「窪田酒造」
良水と水運の便を求めて利根運河沿いへ
窪田酒造(くぼたしゅぞう)は千葉県最北の地・野田市の利根運河沿いに蔵を構える酒蔵。創業は明治5年で野田市唯一の老舗酒蔵です。2023年時の当主は五代目。
滋賀県出身の初代・宗吉が、一度茨城県に出て酒蔵をつくりましたが、明治7年に酒造りに欠かすことができない豊富な良水と運河による水運の便を求めて千葉県の野田市へ。さらにその後、利根運河の完成をうけ、明治28年から29年にかけて、現在の運河沿いへと酒蔵を移しました。隣には、現社長の祖父の代で分社化されたという醤油と味噌の工房もあります。原材料は異なるものの、発酵食品である味噌や醤油は、酒づくりとほぼ同じ工程。分業となった当初もしばらくは、酒づくりが終われば、味噌、醤油というように、同じ職人たちがつくっていたと考えられています。
その後、規模が大きくなったことから、完全なる分業へと形が変わっていきましたが、現在も窪田酒造では酒のほか、昔ながらの製法でみりんも製造しています。国産米を贅沢に使用した本みりんは、甘みと風味がとても良いと評判です。酒もみりんも料理の味を引き立たせると大変重宝されています。
世代交代で蔵人が減少。現在は「量より質」の酒づくりに
当初は新潟から蔵人を呼び、一時は新潟蔵人が20人いた時代も。
しかし世代交代で人が集まらなくなったことから岩手県の蔵人に切り替え、約40年続けてきました。
その後、岩手の蔵人たちにも世代交代が起きて職人が減少、自社メンバーでの製造に切り替えて現在に至ります。
酒づくりも、大量につくることを目指した時期がありましたが「今は量より質」。
精米歩合70%よりも65%、65%よりも60%と、より磨いた米を使用し、可能な限り雑味のもととなる糠を除去。
飲む人の要望に合わせたものとつくり手がつくりたいもの、その両方のバランスを見ながら、純度の高いきれいな酒づくりを心掛けています。
同じ蔵でもタンクごとに味が変わる面白さ
酒の味は、蔵元によって異なるだけでなく、同じ米を使い、同じように仕込みをしても変わると言われています。
さらに同じ蔵の中でさえ、タンクごとに違うとも。
「そこが酒づくりの面白さ」と自らも杜氏を務める窪田社長は話します。
「おいしい米を使えばおいしい酒ができると言われますが、そのおいしい米というのが難しい」。
例えば一般的に、食味がもちもちして、旨味成分が豊富な米はおいしいというイメージですが、酒づくりにはやや不向き。
もちもちしている分、粘りが出て、麹を作るときに米どうしがついてしまい、だんごになってしまう上、旨味成分が多いとくどくなり、さらっと飲めない酒になってしまいます。
「単独で飲むか食べ物と一緒に飲む食中酒かでも、考え方が変わる。酒づくりは本当に奥深くて面白いと思いますね」。
窪田酒造の酒造りの特徴・こだわり
窪田酒造「勝鹿」
水:窪田酒造がある千葉県の野田市は、自然と水源に恵まれた醤油で有名な「醸造の街」。利根川、江戸川及び利根運河の河川に囲まれ、その水運を いかして古くから醤油醸造のまちとして発展してきました。現在でも大手しょうゆメーカーの「キッコーマン」の工場がある野田市。そうした豊富な水資源に囲まれ窪田酒造も創業より営まれてきました。
米:千葉県を中心に厳選した酒米を使用し、伝統を重んじる丁寧な酒造りで多くのファンを魅了しています。
製法:醸造好適米山田錦使用の大吟醸や、米の味と旨味がマッチした純米酒が人気。味はピリっと辛口なのが特徴です。
代表銘柄酒:勝鹿(かつしか)。万葉集の詩から命名。
窪田酒造 千葉県野田市山崎688−4
代表銘柄
勝鹿 大吟醸
軽快でなめらかな味と香りを楽しんで
アルコール度数16%
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