聞くと聴く。
このことについて、ちゃんと考えている方がいらっしゃるのだ、と心強く思いました。
私も気になっておりました。
聞いているけれど、聴いていない。
音楽を聞くことが身近になり、偶然にカッコよくピアノを弾いている姿を見かけ、自分もピアノを習ってみよう、とレッスンを始める方が増えています。
楽器に興味を持つきっかけになることは悪いことではありません。
実際にレッスンを始めてみて、思っていたものと違うけれど本物を知りたいと開眼される方も少なからずいらっしゃいます。
しかし、子供の場合は思っていたものと異なるとそう上手くは行きません。
それは最初に会った時に大体見えてしまいます。
さらに、親御さんを見ても長続きするお子さんかそうではないかは、大体わかります。
導入メソッドを変えて、「音」というものを聴く、「音」で何を伝えるか、ということを習い始めからすることが出来るようになり、それが通じる生徒さんかどうかは、結構早い段階でわかるようになってしまいました。
耳を澄ませて聴く音楽と、何気なく聞く環境音楽の違い。
音楽が溢れることで、失うものがある。耳を澄ます、耳を傾けるという感覚が鈍ってしまうことを、こちらの動画でお話しされている方は危惧されています。
心の声に耳を傾ける。
私は楽器店で教えているので、今の若い先生方が相手に合わせることを第一にし、生徒さんがやりたくないものはやらない、親御さんが弾かせたい曲だけ弾かせる、という風潮を度々耳にします。
相手とぶつかることを絶対的に避けるように育ってしまった人たちだと感じています。
私も相手とぶつかることを望んではいませんが、本当のことを伝えずにいたら、音楽がただその辺で流れているもの、という存在になってしまいます。
私は音楽に出合えたことを本当に幸運なこと、と思っています。
たくさんのメッセージを作曲家や演奏者から受け取ってきました。そして、本気で打ち込めるものがひとつでもあることにも感謝しています。
ピアノを教えている身として、音楽にはメッセージが込められていることを伝え続けようと思っています。
しかし、それが全ての人に受け入れられることではないことも忘れずに。
希望は失ってはならない、しかし期待はするな、です。