かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

威信の失墜

2008-02-29 | 事例
「2月末までにはどんなことをしても任売願います。出来なかった
場合は直ちに期限の利益を喪失して競売に入ります。」
倅と同じ年くらいの融資課長がSに言い渡しております。

この銀行の融資額は6000万です。手形切り替えもこの2月末が
限度ですよ。其れまでに返済が出来ないならば、担保の売却を
願います、と1年前から強要されています。
担保を手放す事は何も思っていませんが、残債務の返済を
考えると安く売る気はしません。固定資産税の評価は2500万ですが、
今までの売出価格は3800万で頑張ってきました。

親の代からご当地で機屋、Sはこの辺りでは大御所的存在です。
どの銀行の新年会の時などは、挨拶とか乾杯の音頭に
狩り出されたものです。其れも何年もリスケが続くと何時しか
遠くなって居ました。それでもSに対しては正面から未だ強く
言える銀行は有りません。

しかし最近赴任したF銀行の融資課長は別です。
Sに対しても仕事は仕事と割り切っています。
返済出来ない時は、担保の売却と五月蝿く言います。
最初は冗談っぽく言って居ましたが、最近は真剣みをまして居ます。
支店長とは対等に話せるSも、何時しかこの融資課長の前では
小さくなって居る存在でした。

2500万でも売れるか解からない物件を、残債務の支払いの為に
3800万の価格で売りに出しているSの態度を、融資課長は銀行を
舐めていると受け取ったのです。若いゆえに尚カチンと来ました。
其れゆえに再度年末に、2月末まで売れないと、本当に期限の
利益を直ぐに喪失して競売する事を念押して居ります。
Sも銀行の決意は本物だと信じる様になって居ました。

Sは年が明けてから2500万で処分しようとしました。
2500万ならば右から左に直ぐと思っていたのが売れません。
銀行にも協力をお願いしましたが、銀行は
「そこまで協力は出来ません。貴方の責任で売却願います。」
と断られました。恐らく銀行でも2500万の処分は自信が
無かったと思います。そこで焦り始めました。

競売になると新聞に載ります。
業界情報はSのことならばもっと騒ぐでしょう。
自宅と工場以外の不動産を手放して再起にかけているSには
この新聞情報がたまらなく嫌なのです。
悪い噂でも立つと再起できなくなります。
そこでSは販売を委託している不動産屋に買取を依頼しました。

2月の中旬、どうしても売れないSは斡旋依頼をして居る
不動産屋に買取を依頼しました。
不動産屋は2000万ならば良いと約束しました。
銀行はあっさりこの価格を認めたのです。

実はこの物件の固定資産税評価額では2500万でしたが
土地の評価は1200万です。鉄筋ですが30年たっている
価値のない建物が1300万です。ですから売却になると
1500万でも難しいでしょう。銀行は此れを承知していて
2500万で売却を強要したり、漸く2000万で承認をしたのでしょう。

ところが2月の最終の週はじめ、不動産屋は2000万の話を
断ってきました。1500万ならば考えると言うのです。
つい3-4ヶ月前までは3800で頑張っていた不動産です。
2500万まで価格を下げて更に2000万で漸く承認してもらった
不動産です。Sにはもう融資課長に正直にに言う気がしません。

「話が壊れました。」
「では競売鹿ありませんね。」
未だ3-4日しかたって居りませんが、何の連絡もありません。

1行1担保、保証協会も付いておりません。
しかしこのことは遠からず取引銀行の全てに解かるでしょう。
Sの言うまま、今までは殆ど無条件でリスケの延長を
してきたのが五月蝿くなるでしょう。其れより競売記事が
新聞に載ると本業に対する今後の影響が心配です。

検討していた第2会社の切り替え。
Sははっきり実用性を自覚したのです。全ての銀行が債務名義を
持つまでに第2会社の移行は済ませないとなりません。

威信の失墜したS、しかしやる気になって居ます。





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正直が災いを招いたのか

2008-02-26 | 事例
女の子がSの留守にR社から電話が有ったことを伝えました。
もう、無いことを祈っていたR社からの電話です。
先週も有ったらしいです。素知らぬ顔をして居ましたが
逃れる術が無さそうです。深呼吸をして電話機を手にしました。

Sは76才、会社は2年前から息子に社長を譲り、
今は会長と云っていますが、此れも次の定時株主総会で
退職しようと決めています。10年前、主体の不動産会社を廃業、
細々と営業していた医療器具の会社に本腰を入れました。
此れが当り、今では当時の何倍かの規模の会社になって居ります。

