「何だって、2900万? 駄目だ。」
彼は顔色を変えました。
工場が競売にかかって居ます。其の価格が出たのです。
基準価格は2900万でした。
ややこしい不動産です。
何しろ土地は7人の地主から借りて居ます。
其の上の継ぎ足しながら敷地面積600坪、2階が250坪、
床面積計850坪の建物が我が工場です。
片隅に本社が有り、更に1画が彼の自宅です。
2筆に分かれて居り、信金と保証協会がほぼ均等の半分ずつ、
合わせて3億の第一抵当をつけて居ます。
次に、国税が1億2000万の差押をして居ります。
其の後に公庫の2番があり、続いてリース会社が抵当をつけて居ります。
いずれ無剰余ですから、諦めているのでしょうか、何も云って来ません。
ただし少しでも配当が有りそうと解かれば、何処も直ちに動き出します。
1年半前に信金と保証協会が一緒で競売をしてきました。
その時も覚悟はしたのですが、基準価格は7500万でした。
「幾らなんでも高い。恐らく売れないよ。」
其の通りでした。
競売は続行とならず、一旦取り下げて1年半後に又改めて競売が有ったのです。
彼は自分でこの不動産の価値を5000万と踏んでいました。
5000万以上ならば、競売でも売れないと見ていたのです。
5000万をきれば、幾ら田舎でも売れるだろう。
しかし裁判所も7500万の課活をつけたばかり、
直ぐに5000万を切っては来ないだろうと勝手な読みをして
安心していたのです。
それが事も有ろうが2900万です。
現金をぶっつけて買戻し、国税の差押えから、公庫の担保など、
全てをきれいにしたいのです。
しかし、そんな纏まったお金は有りません。
そんな絶望している彼に知恵をつけた人が居りました。
競売に慣れた人でした。
「あの物件は3000万でも簡単には売れないよ。地主9人もの借地だし、
建物が古くて大きすぎるよ。今頃こんなところに工場も出来ないし、
倉庫では便が悪すぎる。使い道ない建物ですよ。
買い戻すにはお金が無いでしょう。しかしそれでもね。
思い切って3000万で買戻しを交渉してご覧。ただし5年の均等分割でね。
払い終わったら担保を解除してもらうのさ。
今商売を続けている関連会社を連帯保証にして、できるだけ、
ここの名義で払うようにすればよいよ。
その理由はわかる時もくるさ。」
そんな虫のよい話が通るものかと思いましたが、背は腹に変えれず当たりました。
すんなり通ったのです。
信金もこの工場に勤めているパートの事など考えて、此方を選択したのです。
「良かった。これで5年間は安泰だ。5年経てば俺のものになる。
その時までには、国税や他の抵当権者も何とかなるだろう。」
5年経ちました。
担保解除されます。
信金も保証協会も「解除します。登記は私のほうでやっても良いです。」と親切です。
しかし、何と成ると思って居た業績は更に下降していました。
担保が無担保に成ったと解かれば、直ちにアクションをおこしてくることは、
解かり切って居ます。
国税だけを月20万で押えて居ますが、公庫も結構うるさいです。
このときに又あの人を思い出しました。
「保証協会は代位弁済の時に、担保が同地位で抵当権の譲渡を受けて居ますね。
それと全く同じ事が抵当権1位で出来れば、誰も手が出ないわけです。
私は1度、国金と云った頃やったことが有ります。説得は、相当難しいと
思いますが不可能ではないと思います。
抵当権を1位のまま、関連会社に譲渡する交渉をしましょう。」
前回の3000万の支払いに、2000万は関連会社の名前で振り込んで居ますね。
今回500万で話がついたら、これも全て関連会社から借りて払うことにするのです。
前回と今回分あわせて200万を1位で法定代位して貰えば良いです。
何か難しそうな話ですが、漸く理解できました。
確かにこの通り実行するとどんな債権者でも手が出ません。
この話は難航しました。
しかし単に担保の法定代位だけで、残債はそのまま残すという事で漸く纏まりました。
抵当権の無いサービサーなど平気と思ったからです。
「月14万3年間払うと代位する。」
はっきり謳った約定書、後1年です。
彼は大きくため息をつきました。
業績悪化で其の14万が払えず、支払い遅延の限度、3ヶ月目が今月来ます。
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