鶴飛び来る。一家族で。
きっとすると言っておきながら、しない。ぐうたらしてるだけ。約束不履行。でも、もう食ってしまったわい。
9
今日は土曜日。2019年6月29日。老い先短い僕には、毎日が2度と巡ってこない日。今日は何をしようかな。楽しいことをしたいな。何だろうなあ、僕の今日の楽しいことって?
たぶん、晴れていたら、北の畑まで一輪車を押して行くだろうな。一輪車には小さなこまごまとした農機具を載せて。それから坐るための座椅子も載せて。其処へ行って草取りをするだろうな。北の畑は夏草が伸び放題に伸びている。草を取ったら、取ったところには、種から育てた茄子苗と、脇芽を挿したトマト苗を移植してあげよう。
畑に出て行くのは早朝と夕暮れ。カンカン照りの日中は、暑くてとても畑に出てはいられない。
8
もうすぐ新聞が配達されてきます。午前4時10分です。バイクの音がして、それからぱたぱたぱたと小走りに走る跫音がします。玄関の自動ライトが点灯して明るくなります。そして玄関の新聞受けがカチャンと響きます。玄関には石段が2段あります。新聞屋さんがこれに躓かれるのを心配します。ああ、よかった。またぱたぱたぱたと跫音が遠離って行きます。
新聞屋さんは偉いなあといつも思います。毎朝毎朝定刻です。毎朝毎朝のことです。忍耐強いなあと思います。
7
ビール豆と呼んでいます、枝豆のことを。ビールのつまみにおいしいからです。昨日夕方これも籠一杯に収穫しました。剪定鋏で切り取りました。実はもうすこし充実させてもいいくらいでした。でもね、虫がほっておかないのです。おしいしいから、豆のジュースを吸ってしまうのです。するともう駄目です。養分を吸い取られたら、へしゃげてしまいます。虫も生きています。おいしいということを知っています。寄って来てたかります。虫の臭いも豆に残ります。すると食べてもおいしくありません。だから競争です。虫との競争です。虫殺しの薬はかけていません。
夕食にいただきました。塩茹でにしてさっそく。我が家の枝豆は美味い!
えへへっ、人間が先取りしてしまいました。虫さんたちがさぞや臍(ほぞ)を噛んでいることでしょう。あれは何という虫なのでしょう。失礼ながら、名前を知りません。
6
生きていると、こんな楽しみにも出遭えます。
我が家での呼び名は韓国南瓜。これが、畑で実をつけました。実はほんの数日で完成します。ズッキーニのように細長です。野菜瓜に似ています。薄いグリーンの模様が入っています。園芸店で種を買いました。袋には「よくなる南瓜」の名称がついていました。その通りでした。よくなります。ぽろんぽろんなります。すぐに生育します。味はあっさりしています。中身は胡瓜のようでもありますが、もっと淡白です。
韓国南瓜は支柱の網に沿って上へ上へ上がっていきます。「わたしを食べてごらんなさいな」と彼らは勧めてきます。彼らは利他の行をしています。
5
朝顔も初咲きです。薄い薄い空色をした朝顔が一輪咲きました。大輪です。きれいです。鉢植えをしています。鉢がベランダに10箇ほども列んでいます。朝顔村を成しています。勢いよく葉を茂らせています。蔓がどんどん伸びて来ますので、これを朝ごとに摘み取ります。こうして適当な大きさを保ちます。支柱もたてています。訪ねて来た人に、分けてあげます。鉢ごと。これから毎朝、我が家の朝顔市が立ちます。
生きていると、こんな楽しみにも出遭えます。花を見るのは楽しいことです。
4
トマトは茎から葉を伸ばします。そこに脇が生まれます。脇から脇芽が出ます。ぐんぐん伸び出します。ほっておくとざんばら髪になってしまいます。これを摘み取ります。捨てていいのですが、わたしはこれを捨てられません。摘んだ脇芽を土に挿し芽してあげます。それがやがて一本立ちします。で、ねずみ算でトマトの株数が増えていきます。もう移植してやる空き地もありません。どうしましょう。彼らに付き合うのももう限界です。
3
昨日の夕方にはもう雨はすっかり上がっていました。野良着になって畑にいました。大玉トマトが次々に赤く熟れて来ています。葉っぱの奥にそれが見えています。収穫をして回りました。台所の流し台の上に、収穫した赤い大玉トマトがずらりと列んでいます。もちろん、庖丁で切ってお皿に載せます。一個で十分足ります。
みなさんきっと驚くでしょう。わたしの家の周囲のトマトの本数の多さに。わたしの強欲心が丸見えです。だってね、「わたしを捨てないで」「わたしも生きたい」と彼らは言うのです。わたしはそれを聞き入れます。それくらいはわたしにできることですから。