おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

安心感

2020年03月06日 | 重力奏法
レッスン室に保護者の方が入って下さるだけで変わるものだと思うことがありました。

その生徒さんは既に小学4年生。男の子です。

ヴァイオリンを習っていたのですが、小2からピアノを始めてヴァイオリンの方は辞めました。
スズキメソッドで親子で常にレッスンを受けなければいけなかったそうです。

その話を聞いていたので、当然ピアノのレッスンも一緒に入って下さると思い、一緒に入って頂きたいという話はしておりませんでした。

ところが、初回レッスンから全く親御さんは姿を見せず··

ヴァイオリンの経験があるしどうにかなるかなと思い、レッスンノートだけご用意いただきました。

「はじめの一歩」を使いました。
その頃はまだ「不思議な音の国」を使っておりませんでした。見てすぐに使えるのが「はじめの一歩」の方だったからです。

しかし、次第に上手く進まなくなりました。
音を作り出すことをヴァイオリンで経験しているはずなのに、ピアノではその意識が働かない。

もうひとつ問題だったことは、とにかく焦ることでした。
焦って答える、焦って弾き始める。慌てるではなく焦るです。

頭の中で考えを整理して答えたり弾き始めたりではなく、とにかく即座に何か発する。
その状態は4年生になっても変わりませんでした。
怯えてもいた様子で、私がそうさせているのかとも思いました。

「すぐに弾き始めたり、答えたりすることはピアノのレッスンでは必要ない。もしかしたら学校やお家ではそうしなくちゃいけないのかもしれないけど、ピアノではそうやって何度も間違えて弾き直すより、まず1音でいいからこう弾こうと考えてから弾いてくれたほうがずっと嬉しい」と話しました。

しかし、そう簡単には変わりません。

発表会の曲の練習に入り、2カ月経っても話が理解できていないように思い、お母様に来て頂くことにしました。

話を理解することを妨げているものがあると感じましたので。

最初の2回は何も変わりませんでした。
とにかく、すぐに弾き始めて何度も弾き直したり、言うことをまとめずに何か言えばいい、ということはしてほしくなかったので、弾く度に「どんなこと気を付けた?」「どう弾こうと思った?」「息吸った?」とできるだけ言葉に出して言ってもらうことをお母様にも見ていただきました。

本人も曖昧に何となく捉えていたことも多かったので、私と2人ならその間だけの問題で終わっていたことが、お母様に入って頂いたことで徐々に意識が変わってきました。

そして一人で受ける最大の問題とも言える「どんな音で弾く」「どうすればその音を作れるか」を見ていただけたことで、安心して練習できるようになってきました。

3回目で音の鳴りが変わり、艶のある美しい音になっていました。
4回目では初めて本人が具体的に質問してきました。そして「ここもう一回弾きたい」と確認しておきたいことを確かめて帰って行きました。

お母様は「ノータッチです」と仰っていました。

充分です。
何を習っているかご家族が知っているのと知っていないのでは、安心感が全く違うのです。
言葉が分かる前にもう一人で歩いて行きなさいは酷なことです。もちろん、そんなつもりはないことは承知しています。

趣味でも音楽の言葉を知ることは必要だと私は考えています。それを知るとたくさんのメッセージを受け取ることができます。

その言葉を家族が共有できたら一人ぼっちにならずに済みます。
音楽の言葉を話せなくとも聞いてわかってくれたら子供ではなくとも嬉しくなります。

保護者の方に習い始めに一緒にいていただく意味はそこにあると私は思っています。
お仕事で一緒に受けられないご家庭は親御さんが興味を失ってはいけないこと。お子様の人生のほんの2~3年お付き合い下さるだけで、子供は自分で成長していけます。

一人ぼっちと一人でやるは全く違うことです。
孤独と自立は別のものです。

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