不動産会社は潰れましたが、医療器具は残りました。息子の意見で、
資金その他完全に不動産と分離していたのが幸いしたのです。

不動産会社の損失は大きかったです。
債権は方々のサービサーに譲渡されました。
妻は破産をしたが自分は頑張り、今ではR社を除いては
全て片付いております。そのR社も3年半前に、不意に銀行を差押、
2500万を持って行かれました。でも其れっきり、音沙汰ありません。
もう終わったと思って居ました。

アポ後会ったR社の担当は結構年配者を思わせました。
「もうそろそろ決着つけませんか。」此れが切り出しでした。
「今の会社は会社年鑑を見ると、高配当のご立派な会社ですね。
それに仕事の輪も広がっていますね。」
どうやらホームページ等調べています。

とどのつまりが、今のSの資産内容と収入とを教えてくれ、
それによって話し合いましょうと云うことです。

Sは迷いました。収入は年収2000万弱です。
夫婦二人、借金も無いから相当余裕があります。
資産は不動産が伊豆にありますが、此れは解からないでしょう。
不動産は此れだけです。預金については、差押の後は日ごろから
徹底的に注意をして居ります。対策は充分とって居り簡単に差押は
出来ないでしょう。

しかし資産は無いで通せますが、現実に2000万の収入があります。
其れと、今の会社に役員退職引当金を6000万、引当てて居ます。

退職金を多く貰うためには、今の給料を維持しないと、
乗数が悪くなり、退職金は少なくなります。
しかも、退職金は退職した年度に貰わないとし、税法では
退職金として認められません。折角の引当が無駄になります。
人生の大金を手にする最後のチャンスです。
是非とも欲しいお金です。

興信所には決算数字は教えています。
R社には黙っていても、R社は決算書を手に入れて、
退職引当額を知っている可能性が有ります。
所得証明を出せば2000万の年収も直ぐ解かります。

R社の残債務が約1億3000万です。このままですと、
その半分以上の額は取られて、自分には何も残りません。
私は何のために76歳まで働いてきたのかと思うとSは悔しく、
悲しくなります。

「5-600万は払っても仕方無い。後は勘弁して欲しい。」
Sは必死です。でも自分で交渉しても自信が有りません。
誰かに依頼したいのです。かっては弁護士も依頼しました。
しかし、サービサーが放棄した額を成功報酬と称して、
高い報酬を要求されて懲りています。和解額よりも弁護士費用の
ほうが高い、この経験から以後弁護士は頼む気はしません。

以前、アドバイスを受けたコンサルタントに依頼しました。
当時的確なアドバイスは随分役立ったものです。
しかしコンサルタントは首を横に振りました。
「Sさん。今はR社は本人以外の交渉には応じません。
ましてや私は何回も行って 居ますから、顔を知っている人と
合わないとは限りません。又ご自分でやリましょう。
応援します。しかし此の話は目茶難しいですよ。どこかで
嘘を言わないと退職金など全部取られてしまします。」
「その嘘が私には言えないです。」

SはR社に出す書類を税理士に依頼し、つい事の次第を
税理士にこぼしたのです。

「会長、此れは私に任せて頂けませんか。大丈夫です。
私何年か前にR社と同じようなことで交渉したことがあります、
随分安くして貰 いました。本件も500万以下で充分話が
付くのではないでしょうか。」

真実味のある税理士の言葉に全てを任せる覚悟をしたのです。

急に差押が有りました。給料と未だ決まって居ない退職金もです。
其れとどう知ったのか給料が振り込まれる銀行の預金です。
ともに1億3000万になるまで差押えるとなって居ます。

税理士は会長の給料や退職金予定など全て正直に喋り、
しかし老後のためのも必要だから此れで認めて欲しいと、
500万の線をだし、固執したらしいです。しかし、R社は
「余裕があるものは全て返済に回してください。」と言う方針です。
物別れにならない筈がありません。
気張った税理士の交渉が最悪の事態を迎えたのです。

正直に言わなくても差押さえは有ったかも知れません。
しかしSは生真面目な税理士に、全てを正直に言うことを
承認した自分に後悔して居ります。

Sは直ちに会社に辞表を出しました。
「体調が悪く任を全うできない」という理由です。
それに退職金も辞退しました。詐害行為になるか判りません。
しかしR社は次の行動を起しておりません。

