「鳥」(1963) ★★★★★
…ヒッチコック監督の代表作の一つ。TVの放送で鑑賞したが、MeToo運動が盛り上がっている時期だった。バツイチの男の住所のみならず男の娘の名前まで周到に調べて男の気を惹こうとするヒロインの姿を見て、こんな時期に放送していいの!?とTV局が苦情処理に追われているのではないかと心配になり余計なお世話なことまで考えてしまった(笑)。
この作品の示唆するところのものはたくさんあるだろう。私は天災に見舞われ被害を抑えることができず、対処の方法が見出せないその原因を「たまたま港町にやってきただけの女(ヒロイン)」を魔女呼ばわりすることで問題をすり替えよう目を背けようとする絶望した婦人役の演技にゾッとしつつ上手いなと感心した。
「ビューティフル・マインド」(2001) ★★★★★
「誘う女」(1995) ★★★★★
…ニコール・キッドマン主演の作品のなかでは私はこれが一番お気に入りだ。成り上がるためには手段をいとわない女の因果応報を描いた物語だが、ブラックユーモアとして現実というものを上手く描いているのではないか。これもMeToo運動が盛り上がっている時期にTVで見たのでTV局に苦情が行っていないか心配になった(笑)。
「ワーテルロー」(1970) ★★★★★
…監督のセルゲイ・ボンダルチュクは、大スペクトルな「戦争と平和」も撮っている。描き方が似ているなと思った。
「バラバ」(1961) ★★★★★
…「道」や「その男ゾルバ」に主演しているアンソニー・クインが、キリストの代わりに放免されたバラバを演じているとは知らなかった。丁寧に見ていけば紀元1世紀の時代をリアルに描こうとした制作陣のすごさがよくわかった。
「ロシュフォールの恋人たち」(1967) ★★★★☆
…ふと見た映画に用いられているメインテーマ(BGM)が、以前聞いたことのある曲で詳細を知りたかった曲でもあった、という体験ってけっこうあるものだが、この作品のメインテーマは目から鱗な気になった。作品は昔一世を風靡した感じでおもしろかったことはおもしろかったが、時代を否応無く感じさせられたのも事実だ。
「アメリカン・スナイパー」(2014) ★★★★★
…二度目の鑑賞。ショッキングな内容ではあるが、リアリズムに徹した名作である。
「大統領の陰謀」(1976) ★★★★☆
…ウォーターゲート事件のスクープを新聞記者が記事にするまでの物語。裏を取る取材って大変なのだと改めて思ったし、紙面に載せるゴーサインを出すまでに生じる社内のさまざまな事情の存在は今も昔も変わらないのだ。「インサイダー」もひさしぶりに見たくなった。
「傷だらけの栄光」(1956) ★★★★★
…ポール・ニューマンがボクサーに扮した作品。ロッキー・グラジアノとロッキー・マルシアノの違いすら分かっていない私ではあるが、スタローンの「ロッキー」を髣髴とさせる「傷だらけの栄光」は楽しめた。ポール・ニューマンはいろいろな役をやっているが本当に多才だと思った。
「カルテット!人生のオペラハウス」(2012) ★★★★☆
…ダスティン・ホフマンがメガホンを取った作品ということで興味を抱いた。舞台がミラノにあるヴェルディの音楽家のための憩いの家っぽいなと思ったらやっぱりそうだった。
「鏡」(1975) ★★★★★
…タルコフスキー作品のなかでも最も難解な作品だが、時を経て再鑑賞し、辻邦生のエッセイや、馬場広信著『タルコフスキー映画』、西周成著『タルコフスキーとその時代 秘められた人生の真実』を参照して、作品を鑑賞するにあたり監督の自伝的要素をきちっと知っておいたほうがいいことをようやく素直に受け入れられるようになった気がする。
「ベニスに死す」(1971) ★★★★★
…再鑑賞。昔見た時ほどには衝撃を感じなかったのは仕方がないか。ただヴィスコンティはトーマス・マンの原作に相当共感したであろうことは、原作に肉薄するための演出を見るだけで感じ取れた。また登場人物のちょっとしたしぐさや衣裳が主人公にとってはタブーでありつつも抑えるに抑えきれない衝動を抱かせる世界のメタファーとして分かりやすいものにしている点は巧妙だなと改めて思った。
「ミッション」(1986) ★★★★★
…再鑑賞。主人公の神父は司馬遷の「史記」に出てきそうな人物だなとも捉えられた。以前は見逃していたが、神父やグァラニー族を虐殺したことへの良心の呵責や自責の念が、政治的葛藤を抱えるアルタミラーノ枢機卿や総督らにも見られる場面があったとは…。
「華麗なる激情」(1965) ★★★★★
…ミケランジェロと教皇ユリウス2世の奇妙な関係というか奇妙な友情の描き方がとても面白かった。ミケランジェロが作業していた時期のシスティーナ礼拝堂の天井と、ボッティチェリやギルランダイオらが描いた壁画との合成も上手く凝っているなと感心した。
「スワンの恋」(1984) ★★★★★
…『失われた時を求めて』のなかの一篇を映画化するのは難しいのだろうけど、がんばったなぁと素直に思った。スワンが晩年に訪れたサロンに作家のそっくりさんみたいな人物をエキストラとして登場させているのは監督の遊び心だろうか(笑)。そっくりさんといえばゲルマント公爵夫人を演じた女優が小説のモデルになった人とそっくりだったのはこだわりを感じた。
今年は映画を鑑た本数が増えた。ずっと気になってはいたが、鑑賞の機会を逃していた作品を中心に鑑賞でき良かったと思う。来年もいい映画と出会いたいものだ。