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<経産大臣指定伝統的工芸品> 愛知 豊橋筆

2021-05-23 06:47:12 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「豊橋筆」

 Description / 特徴・産地

 豊橋筆とは?
 豊橋筆(とよはしふで)は、愛知県豊橋市とその周辺で製造されている筆です。高級で高品質な書道用の筆として多くの書道家が愛用していますが、用途はそれだけにとどまりません。日本画、化粧品用の筆のほか、工芸品としても使われており、その種類は数百にものぼるといいます。豊橋筆の高級筆としての全国シェアは約70%で、年間の製造本数は180万本です。これは、広島県熊野町の熊野筆に次いで、全国でも二位の生産量になります。
 豊橋筆の特徴は、「練りまぜ(ねりまぜ)」という技法によって生まれる、墨になじみやすい、滑らかな書き味です。豊橋筆の穂先には、タヌキやイタチなどの獣毛が使用されています。この穂の太さや長さ、材料になる獣毛の硬さや弾力の違いなどを使い分け、水を用いて混ぜ合わせる(練りまぜる)ことによって生まれるのが、墨になじみやすい性質です。この特徴のおかげで筆の書き味が安定するため、豊橋筆は筆の専門家からも高い評価を得ています。

 History / 歴史
 1804年(文化元年)に当時の吉田藩主が京都の職人を、藩が抱える御用筆匠(ごようふでしょう)に迎え入れたことがきっかけで、この地方での筆づくりが始まります。御用筆匠とは、藩のために筆を作る職人のことです。当時、財政難にあった吉田藩では、下級武士が副業として筆を製造していました。豊橋は山間部にあるため、材料になるタヌキやイタチの獣毛が比較的手に入りやすかったことに加え、東海道五十三次の宿場町であったことから、豊橋筆は全国へと広まっていきます。その後、明治の初期になると、芳賀次郎吉が水筆(現在の毛筆)の製法を広めました。この製法は、以前からあった芯巻筆(しんまきふで)を改良したもので、現在製造されている毛筆と同じ製法です。この水筆に、弟子の佐野重作によって改良が加えられ、現在の豊橋筆の基礎が築かれました。戦後のベビーブームが最盛期となり、豊橋筆は全国に広まります。その後、1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品として認定されました。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/toyohashifude/ より

 描く人の個性ここにあり。墨で極めるオリジナリティを出す豊橋筆
 墨をよく吸い、墨はけが遅く、墨になじむ。すべるような書き味と多くの書家から絶賛される豊橋筆。高級筆の全国シェアの8割近くを占めるといわれる豊橋筆は、一本一本熟練の職人の完全なる手作業によって作られる。お客さんのどんな注文にもこたえられるという豊橋筆の、筆作り50年のベテラン榊原忍さんにお話を伺った。

 
 まるで田舎の動物園のよう
 「ちょっと小さい田舎の動物園くらいかねえ。」と、榊原さん。もちろん、実際に動物を飼っているのではないが、榊原さんの作業場に常備してある動物の毛(原毛という)は、山羊、馬、ウサギ、狸にイタチにムササビ、ムジナのなかま、白鳥まで10種類は下らない。江戸、明治の昔は近くの裏山でいくらでも捕れたこれらも(注:山羊だけは捕れなかった。日本にもともといなかったので。)最近は中国からの輸入が70%を占める。欲しいときに入ってくるとは限らないので、よいものが手に入る時にたくさん仕入れておくのだそうだ。

 筆のバリエーションは無限大
 筆全体のシェアは25パーセントだが、高級筆に限っては全国シェアの70~80パーセントを占めるといわれる豊橋筆の顧客にはプロの書道家も多い。榊原さんのところでも、東京の書道専門店に納品しているが、「もっとやわらかくてでも、しっかりこしのあるものを」とか「もっと毛先がかすれる墨含みの少ないものを」など、様々なオーダーが店を通して届くという。榊原さんはその顧客の注文に合わせて材料を吟味し、オリジナルの筆を作っていく。時には原毛の束のなかから選びだした数本ずつを集めていくため、一年以上待ってもらうこともあるという。気長な話である。「筆の種類?数えられませんよ。無限です。だから同時にいつでも、どんな注文にも答えられる技術を持っていなければならないんです。」水鳥の羽やい草の束で作ることもあるという。


 豊橋の筆は一から十までひとりの職人の手仕事
 豊橋筆の作業工程は細かくわけると40にもなるという。竹の軸を切る以外はすべて細かい手仕事だ。その手仕事を一から十までひとりの職人が行う。その点が、他産地の筆とは違う。他産地では、パートを雇って分業体制にしているところもあるが、それではトータルな品質管理はできないという。手元の品質基準になる筆をもとに常に高品質の筆を安定供給するのが豊橋の筆職人である。


 使ってみなければわからないのが筆
 榊原さんが何度も語られた言葉に、「筆は使ってはじめてわかるもの」というものがあった。筆は試しがきかない。お金を払って墨を含ませて使ってみてはじめて、その筆が良い物かどうかがわかるのであって、返品も交換もきかない。だから、いいものを作らなければならない。常にいいものをつくらなければならないと榊原さんは言う。良い筆とはその筆を使う人それぞれによって変わってくるが、使うその人にとっての良い筆を、という榊原さんの姿勢に妥協はない。

 書と水墨画で使う筆
 榊原さんから、ちょっとお得な話を伺った。最近静かなブームになっている水墨画だが、ふつう水墨画は水墨画用の筆で描く。水墨画用の筆の方が、書の筆よりも少し短いのだが、「古くなった書用の筆の先をちょっと切ればいいんです。筆は一本一本違うと言ってきたけれども、まあ、いとこ同士のようなもの。そうやって気楽に楽しんでもらえればいいんです。」書と水墨画、両方を趣味に持つ人は多いという。
 「書が少し上達して飽きてきたら水墨画を、水墨画が少し上達して飽きてきたらまた書をやればいい。今、私が考えていることは子供たちにもっと書を楽しんでもらいたいということなんです。そのためには指導者が必要。今の若い先生は書になじみがないから、退職して地域にいる元先生に活躍してもらったらいいんじゃないかとか、私たちもいろいろ作戦を練っているんですよ。」
 息子さんたち2人も筆職人という榊原さんならではのアイデアはまだまだ出てきそうである。


 職人プロフィール

 榊原忍 (さかきばらしのぶ)

 1937年(昭和12年)生まれ。中学卒業後、16歳で親方に弟子入りして以来、50年近くこの道ひとすじ。今では息子さん二人ともが筆職人。


 こぼれ話

 意外に手軽~水墨画

 水墨画が静かなブームになっていると聞いて、名古屋市内のカルチャーセンターを訪ねました。この日やっていたのは武井泰道(むい・たいどう)先生の「はじめての墨彩画」教室。お手本を見ながら描いた絵に絵の具で薄く色づけします。新学期で新しい生徒さんも増えたということで、18人が今日の課題の満開の桜と三重の塔に挑戦していました。武井先生によると、お手本を見ながら(時にはお手本の上に紙をのせて透かして写し取っていました)描いていくのは構図の勉強に大変いいとのことです。お手本があるので上手に描けるし、一時間ほどで一枚仕上げられる手軽さも魅力で、初心者にはもってこい。参加していた70歳の女性は「家に持ってかえってすぐ飾れるのが気に入っています。家族にもほめてもらえます。」と話していました。

*https://kougeihin.jp/craft/1002/ より


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