少なくともSとR社は金輪際和解はないでしょう。
Sは永久にR社の請求から免れません。

今になって自分で交渉すべきだったと後悔しても始まりません。





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続けるぞ、粉飾決算

2008-02-23 | 事例
Dはもう粉飾決算は今年で打ち切りだとひそかに決意して居ります。

経審の870点を取るための粉飾を何年やって来たのでしょうか。
土木工事で入札ランクがSクラスの場合の合格点です。

在庫で何年も粉飾しました。仕掛品として、原価で粉飾すれば
目立つのが少なくかつ、着手から完成まで期間は長いですから
粉飾額も相当でき、突っ込まれても言い訳も出来ます。
2年ほど前からは、規模を満足させるために、有資格者の
名義借りをして居ります。Sクラスとなればある程度規模も
必要だからです。リストラで減った分を補うために名義を
借りています。

Dが此れほどまで入札ランクにこだわっているのは、
入札で食べていくには、やはり最上部のランクで無いと
駄目だと実感しているからです。談合が出来ず、皆無だった
受注も、今は何となく、以心伝心と云うか、阿吽の呼吸とで
も言うか、もうそろそろ順番が回って来そうだと思う頃、
仕事も回ってくるようになって居ます。

とは言っても仕事量は全然足りず、もうDには赤字を
補填する私財はありません。

其れよりDのやる気を欠いたのはサービサーの請求です。

何年も赤字、当然銀行返済も出来ません。
何時しか金利も払わず、不良債権になっていたのです。
放っておきました。サービサーと云うところに譲渡されました。
其れも放っておいたら裁判所から訴状が送られてきたのです。
結果として、相手は何でも差押える権利を持ったらしいです。

不動産もなければ、預金も平気です。
ただ最後に、サービサーの担当者が
「普通はしませんが、場合によれば売掛金も差押えますよ。」
と言ったのが非常に気になります。

Dの会社は、官庁を1箇所差押えられれば、全てを失います。
誠に簡単です。しかしDにとっては直ちに下請けの支払いが
出来なくなりますし、自分の生活もおぼつかなくなります。

Dの怖いのは売掛金だけです。相手は今までの書類からDの
売り先は掴んでいるでしょう。

以前和解を申し込んだことがあります。
1億2000万の残債に対して200万を提案しました。
サービサーは1200万を1歩も譲りません。一括が
無理ならば、毎月10万で払えないかと言います。
毎月の払いは1万でも無理だ。親戚も一括払いならば
貸してくれるが、毎月1万づつは貸してくれないと
答えたことがあります。

差押に怯えながらでは、仕事も取れなくなる。粉飾してまで
仕事を取る必要は無い。人も2名くらいにして、民需だけに
切り替えてやって行くしか無いなと、Dの決意です。
仲間内の業者が潰れたり手を引いて居ますから、無理しても
入札を続けて居れば、春が来るのにと思って居ますが、
其の前に売掛の差押が有ればどうしようもありません。

今度入札があります。普通ならば順番の筈です。
5000万の工事ですから是非取りたいですが、
取っても差押えが有れば下請けに言う言葉もありません。
この入札も降りて、もう入札行為は止めよう。
そうすれば経審の決算書だって考えなくても良いよ。
Dは腹を決めたのです。

サービサーから半年振りの電話がありました。
「どうですか。情勢は変わっておりませんか。」
「同じ、いや以前より悪くなって居ます。」
「当社に対する案はどうなりました。」
「以前私は200万と云いましたが其れすら払えません。」
「200万では有りませんよ。1200万です。」
この時Dは言いたいことを一気に言いました。
「唯でさえやっていけるか解からないのに、其の上お宅に、
全く不可能のことを責められては、もう何をしても無駄でしょう。
廃業を覚悟して居ます。会社は無論の事、私個人にも何も
有りません。が、お宅が必要と思うことは、何時でもやって
きてください。」

それでも担当者は1200万でないと、私の方は
譲歩できませんと云って電話を切ったのです。

しかし話は急転直下しました。
翌日サービサーの上司から電話があったのです。
昨日の部下の非礼を詫び、「事情はわかりました。
200万で和解案をお願いします。今月中にケリをつけましょう。」
と云うことです。

