカしている。さてどうしよう。起きるか、それともこのままずるずるとしているか。