加地伸行編『孫子の世界』(中央公論社)を手に取ったのは、『論語の世界』を図書館で予約するつもりが予約画面の一覧の項目を一行間違えて予約したことによる偶然だったが、怪我の功名であるように思う。
『孫子の世界』の第一章に山口久和 筆「「三国志」の英雄と「孫子」」という項があるのだが、これがなかなか面白くて引き込まれる。
弊ブログをご覧いただいている方々のなかで、昔の中国で官渡の戦いという赤壁の戦いよりも歴史的に重要な戦いがあったことを知っているという方は少ないと思う。私もこの本を読むまで知らなかった。
官渡の戦いについてはwebなり本なりで調べれば出てくるので私から詳細は語らないが、この戦いでの曹操は将略に富んだ非凡な戦略家であることを示した。『孫子の世界』によれば、曹操は『孫子』に注釈をほどこすほど、兵法の理論家かつ実践家であった。
私のような『三国志演義』しか頭にないような者は、(さすがに物語と歴史的評価とは別にして考えはしようとするものの、)どうしても曹操=悪役というイメージはぬぐえない。しかし、『孫子』を通して曹操、劉備、孔明、おのおのの「あらゆる戦略」を見ると、劉備については「彼は何をやっていたんだ?」と私でも思わざるを得ない(笑)。後に作られた「演義」による人気だけで歴史を判断するのでなく、魏と蜀の成り立ちや決定的な違いを考えるうえで、少なくとも『孫子の世界』は冷静な視点を与えてくれている。
『孫子の世界』には他にも『孫子』と赤穂の乱についての興味深い史実が語られている。現在は半分ぐらいだが、読み終えたらまた感想など述べるかもしれない。
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