Dは今、非常にすっきりして居ります。
何か何時も頭にあった靄が取れた感じです。

其れと同時にファイトが沸いてきました。
「粉飾でも何でもしてSランクは守り抜くぞ。きっと春が来るさ。」

しかし今年のDの粉飾は特に難しそうです。

ですが本当にやる気を起したDに期待して居ります。





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守れるか この資産

2008-02-19 | 事例
SはR社の追及を受けています。
隠した財産が解かる事は万に一つも無いでしょうが、
現在の2000万の年収と眼の前の7000万の退職金、
此れをどうして逃げようか四苦八苦して居ます。

医療器具の製造販売1本でやってきたSは、
故郷では成功者の一人です。地元で発行している
経済誌の表紙の顔にもなった事があります。

しかしそんなSに知られざる傷が有りました。
Sは10年前に他に経営して居た小さな不動産会社を
自分で整理して居ます。其の会社は、更に10年前、
バブルで世間が狂っているときに、Sも本業の傍ら
自分も狂って作った不動産会社です。マンションの仕入・
販売の会社でした。そのために、債権者は銀行だけでした。
勿論不渡りも出して居らず、法的整理ではありませんから、
世間の噂すらなりませんでした。

今はR社を除いては全て片ついております。
一方では自分の体面を傷つけないように、一方では
少しでも資産を守るためには大変でした。知人の一人Gが
いろいろアドバイスしてくれたのが役立っています。

政府系の銀行が債権譲渡したR社には徹底的に
やられて居ます。自宅も任売しました。当時の
個人の預金も差し出しました。他のサービサーは
皆和解をしてくれましたが、R社だけは素知らぬ顔です。

大分差し出したから済んだと思っていたら、
4年前に急に預金を差押えられました。
当時差押は無いと言われた外国銀行です。其れも
身近な支店でなく少し離れた支店でしたが、
3000万やられました。何で解かったのか疑問です。
未だに、元金が1億5-6000万残って居る勘定です。

しかしそれ以後は梨の礫、Sは今度こそ放棄を
してくれただろうと思っていました。女の子が
Sの留守にR社から電話があったと告げた時は、
Sは血の気が下がるのを自分でも解かるくらいでした。

「もう、そろそろ決着をつけましょうや。生活を
犠牲にしてまで払ってくれとは言いません。
払えるだけ払って下さい。それで決着にしましょう。」
少し年配者です。結局はSの所得証明と現在の資産を明細、
其れと医療機器会社の決算書を見せて頂けませんかと
云う事で別れました。

もう76歳になるSは2年前から社長を倅に譲っています。
自分は会長になって居ますが今年の6月に引退することも
明言して居ます。ただそのために役員退職金も
7000万引き当ててあります。此れだけはどうしても守りたいです。

弁護士に相談するのは御免です。
今までの和解に、当初弁護士を依頼しましたが、
和解額も多いし、又その報酬もSが納得できるものでは
ありませんでした。今回も若し依頼をすれば、必ず正直に
全部を言って、退職金は全て払うことになるでしょう。
弁護士は御免です。

給料を下げよう。退職金は貰わないことにして、
一件落着してから貰おう。Sはこう考えて税理士に
自分のことでは無いような顔をして相談しました。
税理士は首を横に振ります。
「退職金は辞めた其の年に貰わないと、税法では
退職金として認められません。尚認められる計算額は、
年数のほかに退職時の報酬の額で計算しますから、
其れを低くすると甚だ不利になります。つまり、
嘘を付くようなことはしない方 が結局はお得です。
それに決算書の引当金もどう修正するのでしょうか。
普通の税理士はやりませんよ。」

知人のGだけには全てを打ち明けています。
Dは進言をします。
「R社に云えば必ず全て取れますよ。絶対に
云うべきではありません。そのくらいならば、
貰わない方がましです。あるいはほとぼりが
冷めてから貰いましょう。贈与税が掛かっても
全部取られるよりましです。其れまでに必要な
お金は仮払いをお願いしましょう。それに報酬も
今年になってから辞退したで通しましょうや。
問題になればなったでその時に考えましょう。」
しかしSには今回はGの言葉も危険の
ような気がして気乗りしません。

意外な展開となりました。
税理士につい打ち明けたのです。
「そんなことですか。是非私に任せてください。
私も以前顧問先が同じような問題で、R社と
交渉した経験があります。正直に言って腹を
割って頼めば必ず道が開けます。
費用だって殆ど要りません。」 
地獄に仏、Gは「腹芸なんてR社の場合ありません。
必ず全部取られます。」と反対しましたが結局は
税理士に依頼しました。

