「鯉のうま煮」
主な伝承地域 置賜地域、米沢市
主な使用食材 コイ、醤油、みりん、砂糖
歴史・由来・関連行事
「鯉のうま煮」は、コイを輪切りにし、砂糖・醤油・酒で煮た郷土料理。コイはかつて内陸農村部で貴重なタンパク源として食べられていた食材。1802年、米沢藩9代目藩主・上杉鷹山公が、内陸で水産資源が乏しい米沢の地で滋養のある食材を確保するために、コイの養殖を進めるように提案したことがはじまりとされている。家の排水口近くに池(せせなと呼びコイを飼う場所とした)をつくらせ、流れてくる米のとぎ汁、残飯やまゆみ(蚕のさなぎ)をえさとしてコイを育てた。
コイは高級品だったため、庶民はもっぱらハレの日にコイ料理を食べるのが一般的だった。コイの養殖は、置賜地域を中心に盛んになり、大正から昭和にかけて発達した。当地のコイの養殖方法は、きれいな湧き水を用いたり、地下水で畜養することで泥を吐かせるなどの方法が取られた。
米沢市周辺で養殖されたコイは、厳しい冬の寒さによって身も引き締まっていて質が良いといわれ、「米沢鯉」というブランド名で、米沢牛、館山りんごと並ぶ地域の名産品となっている。しかし、近年は生産者が減少傾向にあるという。
「鯉のうま煮」がよく食べられるようになったのは、砂糖が入手しやすくなった日露戦争後と伝わる。ほか、味噌で煮こんだ「鯉こく」や切り身を冷水にくぐらせた「鯉のあらい」にしても食べられている。
食習の機会や時季
現代では、主に年輩の方が食べるイメージがあるが、山形県では、正月やお盆、結婚式などの祝いの席に並ぶ一品として伝えられている。
コイは「来い、こい」と迎え入れられる喜びを意味しており、滝のぼりに代表されるように上昇を意味することなどから縁起の良い食材とされている。新鮮な海の幸が得やすい庄内地域よりは内陸部で食べられている傾向がある。
かつては「鯉のうま煮」を手づくりをする家庭も多かったが、近年では手軽にスーパーマーケットなどで買う人も多い。
飲食方法
砂糖、酒、醤油などで甘辛く煮て食べる。鯉は新鮮なうちに料理するのが原則。胆のうをのぞいたすべての部分が食べられる。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
一般家庭でつくられることは少なくなったが、既製品をスーパーマーケットや土産店などで気軽に購入することができる。たくさんの人が集まる宴会などにも提供されている。また、学校給食の郷土料理メニューとして提供している地域もある。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/koinomani_yamagata.html より
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