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<経産大臣指定伝統的工芸品> 東京 江戸からかみ

2021-03-04 07:25:17 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「江戸からかみ」

 江戸からかみの歴史
 「江戸からかみ」は和紙に様々な装飾を施して作られた工芸品です。歴史は古く平安時代まで遡ります。「からかみ」は唐紙とも書きますが、その字の如く中国から伝来した模様のある紋唐紙(もんからかみ)『北宋の彩牋(ほくそうのさいせん)』をお手本にして、平安時代に早くも国産化したものです。
 からかみの加飾のルーツには2系統あり、ひとつは仏教の経典を装飾した、奈良や平安時代の装飾経の金銀箔砂子を中心とする加飾技法です。その頂点は国宝平家納経といわれます。
 もうひとつは、やまとうたの詠草料紙(えいそうりょうし)を装飾する、木版からかみを中心とする料紙装飾の世界です。その最高峰が国宝本願寺本三十六人歌集といわれます。経典とやまとうたの詠草料紙を装飾した技法が、のちに書院造りや数奇屋造りの襖(ふすま)や壁面を飾り、室内空間を広々と豊かに彩る大画面に展開してきました。400年の歴史をもつ「江戸からかみ」の技法の奥にはさらに1000年余の和紙の加飾の歴史が重ねられています。
 

 慶長8年(1603)、徳川家康が江戸に開いた、いわゆる大江戸八百八町は約270年にわたり繁栄を続け、江戸城や諸大名の屋敷、神社や仏閣、町人や職人の住居や長屋、各種の店屋の襖に貼られる、からかみの需要は増大しました。からかみの発生の地、京都の唐紙師(からかみし)の流れを汲む職人たちが江戸に移住して、この需要増に応えました。

 「江戸からかみ」とは、江戸の地元で出来るからかみのことで、はじめは「地唐紙(じからかみ)」とよばれていましたが幕末の頃になると、「江戸からかみ」の呼称にかわってきました。
 「江戸からかみ」の加飾(かしょく)の技法の中心は、唐紙師(からかみし)の技術の展開であり、和紙に版木の文様を写しとる、「木版手摺り」です。この唐紙師の技法が、狭義の江戸からかみでありますが、江戸は巨大な人口をかかえるとともに火災が多かったので、からかみの需要は増大し、木版だけでなく、かさばらない伊勢型紙(渋型紙)を用いる襖(ふすま)の更紗師(さらさし)も増えました。
 さらに金銀箔(きんぎんはく)を平押し、または砂子(すなご)にして和紙に蒔(ま)く砂子師(すなごし)も、からかみの装飾に加わってきます。
 これら唐紙師・更紗師・砂子師の三つの加飾技法をもって、「江戸からかみ」と称するようになりました。三技法は、それぞれ専門職化し、必要に応じて互いに協力し、お互い技を競いながら発達しました。

 

 江戸開府から90年ほどたった元禄2年(1689)には、早くも江戸の唐紙師は、北の浅草から南の新橋までの地域に13軒の名匠がいたことが記録に残されています。江戸の唐紙師が用いる文様の木版の種類は『享保千型(きょうほうせんがた)』(享保年間1716~1736)とよぶ言葉が今も業界に伝わっており、数千種、或いは万余に及ぶ多彩な「江戸からかみ」の文様の世界が展開されました。

 当時のからかみはヨーロッパの美術館や博物館に保存されております。中でも、幕末の駐日英国公使の「オルコック・コレクション」の「からかみ」などが代表例です。また「シーボルト・コレクション」や「パークス・コレクション」なども当時の貴重な資料です。

    
 大正12年(1923)、突如発生した関東大震災により、江戸時代から東京下町に伝わった小判の「江戸からかみ」の版木、『享保千型』とよばれる万余の版木は灰燼に帰しました。
 昭和5年(1930)アトリエ社発行の『工芸美術を語る』には「京都から興ったからかみは、文化文政には最盛期に達し、大正の震災では東京で四、五千枚の版木が焼尽された」とあります。
 震災後、再び復刻したり、新刻した何百にのぼる版木も、昭和20年(1945)の東京下町大空襲で、またも焼尽してしまいました。伊勢型紙(渋型紙)は、井戸や土中に埋め、数百枚の型紙が、戦災をのがれて今に伝わりました。

 震災後と終戦後に復刻された版木や伊勢型紙(渋型紙)は、明治時代末の手漉きのふすま紙の大判化(巾3尺×丈6尺:約900×1800mm)に対応して、版と型の大きさも、大判(巾3尺×丈1尺2寸~2尺:約900×360~600mm)になりました。

  
 大正末~昭和戦前期の版木・伊勢型紙(渋型紙)の大判化によって、従来の小判(巾1尺4寸8分~1尺5寸5分×丈9寸5分:約450~470mm×290mm)の版木や型紙の意匠・文様に較べ、より大きな構図の、絵画的でさらにのびやかさが強調された文様が多く考案されました。「蔦」「玉萩」「秋草」など草花のおおらかな絵柄の文様が代表的です。