税理士は退職金のことなど全てを正直に
言って交渉を始めました。しかし直ぐに暗礁に
乗り上げてしまいました。少なくても、今から
退職までの給料の半分は払え、其れと退職金は
全額払ってもらわないと困りますというわけです。
税理士は仕方無いよと云うもののSにはどうしても
相槌が打てません。

以前債務名義は取られています。
ついに給料の差押になりました。退職金も付いて居ります。
税理士は引っ込み、又Sが対応しなければなりません。

医療機器会社は差押に対し、次の答弁をして居ます。
 Sには今年から給料を払わないことにして居ます。
 退職金は株主総会で決めますが、恐らく支払わないようになります。

Gの入れ知恵です。
しかし争いはこれからです。
R社がどの様な手段で来るか解かりません。

それにしてもSの今後、そろそろ安定させてやりたいものです。





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騙された 暗黙の了解

2008-02-16 | 事例
Jの顔色がさすがに変わりました。
同じ1番の抵当権者の信金と保証協会が競売を掛けて来て居ます。

今回の競売価格は2700万です。
もう今回で3回目、最初は6500万でした。2回目が7掛けの4500万、
今回は何故か6掛けの2700万です。此れならば売れる。
とJの直感です。しかし現金は揃いません。弁護士に何とか
この物件を守りたいと駆け込みました。暫く考えて居た弁護士は
「任せておけ」と胸を叩いて引き受けたのです。
丁度今から5年前の話です。

7軒の地主から借りた土地、其の上に立てた工場と自宅、
元は敷地面積500坪くらいの鉄骨3階でしたがその後建て
増し建て増しで敷地面積だけで800坪くらいあります。
自分の会社ばかりでなく、子会社を2社、10年以上前に
作ったときから、1室を賃貸して居ります。

高速が出来てから誰もこの土地を見向きもしません。
過ってはそれなりきの評価があったこの土地も今は
全く2足3文です。しかし30年以上此処で食品加工をして
居るJには何よりの掛替えの無い土地です。
競売で他人には渡せないと決意していたのです。

弁護士の動きは、Jにはよく解かりませんが、裁判所に
和解を申し立てたみたいです。
やがて次のような和解原案を見せてもらい、Jは了承しました。
 信金も保証協会も競売を取り下げる。
 信金と保証協会は、各々此れを1500万でJに売却する。
 其の支払いは5年間の分割とし、子会社が連帯保証をする。
 5年後は本抵当権は解除する。
 残債務については、当事者間で改めて協議をする。

恐らく今回も売れないと債権者は見ていたと思います。
売れる筈の無い物件です。だから簡単に弁護士の話に
乗ったのでしょう。毎月50万ならば家賃としても安い。
払えるとJは承諾を決意しました。

しかしJに気になったのは、最後の残債務協議の件です。
「大丈夫ですよ。その時になれば信金も保証協会も
請求なんか来ませんよ。信金も保証協会も債権は簡単に
放棄できないから一応こう書いて置くのです。金融業会の
通例ですよ。ほら多額のお金を借りたとき、5年毎、借用書を
書き換えるでしょう。毎月の返済は少なくて、最終回に莫大な
返済となって居ますね。しかし其の通りには実行しなく、
又5年返済にすると言うように黙っていても救済するのが
銀行ですよ。暗黙の了解と言ってもよいでしょう。」
弁護士は言います。

何となく腑に落ちませんが、NOといったところで他に
やりようはありません。裁判所の「正本である。」
と云う和解書を手にしたのです。

5年の歳月はあと2ヶ月です。
Jは協議するという文句が気になって居ます。一方では、
債権放棄と云う暗黙の了解を期待して居ります。
自分から先に話しに行くべきと判断してともに訪問しました。

担保価値は更に落ちて、近くに全く同じような不動産があり、
600万でも競落しなかった実績が最近あります。
Jはこの不動産も600万と自分で勝手に時価を
決めて交渉予定です。其れを又3年分割で払い、
それで全てを打ち切るように依頼する予定でした。

保証協会は言いました。
「今まで払って来ただけ払って貰わないと困ります。
物的担保はなくなったが人的 保証は残っていますから、
当協会はそれを追求させて頂きます。」
信金はもっと挑戦的です。
「勿論今まで以上に払って頂けなければ、当行は折角解除した
不動産を又差押するより他ありません。貴方がどこかに
売却するようなことがありましたら直ちに仮差しをさせて頂きます。」
両方とも協議する気持ちが全然ないみたいです。

