デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



ボブ・ブライアー/ジャン=ピエール・ウーダン著(日暮雅通 訳)『大ピラミッドの秘密』(SoftBank Creative)読了。
『大ピラミッドの秘密』の副題は「エジプト史上最大の建造物はどのように建築されたか」となっている。歴史ファンのなかには2009年の夏にNHKスペシャルで放映された「ピラミッド 隠された回廊の謎」の内容をご記憶の方も少なくないだろう。この本は番組に出てた建築家ジャン=ピエール・ウーダンのピラミッドについての研究成果と、それが世に知られるまでの過程や変遷を描いたものなのだ。
これを読んだのは、たまたま図書館で目立つように配置されてあったというのもあるが、あのNHKスペシャルの内容を自分なりにおさらいしたいと常々思っていたし、またトーマス・マンの『ヨゼフとその兄弟たち』の中で描かれる古代エジプトの記述との差異も知っておきたく思ったからでもある。(トーマス・マンは、作家なりにその博覧強記でもって豊かな古代エジプトを描きつつも、戦前までの考古学の成果から得られた考証から表出する解釈の枠を抜け出すことは無理だったことは仕方ないので、当然差異があるといえばあるのだが)。
さて、本の内容であるが、私個人は正直とても好みの内容なのである。番組や本の中でウーダンが「自分なら、あのようなとてつもないピラミッドを(建築家として)どうやって作るかを、まず考えた」という言が象徴するように、エジプト考古学の権威を帯びている積み重ねられた様々な説に影響されることなく、純粋に建築家としての興味から謎解きを始めているところがすばらしいと思う。自分だけのピラミッドの建築に必要だった知的パズルを徐々に組み立てて、これまで誰もが気づかなかった謎とされていたピラミッドの内部空間や建築方法について、これほどまでに的を射た説明があるだろうかと、門外漢ながら思った。
アカデミックな組織が解決できなかった問題を、在野の職人や専門家がものの見事に解決するようなウーダンの業績を読んでいて、経度を「発見」した時計職人のジョン・ハリソンの波乱万丈の人生を思い出した。ハリソンについては、今はD・ソベル著『経度への挑戦』 (角川文庫)で読める。『大ピラミッドの秘密』を読んで、『経度への挑戦』 も久しぶりに読みたくなった。

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