    
 平成3年(1991)に、「江戸からかみ」の復興と技術の継承と永続を願い、「江戸からかみ」の職人衆10軒の加飾の職人工房と、版元和紙問屋東京松屋は、「江戸からかみ振興会」のちの「江戸からかみ協同組合」を結成し、団体として行政へのはたらきかけに取り組みました。平成4年(1992)、東京都の伝統工芸品の指定、平成11年(1999)に、経済産業大臣より国の伝統的工芸品の指定を受け、平成19年(2007)には、特許庁に出願した地域団体商標(地域ブランド)を「江戸からかみ」は取得いたしました(商標登録第5100407号)。

*http://www.tokyomatsuya.co.jp/knowledge/edokarakami.html より

*https://kougeihin.jp/craft/1403/ より

 江戸唐紙師、これにあり
 光を浴びて、あるときはそこはかとなく、あるときは艶やかにきらめく雲母。朽木雲、光琳波、撫子、青海波、五七の桐、百花……。花鳥風月の風情を愛でる日本ならではの文様が、あるいは雅やかな金銀砂子が、和紙の上に浮かび上がる。からかみを眺めていると、いつまでも飽くことがない。からかみの源流は、平安時代にまでさかのぼるという。当時の中国(唐)から渡来した「紋唐紙」を和紙に模造し、和歌を筆写する詠草料紙として貴族の間で好んで使われていた。中世以降は屏風や襖などにもはられるようになり、徳川が政権を握って江戸の町が繁栄すると、その技法は東へと伝わっていく。
 現在でも、京都と東京に数軒の「唐紙師」が残っている。東京のほうは震災やら空襲やらで江戸の版木は焼失してしまったが、それでもたくましく再興の道をたどっているのだ。いなせな江戸っ子が喜びそうな雪見桜の日、天神さまからほど近い湯島に小泉さん宅(小泉襖紙加工所)を訪ねた。

 冬の時代を乗り越えて……
 小泉家の先祖である小泉七五郎が唐七を創業したのは、1800年代後半、幕末の頃。そこから数えて4代目の哲さんは、19の年に先代の父親が亡くなって家業を継いだ。「門前の小僧」よろしく、技術は自然と身についていたという。哲さんの息子で5代目の幸雄さんは、すでに小学生の頃からセンチやミリより尺寸単位のほうがなじみ深かった、と笑う。
 「20歳ぐらいから襖の仕事はしていましたが、本格的に江戸からかみの技法を覚えようと思い立ったのは、元号が昭和から平成に代わる頃。見よう見まね、40の手習いですよ」
 高度経済成長期以来、建築業界ではローコストで量産のきく新建材がもてはやされ、大量に市場へ出回るようになった。繊細な美的感覚にあふれてはいても量がつくれずコストも高い江戸からかみは、需要がなくなり冬の時代を迎えたこともある。
 「技はもっているのにそれを生かす場がない……こんなつらいことはないよ。経済的には、襖の商売で採算がとれてはいたけれどもね」と、往時を振り返る哲さん。“仕事”は楽しいけれど“商売”は一つも楽しくない――幸雄さんも口をそろえた。


 未来の6代目のためにできること
 幸雄さんには、4人の息子がいる。そのうちの2人(雅行さんと哲推さん)が父と祖父の仕事に興味をもち、後を継ぐべく修行中だ。「今の時代、“盗め”と突き放すだけじゃなく、ある程度“教える”ことも必要。その後は、壁にぶち当たりながらも自分で試行錯誤していってほしいね」と、幸雄さんは目を細める。まだ20代前半、未来の6代目たちは「おじいちゃんの仕事はすごいよ。どうせやるなら国宝級を目指したい」と意気盛ん。
 「じつはね、行く末をそう悲観してはいないんです。どこのうちにも、子供がいれば必ずお雛様や兜はあるでしょう。ライフスタイルが洋風になったとはいえ、一戸建もマンションも和室がなくなることはないしね。息子たちのためにできることは、私の代で江戸からかみを残していく環境の下地を作ることかな」


 「雲母の調子は、その日の天気や湿度によって変わってくるんだ。もちろん、こっちの気分によってもね」

 古くて新しい江戸からかみの伝統美
 大量生産・大量消費を前提としていた世の中の流れは、ここへ来て少しずつ変わり始めている。建築業界にもその波は及び、最近では健康や環境への関心の高まりとともに伝統回帰の指向性も加わり、インテリアとしての和紙が再び見直されているのだ。
 「建築家や表具師にも、からかみは京都にしかないと思っている人が多いんです。西に勝るとも劣らないからかみが東にもあること、そして襖だけではなく壁紙としても使えることを、どんどん世間にアピールしていきたいですね」
時は移ろい、暮らし向きは変わろうとも、本物の伝統美はちっとも古さを感じさせない。雲母のほのかなきらめきは、見る者にそう語りかけている。

*https://kougeihin.jp/craft/1403/ より

 


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