一方、今まで、無剰余だからと黙っていた他の銀行が此れを知ると、
直ちに差押をしてくるでしょう。

Jは腹を決めています。
「信金も保証協会も出来ない場合は担保解除して貰い、
 誰かに名義を変えよう。詐害行為と云われたら時に争えばよい。
 其の前に何処かに差押をされたら其処と買戻し交渉しかない。
 ただ現金が揃わないし、価格も600万で承知とするか解からない。
 でもやるだけやって見るさ。」

暗黙のの了解、以心伝心などの言葉。
日本人の人を信頼する良い言葉と思います。
しかし、今は各々が自分に都合の良い方に考えています。

せめて裁判所の和解ぐらいは、こうした禍根を残さない和解を
する様に指導していただきたいと思っています。





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効果なき和解

2008-02-13 | 事例
和解で約束した期限がもう直ぐ来ます。
「5年経ったらもう1度話し合いしましょう。
決してお宅の悪いようにはしませんから。」
其の言葉を信じて、会長が反対するのを
押しのけて社長は和解をしたのです。

元は何年か前に、会長が信託銀行の管理する物件を
信託銀行の言葉を信じて、そこからの融資で投資をしたのです。
率の良い配当がある筈でした。が、バブルの破綻で銀行の
言葉は単にセールストークになってしまったのです。
会長は物件の値引きを要求し、其の為に返済をストップしました。
すると銀行は、自宅と会長名義の会社建物を仮差ししてきたのです。
当然直ちに争いとなりました。でも結果は、会長の全面敗訴でした。
仮差物件は差押に変わり、競売になると覚悟しましたが、銀行は
此処で返済条件を見直すからと、和解を申し入れてきたのです。

平成15年のことでした。

 自宅と会社建物を担保に入れる。
 1時金で800万を返済する。
 以後毎月20万づつ5年間支払う。
 5年後にこの案は見直す。
 本支払いについては社長も保証人となる。

此れが呑めない時は、担保は処分して、その後の債務は
サービサーに譲渡すると 云って居ました。

この時の債務は、元金が9000万、それに14.5%が
5-6年続いたためでしょうか延滞金が5000万ありました。
其れが和解での返済額は2000万だけです。
それで終わるとは云わないが、そんな雰囲気です。
勿論払っているうちは競売などありません。

5年後の話し合いが曲者です。この時に債務が
どうなるかが問題ですが、担当者ははっきり言いません。
そこで全てを水に流すとも云わないし、
全額払って貰うとも言いません。ようは此方の状態次第で
決めましょうと訳の解からない説明をするだけです。

結局若い社長の「大銀行だから悪い様にはしないでしょう。
其れを信じましょうや。5年後に半分でもなれば大儲けですよ。」
の一言で和解案を承諾しました。

銀行が和解をもちかけてきた真意、其れは仮差しの
不動産の時価にあったのです。社長も会長も身贔屓のためか、
両方とも相当な価値を見込んでいます。しかし銀行の見方は
両方合わせても、1500万が良いところではないかと見ていたのです。

会社建物の底地は借地です。30年以上過ぎた2階建てで、
且つ、2階は建設当時から音楽教室に貸しています。
家賃も上げる事は出来ず、今となっては破格の賃料です。
売るとなっても買い手が付くとは思いません。

自宅も会社まで1時間半の隣県に有ります。
40坪の広さですが、地目が何故か畑のままです。
時価は宅地であっても、1000万一寸と思います。
此れを処分し、最終の債権をサービサーに譲渡しても、
幾らにもなりません。しかしこの和解通りの処理をすれば、
5年の歳月はかかりますが、2000万は入り、しかも担保は
そのまま、其の上社長と云う保証人まで付きます。
真意はわかりませんが、此れが銀行が和解を持ち出した
第1理由ではなかったでしょうか。

其の5年が見えてきました。
息子の社長は当然担保はすんなり返していただいて、
いくらかのお金を払い全てを終わるつもりです。
「多くても1000万とは云わないだろう。」と期待と覚悟をして居ます。

銀行は当時の関係者は誰も居りません。
担当者の言葉はひとしお冷たく感じました。
「銀行と云う処は、貸したお金を安くする事は
出来ない処です。最低でも元金の返済をお願いします。
其の返済期間も、金融庁の監査で余り長くも出来ません。
長くても後10年が背一杯でしょう。其れが出来ない時は、
先ず担保を処分させて頂きます。任売で売れなければ競売
になります。残債務はサービサーに譲渡する事になるでしょう。」

