融資課長のほかに次長も同席したせいか、担当者は少し張り切って声を大きくして居ます。
「だって6ヶ月のリスケ(元金の返済を少なくする)を認めて貰うと、その間に自宅を親戚に買って頂いて、其のお金で借金はすべて精算出来ます。と約束したではないですか。それが土壇場に来て出来ない。リスケをもう半年認めてくれと云っても当行は出来ませんよ。」
どうやら債務者はリスケをする条件に自宅を売るという約束をしたらしいです。
「私も自宅がもう少し高く売れれば約束を果たしたいですが、今は融資残の半分の額しか売れません。それならば自宅を売っても残は残るし、売るメリットもありません。何時売っても同じでしょう。ならばもう少し様子を見たいです。
その間の返済は、とても正常には出来ないから、リスケを続けさせてくださいとお願いしているわけです。」
債務者の声も次第に高くなります。
「自宅を売っても、借金が消える額では売れないことは、最初から解っていたことではないですか。リスケを依頼するような者が、不足分を出して、借金をきれいにすることなんか、とても不可能と最初から解っていた筈です。全額きれいにするなんて云った覚えはありませんよ。何かの言葉尻ではないですか。そんな言葉尻を捕まえていろいろ言われたのでは私の方もたまらないですよ。」
「言葉尻なんて捕まえて言っていませんよ。」
次長の目配せで担当は黙りましたが胸のうちが納まっては居ない様子です。
真っ赤な顔が物語っています。
「私どもはぜひご協力をさせていただきたいと考えています。自宅売却がどうしても無理ですと、リスケを協力は、経営の改善で解決できるでしょうか。
それならば其の計画を示して頂き、私どもも理解すれば協力させて頂きます。
計画書を見せて頂けませんか。
次長は話題を変えて違うところから責めます。
「勘弁してくださいよ。リストラで減った分までやらなければならないというのに、資料ばかり作っていればそれだけで倒産ですよ。」
債務者はまたも食いついています。
「まあ、こんなことで言い争っても仕方ありません。検討してください。」と次長は席を立ちます。
債務者は少なくても短時間に二人の敵を作ったみたいです。
銀行はこの企業は近いうちに破綻すると見て居たらしいです。
金融機関だけでも取引銀行が6行あります。
万一のことがあって、各銀行が一斉に動くより、一足先に整理をしておこうという魂胆です。
半年後この債務者は倒産しました。
普通ならば倒産する企業ではありません。
原因はあの言い争った銀行にあります。
銀行は条件より少ない返済を一切認めませんでした。
先ず保証協会を代位弁済したのです。
後はプロパーが期限の利益を喪失して不動産は任売を認めず競売になりました。
あの言い争ってからの担当者の態度は、当初の条件緩和することは一切協力をしないと云う、頑なものでした。
そんな担当者の態度も行内で咎められることはありませんでした。
簡単に1軒の不良債権を作ったのです。
「だって6ヶ月のリスケ(元金の返済を少なくする)を認めて貰うと、その間に自宅を親戚に買って頂いて、其のお金で借金はすべて精算出来ます。と約束したではないですか。それが土壇場に来て出来ない。リスケをもう半年認めてくれと云っても当行は出来ませんよ。」
どうやら債務者はリスケをする条件に自宅を売るという約束をしたらしいです。
「私も自宅がもう少し高く売れれば約束を果たしたいですが、今は融資残の半分の額しか売れません。それならば自宅を売っても残は残るし、売るメリットもありません。何時売っても同じでしょう。ならばもう少し様子を見たいです。
その間の返済は、とても正常には出来ないから、リスケを続けさせてくださいとお願いしているわけです。」
債務者の声も次第に高くなります。
「自宅を売っても、借金が消える額では売れないことは、最初から解っていたことではないですか。リスケを依頼するような者が、不足分を出して、借金をきれいにすることなんか、とても不可能と最初から解っていた筈です。全額きれいにするなんて云った覚えはありませんよ。何かの言葉尻ではないですか。そんな言葉尻を捕まえていろいろ言われたのでは私の方もたまらないですよ。」
「言葉尻なんて捕まえて言っていませんよ。」
次長の目配せで担当は黙りましたが胸のうちが納まっては居ない様子です。
真っ赤な顔が物語っています。
「私どもはぜひご協力をさせていただきたいと考えています。自宅売却がどうしても無理ですと、リスケを協力は、経営の改善で解決できるでしょうか。
それならば其の計画を示して頂き、私どもも理解すれば協力させて頂きます。
計画書を見せて頂けませんか。
次長は話題を変えて違うところから責めます。
「勘弁してくださいよ。リストラで減った分までやらなければならないというのに、資料ばかり作っていればそれだけで倒産ですよ。」
債務者はまたも食いついています。
「まあ、こんなことで言い争っても仕方ありません。検討してください。」と次長は席を立ちます。
債務者は少なくても短時間に二人の敵を作ったみたいです。
銀行はこの企業は近いうちに破綻すると見て居たらしいです。
金融機関だけでも取引銀行が6行あります。
万一のことがあって、各銀行が一斉に動くより、一足先に整理をしておこうという魂胆です。
半年後この債務者は倒産しました。
普通ならば倒産する企業ではありません。
原因はあの言い争った銀行にあります。
銀行は条件より少ない返済を一切認めませんでした。
先ず保証協会を代位弁済したのです。
後はプロパーが期限の利益を喪失して不動産は任売を認めず競売になりました。
あの言い争ってからの担当者の態度は、当初の条件緩和することは一切協力をしないと云う、頑なものでした。
そんな担当者の態度も行内で咎められることはありませんでした。
簡単に1軒の不良債権を作ったのです。