「それにしても立派な邸宅でしょう。」
「はい。考えられる事は全て取り入れました。自分で言うのも可笑しいですがそりゃあ
内部は立派な物です。」
何しろ500坪の土地に100坪の住宅を建てたのです。
大都会から電車で2時間、中堅都市から車で2時間。山間のコンビにすら無いです。
其処の先祖代々の土地に、どでかい御殿を作ったのです。
土地は親からの貰い物ですが建物は2億4000万を掛けて居ます。
鉄筋2階家ですから、普通高くても100坪、1億でしょう。
其れが2億4000万もかかって居ますから尋常の家では有りません。
どうやって銀行から引っ張り出しかは別として、全部借金です。
不景気の真っ只中、彼のところだけは沸いて居ました。
タイルを作っていたのです。其れを少し安価で都会に卸していました。
もう斜陽のタイル、でも彼のところだけは燃えて居ました。
その時に作ったのがこの馬鹿みたいな御殿です。
其のタイルが急速に売れなくなりました。
ある日突然、話が壊れ、其れが続いたのです。
忽ち経営は行き詰り、借金は返せなくなりました。
会社も家も守る為、必死です。でも、じたばた すればするほど お金は足りません。
それにしてもこの家の維持費がこれほど高いとは身に浸みました。
全館冷暖房で、風呂も何時でも入れるならば月100万は掛かります。
個室で冷暖房は可能ですがそれでも月30万は掛かります。
この維持費すら不自由になりました。
手形は有りませんから倒産は有りません。しかし纏まったお金が欲しいです。
其の財源も有りません。
有るとすればこの家だけです。少し高く売って、若干でも手数料が欲しいです。
最低でも2億以上で無いと信金は承知しないでしょう。
こんな時信金から話が有ったのです。
「自宅を8000万で売りなさい。それ以上に売れた場合は、あなたが其れを自由に使って
頂いて結構です。」
24000万で作って7年くらいの家を8000万で売れば、借金はチャラになると云う事です。
彼は当初信金は何か間違っていると思いました。
しかし間違って居ても困っている彼が助かる話です。
〆たとばかり、早速動きだしました。
売れないです。
お披露目のときはあれほど賛辞を贈って呉れた不動産関係者も相手にもしないのです。
「幾らだったら興味が有るか。」と聞いても其れすら出ません。
維持費だけで普通の家の生活費以上です。
其れに、近くに役場や医者やコンビニすら無く、町に通うのも車でたっぷり2時間は掛かります。
濡れ手に粟との胸算用の彼の気持ちは簡単に打ちのめされました。
任売で売れなかったので、此処は競売になりました。単純に家屋だけの価格を見ると
再構築価格が㎡26万になって居ます。全体で8000万の評価でした。
基準価格は5600万でした。
それでも買い手は無く,最終には彼は親戚に泣きつき4500万で買い戻して居ます。
最低売却可能価格です。
このとき彼は幾ら物件の内容がよくても、世間の評価とは別物と理解したのです。
同じ様なことが土地にも有ります。
山裾を500坪くらい、うまく利用して自宅を作って居る人達は多いです。
上部を平らにして家を建て、下の方は立派な庭園に作り上げて居ます。
大きな置石がうまく配置され、滝や流れも風情を上げて居ます。
庭の維持費だけでも年額300万では効きません。
この当りは倍率地域で路線価や公示価格も決まって居ない場所です。
500坪と云っても半分は雑種地で逃げて居ますから、固定資産税は僅かなものです。
でも当人はこの庭に絶対の自信を持って居ます。
何時でも売れる。
投資した見返りが有る価格で売れる。
こんな気持ちです。
其れが いざと云う時 売れないのです。
自分の思惑の半額でも駄目です。
それどころか、売る為にはきちんと整地をしなければならず、整地料が普通より、
はるかに高いのが普通です。
隣近所の土地の方が高い場合が幾らも有ります。
売らなければならない、と云う気持ちのなって、設定売価がぐんぐん下がっていく場合の
当人の辛さ、本当に思いやられます。
土地でも建物でも幾ら人工の手をかけても売るときは逆に邪魔になるくらいだ。
之が不動産と云うものでしょうか。
http://oguchi-keiei.com/postmail/postmail.html ← お問い合わせは、こちらから
↑宜しければ、クリックして下さい
↑こちらのランキングもお願い致します
↑こちらのランキングもクリックお願い致します