何のことはない、5年前の和解をする前と同じ言葉です。
考えてみれば、この和解は単に問題の先送りだけで
何一つ自分のためにはなって居なかったのです。

ただ信託銀行は何も嘘は云っていません。
此方が勝手に解釈しただけです。
しかし何か騙された様な気分です。

最近サービサーの和解もこうした言い方の和解が有ります。
どんな細かいことでもきちんと決めておくべきでしょう。





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銀行からの損失補填書

2008-02-06 | 事例
平成の始めです。
Aは合併前の大手D都市銀行から融資を受けました。
銀行は渋るAに融資をし、Aは小さいながら、銀行の
紹介するマンションを1棟手にしたのです。
この時にAは担当者から書付を1通貰いました。
「若し貴君が此れにより損失を蒙るようならば、
 当行は全ての損失を補填します。」と書いてあります。
セールストークとしてはこんな文句は普通に有ったでしょうが
書付となると滅多にお目にかかれません。文章からサインまで
全て自筆、銀行名のところは真印かどうかわかりませんが
丸判が押してあり、担当者の印も有りました。

平成15年、Aは資金に行き詰りました。賃貸物件も
もっと良くて易くなって居ます。何より都心まで、乗り換え3回、
1時間半です。絶えず空き室が出て居るようになったのです。

暫くはリスケで乗り切りましたが、やがて、
此れでは返済できないと、マンションを売って弁済を考えました。
マンション価格は買い時の何割となって居ます。大きく残債が
出ますが、此れは当初の約束通り銀行が負担してくれるでしょう。
Aは銀行にマンションの売却と、残額の免除を申し出ました。

ところが銀行は承知をしません。
マンションを売却するのは賛成ですが残債務の免除は
出来る話では有りません。しかし書付を見て驚きました。
書いた本人は近くの支店の部長をして居ります。
その人の字に間違いありません。

銀行は態度を柔軟にさせながらAを責めます。
Aは、マンションは処分しました。しかし銀行は融資の時、
元々Aが持っていたもう一つの物件を担保にして居ます。
其れは当然処分すべきはないかとAを揺さぶります。

Aは此処で金融庁に相談に行ったのです。
最初、訳の解からない者がダダをこねていると
思った金融庁の係官も書付を見て驚きました。銀行員が
書く筈の無い書類です。しかし一見して本物と理解しました。

「Aさん。こうまで書いて約束をしましたから、D銀行も
 本気でしょう。しかし私共が中に立つことは出来ませんから、
 両者で良く話し合ってください。私のほうも銀行には云って
 おきます。しかしAさん。何と云ってもAさん。貴方も損失は
 全て押し付けるという考えではなく、自分の言動に対する
 責任は取って下さい。」
この件は何時でも相談に載ることを約束してくれました。

Aは担保だった元々の自分の物件も手放すことにしました。
後自宅がありますがこれは地元信金の担保になって居ます。
その時の残債務は1億6千万。Aはこの放棄を今は合併した
M銀行に詰め寄りました。

M銀行も金融庁が全てを知っていると解かると、
その後は腫れ物に触るみたいです。
結局、担保を処分すると、
「銀行と云うところは残債務を放棄出来ないところです。
 任意に処分が出来るサービサーにこの債権を譲渡します。
 サービサーには良く言っておきますから大丈夫です。
 そしてこれ以上債権を他のサービサーに譲渡する事はありません。」
何がなんだか解からないAを口説いて債権をRサービサーに
譲渡したのです。平成18年でした。

サービサーから呼び出しが有ったとき、Aは全てを話しました。
「だから私は御社から正式に残債務が0になる和解書を
いただけると思っています。」
Rサービサーは驚きました。そんな話、M銀行から何も
聞いておりません。ましてや金融庁まで絡む話です。
こんなややこしい物件は他に譲渡する事だと決めて、
もう1度会社に呼びました。

しかしAは納得しません。M銀行は此処から他に
譲らない約束をしました。と云ってその場でM銀行に
電話をしたのです。
「他に譲るくらいならば、私をM銀行に戻してください。」
Aは食い下がりますがバルクで買った商品を如何に
Lサービサーとしても、返品できません。

