アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

駅伝は人が作るもの

2012年01月15日 | Weblog
 箱根駅伝…お正月の楽しみの一つです。例年は、母校を応援するのですが、今年は母校が予選会へまわり、その予選会でも9位以内に入れず出場できませんでした。しょうがないので、息子の母校を応援しておりました。その息子の母校が、総合5位。私の応援のお陰でしょう。
 2区というエース区間で9人抜いて、区間賞をとった選手も現れました。あの東海大学の村澤明伸くんまでを抜き去ったですよ!「そりゃあ、できすぎだ」って?そうです。「できくん」です。「出岐(でき)雄大」くん。「出岐くん、出来すぎ!」(これを書きたくて、ここまで引っ張った!)

 箱根駅伝には、ドラマがつきもの。
 強烈な印象で、今も記憶が鮮明なのは、1991年の箱根駅伝…
 早稲田大学の1年生、「櫛部静二くん」が、2区を走った。トップでタスキを受けた櫛部くんは、順調な出足ではありましたが…。体調不良に脱水症が加わったのか…中盤から大ブレーキ。靴紐はほどけたまま…。意識朦朧で走っていた。次々と抜かれていき、タスキ渡しを目前にして、フラフラ。右に左に蛇行し、夢遊病者は、こんな感じだろうと思われた。立ち止まったり、歩きだしたり…。この時、駅伝ファンの100%が、「ガンバレ!櫛部!」と声をからして応援したでしょう。立ち止まって、両手で顔を覆うなどの場面もありました。はたしてタスキは繋がるのか!トップから14位に転落したところで、ようやくタスキ渡し成功!早稲田ファンでなくても、驚喜しました。それが日本人のいいところであり、駅伝ファンのスポーツマンシップなんですがね。

 櫛部くん、今頃どうしているかなあと思ったら、なんと、城西大学男子駅伝部監督で、この度の箱根駅伝に出場しておりました。総合6位ですから、立派なんてもんじゃない!素晴らしいですよ。箱根駅伝には、このように往年の選手が監督として箱根に戻ってくるのを見る楽しみがあります。早稲田にいた花田勝彦くんは、上武大学駅伝部監督。上武大は16位でしたが、箱根に出るだけでも立派なもの。渡辺康幸くんは、御存知早稲田大の監督。武井隆次くんは、箱根には出られませんが早稲田実業学校陸上競技部コーチ。

 今大会(88回)で、最も印象に残ったシーンは…
 神奈川大9区の鈴木駿くんが、10区の鶴見中継所手前、20メートルで突然、転倒。その前に、フラフラしたり、蛇行したりなどはないように見えたのに、いきなりの転倒。テレビの前の私は、「おーっ!ぎゃー!もうすこしだー!」と、大声を出してしまいました。繰り上げスタートになるかどうかの瀬戸際だったのです。テレビの実況アナは、「あ、あと5秒ですーーっ!ぎゃーっ!」と絶叫しておりました。鈴木くんはというと、立ち上がろうとはするのですが立てない。這うようにして進んでおりました。

首位が通過してから20分を過ぎた場合は繰り上げスタート。鶴見の白線には、9区のランナーが這って数メートルまでせまっている神奈川大がおり、そのほか、東海大、日体大、上武大、学連選抜が並んでいました。係員はピストルを構え、繰り上げスタートの用意。繰り上げまで、あ、あと0秒・・・。
 神奈川大学はどうなったか?!(みなさん観てましたね。つい興奮して再現実況してしまいました)
 鈴木くん、タスキ渡しに成功!渡した瞬間、「20分00秒00」に。劇的と言おうか、奇跡的と言おうか、繰り上げスタートを免れました。良かったです。本当に良かったです。

 鈴木くんは、「足に力が入らなくなり、何が何だか分からなかった」と。根性とか意識とかではなく、「本能」で走った(這った?)わけです。
 このような素晴らしい場面を見ることが出来た、これを幸福といわずになんと言おうか!お笑い芸人のおせち番組の、千倍の感動です。

 鈴木くんからタスキをもらう、10区の高橋俊光くんは、体を精一杯のばしてタスキを受け取ろうとしました。ラインから9区側に(10区のランナーの)足が出たり、手を着いてしまったりしては失格。その時、鶴見中継所の係員が、思わず高橋くんの体を支えたように見えた!手を着いたり足が出たりして失格にしてしまっては可哀想と、とっさに手が出た!これは、厳密に言うと失格か?その係員は、左手に10本ほどのタスキを抱えておりました。カラフルなタスキが翻ったところに、係員の狼狽ぶりと、何とかしなければという必死さを感じました。

 そのあとの関係者の毅然とした釈明が良かったです。
 「(走者ほう助ではないかとの指摘があるが)駅伝は人が作るものなんです(私どもは、人として絶対公平に大会を進めております)」
 久々に気分がいい回答です。「駅伝は人が作るもの」このセリフは、2012年の流行語大賞ですよ!流行はしないだろうって?「○○は、人が作るもの。だからOKなのです」という形で使われそう。流行間違いなし!
 ただ…よーく考えると、意味が解るようで、解らないけどね。「駅伝の係員も人だから、ルールより人情だよ」と、いうことなら嬉しいが。
 「増税は人が作るもの。だからしょうがないのです」…この使い方は、良くないですけどね。

 このお正月も箱根駅伝から沢山の感動をいただきました。