前回、今の若い先生方が相手に合わせ過ぎてレッスンをされていることをチラリと書きました。
ピアノレッスンはやることが多く、大事なことがたくさんあります。
体系的にレッスンを進められることが理想ですが、その通りレッスンを進められる生徒さんは僅かしかいないのが現実です。
では、どこまで生徒さんに合わせるかです。
生徒さんや多くの親御さんは、この道の専門家ではありません。
病院で命に関わるような病ではない場合、若い先生は患者の知識内の治療だけして、波風立てないでいると感じることがあります。
その場合、その時は良くとも、きちんとリスクを話されなかったり、中途半端なことをして結局悪化する場合があります。
逆にベテランになると、この治療法がベストと他の選択肢を説明せず、いきなりそれを押し付けることがあります。そうすると患者は拒否反応を示し、それも問題となります。
専門家だから知っていることはピアノレッスンでもあります。
相手の希望しかきかないでいると、相手の方が、何も残らない、時間を無駄に過ごさせられたという結果を生むことがあると思います。
そのような事態を生むことも悲劇ですが、音楽というのはこの程度のものと間違った認識を生むことも悲劇です。
そしてそれは、次の世代、また次の世代と受け継がれてしまいます。
ピアノを習ったことのある親御さんがお子さんにピアノを習わせたり、知り合いが習っていてその人の情報を鵜呑みにしたりすることがあるからです。
偏食は本人がその内苦しむ結果になりますが、音楽は受け継がれるものです。
楽器が弾けるようになるには、出来なければいけないことや覚えなければいけないことがたくさんあり、それには時間も忍耐も努力もやはり必要なのです。
それをできるだけ負担に感じずにレッスンに通ってもらえる方法はないか、と講師は日々工夫し考えています。
野菜嫌いな子供に野菜を食べなくてもいいよ、ではなく、どうやって食べてもらおうと考えているようなものです。食べなさいと強要するのではなく、細かくしたり味を変えたりということです。
楽器の演奏は、何もやらなくとも出来るようになることはありません。
そこをわかってもらうのも、教えることのひとつです。
生徒さんが出来ないことにぶつかった時に、方法を工夫することを知ってもらったり、すぐに諦めない、落ち込まない気持ちを育てたり、というのも講師の役目です。
安易に相手に合わせるだけのレッスンに走る前に、出来ることがあるはずですので、何度もそれに挑み続けてほしいと思います。