後はAの要請で、月に一回位面談はしましたが、
進展が無いままに1年近く過ぎています。

こんなAに進言した人が居ます。
「Aさん。貴方直ぐに書付や金融庁の話を振り回していませんか。
 以後其れを言うのはやめましょう。のみならず、和解成立の時は
 書付を全部お返しすると言いなさいよ。其れと貴方は生真面目な
 顔をしていっていると思うが砕けた調子で笑みを持って話し合い
 ましょう。最後に相手にはなを持たせる意味で少しと言っても
 100万単位だが其れを出して和解を申し込めば必ず成功しますよ。」

其れからは早かったです。結局1時金を200万出して和解です。
ひょっとすると「1億以上払いなさい。」と云われるかもと
内心びくびくだったAもほっとしたものです。

それにしても1通の和解書。交渉過程では効果が
あったように思われました。しかし最終の結果から見ると、
何も無くてもこの結末はついたかも知れません。





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助かった住まい

2008-02-02 | 事例
銀行の担当者はリスケ延長の書類にYの保証人の
捺印を貰うのが嫌で仕方有りません。
老人ホームに入っている92才のおばばです。
面会しても良く聞こえないらしくあらぬことばかり口走って居ます。

抱えるように自筆で署名させると担当者はぐったりします。
もう2年此れをやりました。未だ続きそうです。

おばばの子供は二人、倅と其の姉です。
姉は生まれつき軽く脳を患って居ますが、
今は生活補助を受けながら暮らしております。
倅は早くから町で衣料の卸と不動産賃貸を営んで居ました。
おばばは自宅があるころ、倅の銀行借入の全ての保証人に
なっていたのです。

特に不動産をやっていたために銀行借入はたっぷりありました。
書けぬ手で保証の切り替え毎に署名をする姿は、倅にも
耐えがたかったのです。ましてや担当者はもっと嫌だったでしょう。
どうせ資産があるわけでなし、「保証人を解いて貰えないか。」
と担当者に持ち掛けたのです。

担当者は喜びました。いいチャンスとばかりに直ちに本部に
申請したのです。幾らも日を経ず本部から指示がありました。
「念の為におばばの固定資産税の納付証明を取ってください。」
担当者は直ちに倅に伝えました。

「自宅は売却して御行に弁済しました。もう何も
無いから取れませんよ。」
「いや、何も無ければ無いでそれなりきの証明が出ます。」
担当と倅の会話です。

自宅を売却した後、おばばの頭にあったのは娘のことだけです。
将来自分が居なくなったらどうなるか気がかりです。
しかし住むところが有って、生活補助を受けれれば何
とかなるのではないかと云うのがおばばの考えです。

生活補助も貰えそうです。
おばばは今までの蓄えを全部投げ出して、娘に名前で
小さい住まいを手にしたのです。
ところが此れが問題でした。娘が住居を持っていると
生活補助が駄目になると云うのです。
そこでおばばは仕方なく自分の名義にしました。
それがそのまま残っているのです。
おばばは保証人であり、1軒の無担保の住居を持っているのです。
固定資産税の明細を取れば一目して解かります。

さあ、倅は困りました。そんな証明書を出すことは出来ません。
この話、取り下げようと思っても既に本部まで話は通じています。
特に担当者を誤魔化すのが一番困ります。担当者は保証人を
解くことを願っている第一人者ですから。其の担当者は本部に
提出しないとならないからと毎日のように催促です。

改めて、この住宅について考えると注意すべきことが有ります。
おばばはもう長い事は有りません。
その時は姉の名義にすると生活保護はなくなります。
月3万の年金では生活できません。
倅の名義にして、万一銀行に判れば唯では済みません。
町の在、小さな家ですから価値は幾らもしないでしょうが、
当事者にとっては無くては困るものです。
幸いにして銀行はこの所在を知りません。
しかしこれは未だ打つ手が幾らもあります。
現在のことで銀行が不審に思わず又今まで通りのおばばの
保証人を認めれば、とりあえず一段落します。

息子は腹を固めました。
下手な嘘を言っても直ぐばれるだろう。正攻法で行こう。
そして担当者におばばの保証人解除の件の取下げを話したのです。
勿論姉の住所は教えません。

担当者は良い人でした。
「本部には、おばばは今倅の為に出来ることといえば、
苦労して書類に署名することだ。其れがなくなっては、
倅から見捨てられるかも知れないと、保証人の解任に
反対しているらしいです。と説明して了解を取っておいたよ。
今まで通り続けましょう。しかしサインさせるのは嫌だね。」

業績も下げ止まりのような気がして居ます。
これから明るい話も有りそうな気がします。





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